『ちいさな あなたへ』 アリスン・マギー、(絵)ピーター・レイノルズ、(訳)なかがわ ちひろ

このたび娘を出産した私に、母が贈ってくれた絵本です。

澄みきった瞳で私をみつめてくる娘。
もみじのようにちいさな手で私にしがみついてくる娘。
まだほんとうに小さくて、私がまもってあげないとなにもできない。
でもそんな娘にも、私から離れて大きな世界にとびこんでいくときがやってくる・・・

あのひ、わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ、
その いっぽん いっぽんに キスを した。

娘へのかぎりない愛おしさがこみあげて、同時に私のことをいつもすっぽりくるんでくれている母のあたたかな愛にも改めて気づかされて、涙がとまりませんでした。
これからたくさんの未来を生きる娘の人生で、いまみたいに母娘ぴったりと過ごせる時間はきっとそんなにながくない。大変なことも多いけど、この幸福な時間を大切にかみしめながら過ごさなきゃ、そう思いました。

そしていつか、大きくなった娘にこの絵本を贈りたい。
「お母さんと、お母さんのお母さんからの贈り物だよ」って。
想いはつながっていくんだね・・・、そうやさしくほほえみながら。

(原題『Someday』)
Author: ことり
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『こどもの情景』 A・A・ミルン、(訳)早川 敦子

評価:
A.A.ミルン
パピルス
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(1996-06)

「クマのプーさん」の作者による、愛らしくも陰影をおびた子どもたちの物語。オランダの女性画家、ル・メールの優雅な挿絵12枚がそえられたミルンの贈り物。

12枚の絵と、12の物語。かわいらしくてほほえましい子どもをめぐる情景。
でもどの子も例外なく孤立していて、確固たる世界をもっているのでドキっとします。子どもというのは知識を得るよりもずっとまえに、すでにいろいろなことを‘知っている’のだ・・・この本を読んでいて私が一ばんに感じたこと。
どれもすてきだったけれど、とりわけ好きだったお話は、『ベッドのなかの、ちっちゃなウォーターロー』、『かわいそうなアン』、『インドへの旅』。

「ことばって、なんてちょっぴりのことしか伝えられないんだろう。たとえば『コンデンス・ミルク』ってことばにしたって、それだけで、言いたいことがぜんぶ伝わると思う?」
(『ベッドのなかの、ちっちゃなウォーターロー』)

(原題『A GALLERY OF CHILDREN』)
Author: ことり
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『アメリカの鳥』 マッカーシー、(訳)中野 恵津子

アメリカ人青年ピーターは、鳥や植物を愛す、ちょっと内気な19歳。パリ留学を前に母とふたり、ニューイングランドの小さな町を訪れる。
4年前、母と暮らしたその地は、アメリカのよき伝統が残る、緑あふれる土地だった。しかし4年の間に自然は失われ、町はすっかり観光地化していた。母は怒り狂い、よきアメリカを取り戻すべくひとり闘う。そんな母と、アナキストだった父に育てられたピーターは、敬愛するカントの哲学に従い、「人を手段として利用してはならない」を行動原理として異国に旅立ってゆく。新訳決定版。

4年ぶりに訪れた町からアメリカワシミミズクがいなくなった・・・。
そんな喪失感からはじまる、内気な青年ピーター・リーヴァイの精神の成長物語。
チェンバロの音色のようにナイーヴな心をもったピーターがヨーロッパに渡り、異国での孤独感や祖国アメリカにたいする戸惑い、自分流の哲学につまずきながら少しずつ大人になっていくさまがゆっくりとていねいに描かれていきます。
19歳になり、カントの言葉「誰であれ人を手段として利用してはならない」を生きる信条とする彼の、義務感にしばられた日々。まるで鳥かごにみずからを閉じ込めてしまった渡り鳥のような、若さゆえの葛藤がほろ苦くてもどかしい・・・。

ベトナム戦争の拡大期。「教養」というものがごく当たり前に必要とされていた時代。
灰色できゅうくつな時を生きた人びとの、けれど清々しい、独特のあかるさをたたえた物語だと思いました。

(原題『BIRDS OF AMERICA』)
Author: ことり
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『あおい目のこねこ』 エゴン・マチーセン、(訳)せた ていじ

むかし、青い目のげんきなこねこが おりました。
あるとき、こねこは、ねずみのくにを みつけにでかけました。

こねこは勇みに勇んででかけますが、ねずみのくにはなかなかみつかりません。
それどころか、こねこにはちょっとした災難がいくつも起こってしまいます。
でも、こねこは言いました。「なーに、こんなこと、なんでもないや」 こねこはいつも前向きで、どんなことにもめげないのです。黄色い目のねこたちに仲間はずれにされたって、青い目はとてもすてきできれいだとちゃんと思えるこねこなのです。
「おもしろいことをしてみよう。
なんにもなくても、げんきでいなくちゃいけないもの」

白い頁のうえに、素朴な線で描かれていく絵はひょうひょうと愉快な味わい。
山をのぼって・・・山をくだって・・・また山をのぼって・・・またくだって・・・、のくだりが楽しくて大好きです。
知らないうちにしずかに元気がしみてくるのがうれしい、のびのびと幸福な絵本。

(原題『MIS MED DE BLÅ ØJNE』)
Author: ことり
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『ホンドとファビアン』 ピーター・マッカーティ、(訳)江國 香織

評価:
ピーター マッカーティ,Peter McCarty,江國 香織
岩崎書店
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(2003-09)

いぬのホンドとねこのファビアン、おうちのあかちゃん。いぬのホンドは海辺へ行っておともだちのフレッドと遊びます。ねこのファビアンはおうちにのこってあかちゃんと遊びます。今日はだれがどんなすてきなことに出会うのでしょう?おだやかで幸福な一日の風景を、やわらかな色彩と線で大切に描き、シンプルでやさしい言葉でつづった、心があたたかくなる絵本。2003年コルデコット賞受賞。

ころんとして、きょとんとしてて、ふっくりと柔らかな風合いのホンドとファビアン。
なかよしの2匹がとてもかわいいです。ちょっとみじかい手足もご愛嬌。
外ではしゃぐのが大好きなホンドと、おうちでまったりが大好きなファビアンのごきげんな一日。ありふれた、なんでもない一日のやさしさと幸福。
ふわっふわの綿菓子みたいな、淡くとろけそうな絵本でした。

ようやく ホンドが かえってきた
ばんごはんの時間だ

(原題『Hondo and Fabian』)
Author: ことり
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『夜のサーカス』 エリン・モーゲンスターン、(訳)宇佐川 晶子

評価:
エリン モーゲンスターン
早川書房
¥ 2,835
(2012-04-06)

夜だけ開く黒と白のテントのなか、待っているのは言葉を失ってしまうようなショウの数々。氷でできた庭、雲の迷路、優雅なアクロバット、ただようキャラメルとシナモンの甘いにおい・・・しかし、サーカスではひそかに熾烈な闘いがくりひろげられていた。
若き魔術師シーリアとマルコ。幼いころから競い合いを運命づけられてきた二人は、相手に対抗するため次々とサーカスに手を加え、魅惑的な出し物を創りだしていく。しかし、二人は、このゲームの過酷さをまだ知らなかった――世界で絶賛された幻惑とたくらみに満ちたデビュー作。

「そのサーカスはいきなりやってくる」――
郊外の野原に高くそびえるテントをかまえ、夕暮れの風にほのかにキャラメルの匂いがただよい始めたら、もうすぐ開幕の合図。忽然と現われ、夜だけひらくという喩えようもなく豪奢で魅惑的な夢のサーカス<ル・シルク・デ・レーヴ>。
私はすっかりこのサーカスの魔法にかけられ、一瞬で、瞳をきらきらさせた子どもにもどってしまいました。お話のゆくえに胸を躍らせ、夢中で本の頁をめくる、めくる、めくる・・・ただもう、とにかく楽しくて。

物語は、時と場所を交差させながら、こまぎれの章立てで進んでいきます。
それはまるで<ル・シルク・デ・レーヴ>のたくさんのテントをひとつひとつ堪能しながらめぐっていくかのよう。物語のあいまには、二人称で耳元に囁きかけてくる小さな章がまぎれ込ませてあって・・・魔法が織りなすまばゆく幻想的な出し物をいままさにこの目でみている、私はいつしかそんな宝物のように愛おしい感覚につつまれていたのです。
光と色彩のシャワーが降りそそぐなか描かれる、老練の魔術師たちの契約にしばられたシーリアとマルコの数奇な運命。風変わりなオーナー、謎めいた灰色のスーツの男、捉えどころのない軽業師や占い師、サーカス生まれの赤毛の双子、サーカスに憧れる農場の少年など・・・登場人物たちが鮮やかに頭のなかで像を結び、美しい<氷の庭>や<鏡の廊下>を行き交うのもとても楽しかった。

「この物語がほしい。きみの物語が。われわれをこの場所へ、この椅子へ、このワインへ連れてきた物語だ。」

五感を心地よくくすぐってくれる世界観と、「物語」をめぐるおとぎの国にまよい込んだような浮遊感。
ふわりふわり・・・本をとじても醒めない夢みごこち。
ああ、この素敵な魔法がこのままとけなければいいのに。

(原題『The Night Circus』)
Author: ことり
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『ダニエルのふしぎな絵』 バーバラ・マクリントック、(訳)福本 友美子

評価:
バーバラ マクリントック
ほるぷ出版
¥ 1,470
(2005-09)

ダニエルはいつも、心にうかぶままに絵をかいていました。おどるコウノトリ、おしゃれをしたキツネ・・・、空想のつばさをひろげると、ふしぎな絵がつぎつぎに生まれてきました。ところがダニエルのおとうさんには、その絵がぜんぜん理解できなかったのです。

素敵!ダニエルの果てしない空想世界が絵になって、目の前に広がります。
今日こそは目に見えるとおりに絵をかこう!そう思うのにいざかいてみると、街をゆく犬は魚に、ご婦人はドレスを着た鳥や猫になっちゃうなんて。
写真家のおとうさんをよろこばせたいのに、「どうしてもこうなっちゃうの」 ダニエルはしょんぼりしてしまいます。ある朝高熱で寝こんだおとうさんの代わりに街にでたダニエルは・・・?

相手を尊重し思いやること、自分らしさを大切にすること。
そんな気持ちが描かれた美しい絵本です。ダニエルの自由な絵をながめていると、私の凝り固まった頭もふんにゃり柔らかくなっていくみたい・・・。
やさしくて夢のあるおはなしは、やっぱりシアワセ。

(原題『THE FANTASTIC DRAWINGS OF DANIELLE』)
Author: ことり
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『贖罪』(上・下) イアン・マキューアン、(訳)小山 太一

評価:
イアン マキューアン
新潮社
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(2008-02-28)

1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために自作の劇を上演しようとはりきっていた。役者をつとめるいとこたちが思い通りに動いてくれないストレスの中、彼女はある光景を目撃する。
多感な少女らしい潔癖と嫉妬に突き動かされたブライオニーの悪意にみちた嘘が、若い恋人たちを引き裂き、人びとの運命を大きく変えてゆく――。

広大な庭、光のあふれる噴水、シノワズリーの美しい花瓶・・・
主人公のブライオニーをはじめタリス邸に居合わせたさまざまな人たちの視点から、屋敷のようすやそれぞれの心の動きがたんねんに積み重ねられてゆきます。
きらめく夏の官能、セシーリアとロビーの恋。運命の一日。
たった一日のできごとにまるごと費やされた上巻は、素肌にまとわりつく絹のようなエレガントさ。大きな音をたてていまにも弾けてしまいそう、そんなきわどさで緊張感がじりじりと高まり・・・そうして下巻では堰をきったように物語が流れ出します。
あの事件で運命を狂わされてしまった人たちのその後が描かれたのち、すべての謎が明かされたように見えて、最後の最後で読み手に突きつけられる驚愕の仕掛け。77歳となったブライオニーが語る‘真実’にぞわぞわと心が粟だち、呆然とたたずむ私・・・。

読み終えてからは夕食の仕度をしていてもシャワーを浴びていても、この物語のことがうかんできて考えてしまいました。
贖いという‘虚構’をつくり上げることで、一生を賭けてそれを果たそうとする少女。けれど過去をなかったことにはできないし、罪じたいは消せやしない・・・なにより、赦しを乞いたい相手はもういない。まったく、霞のようにむなしくて、なんてなんて深いんでしょう。物語は終わったのに心のなかではなにひとつ終わっていないような、それどころか闇はますます広がっていくばかりなのです。
ブライオニーを通して小説とはなにか、作家とはなにか、が語られたこの重層的な物語に「小説のもつ力」を思い知らされた気がします。

(原題『ATONEMENT』)
Author: ことり
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『クリスマスのまえのよる』 クレメント・C・ムーア、(絵)ロジャー・デュボアザン、(訳)こみや ゆう

トナカイのそりに乗ったサンタクロースのイメージは、19世紀初頭(1822年)に書かれた詩がルーツ。
デュボアザンの味わい深い絵で、宝石のようなクリスマス絵本に!

『The Night Before Christmas』のロジャー・デュボアザンさん版が日本でも紹介されました。
多くのすぐれた画家たちが挿絵を描いているこの詩(物語)。私が読むのは、ウィリアム・W・デンスロウさん版、トミー・デ・パオラさん版、リスベート・ツヴェルガーさん版につづいて4冊め。

たてに長〜いこのサイズは、子どもたちが暖炉の上にそっとかけてプレゼントを楽しみに待つ「くつした」に入るようにとデザインされたそうです。素敵・・・まさにクリスマスプレゼントのための絵本!
ロジャーさんのほがらかな絵が、子どもたちに語りかけるパパのやさしいまなざしにとけあって、読んでいるとふかふかのブランケットにくるまれているようなあたたかで安心な気持ちになります。
小さい頃、私も‘サンタさん’から絵本をもらいました。クリスマスの朝、枕もとにみつけた『サンタおじさんのいねむり』(ルイーズ・ファチオ)や『ちいさなろば』(ルース・エインワース)の思い出は、いまも大切に胸にしまわれています。

(原題『The Night Before Christmas』)
Author: ことり
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『ベーメルマンス―マドレーヌの作者の絵と生涯』 ジョン・ベーメルマンス・マルシアーノ、(訳)福本 友美子

評価:
ジョン・ベーメルマンス マルシアーノ
BL出版
¥ 4,200
(2011-03)

「マドレーヌ」シリーズでおなじみの絵本作家ルドウィッヒ・ベーメルマンスさんについて、彼の孫ジョン・ベーメルマンス・マルシアーノさんがまとめられた伝記です。
美術館に置かれている図録のような、大きくて、ずっしりと重いりっぱな本。
没後35年間、だれも手をつけていなかった貴重な資料からも、たくさんの絵画やスケッチ、執筆原稿、写真、メモ、手紙などがえらばれ掲載されています。
苦労の連続だった少年時代や、愛妻ミミ・愛娘バーバラとすごしたかけがえのない時間を美しい絵とともにたどること、それはほんとうに贅沢なことでした。
ゆっくりゆっくり・・・彼の人生をひもとくにつれ、ベーメルマンスさんが、マドレーヌちゃんが、彼ののこされた愛らしい絵たちが、どんどん身近に感じられるのです。

私と彼の絵本の出逢いは『げんきなマドレーヌ』なので、やはり彼の人生にマドレーヌちゃんの‘気配’をみつけたときが一ばんうれしかったです。
南フランスを旅行中、事故で入院してしまったとき、「病室の天井には、ウサギみたいな形の割れ目があり、隣の病室には盲腸の手術をした女の子がいた。」って文章を読んで反応しない「マドレーヌ」ファンがいるでしょうか。
あと、『マドレーヌといぬ』の原稿を読んだ編集者・マッシー氏が、手紙のなかで「(犬の)名前が安っぽいから考えなおして」とお願いしていた、というエピソードも! あの勇敢な犬・ジュヌビエーブが、はじめはフリーバッグという名前だったなんて・・・。
ジュヌビエーブ。この優雅なひびきに憧れていたのは私だけではないはず。

何年もかかって何千枚もスケッチをし、何百枚も絵をかき、物語のアイディアを数えきれないほど出し、あらすじやダミー本を何ダースもつくってから、やっと完成したというルドウィッヒ・ベーメルマンスさんの絵本。
さらさらっと流れるようなかろやかな筆さばきからは、そんな苦労のあとがすこしも見えないのもきっと彼のすごさなのですね。この伝記を読んでますますベーメルマンスさんのファンになりました。
ところで、『げんきなマドレーヌ』、『マドレーヌといぬ』、『マドレーヌといたずらっこ』、『マドレーヌとジプシー』は子どもの頃に読んだのですが、『ロンドンのマドレーヌ』と『マドレーヌのクリスマス』はなぜか未読です。パリの美しい色彩と空気、2列になって暮らしている女の子たち、頼もしいミス・クラベルに久しぶりに再会したいな〜。
さっそく読んでみるつもり。

(原題『BEMELMANS : THE LIFE AND ART OF MADELINE'S CREATOR』)
Author: ことり
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