『チャイナタウンからの葉書』 R・ブローティガン、(訳)池澤 夏樹

評価:
リチャード・ブローティガン
筑摩書房
¥ 756
(2011-05-12)

アメリカ'60年代カウンターカルチャーの生んだ文学者、ブローティガンの代表的詩集。俳句のように結晶化した詩60篇を、この訳者ならではの名訳でお届けする。物質文明への批評性を持ちながら、ユーモアと心優しい抒情に満ちた、その世界。時代を超えて愛読されてきた不朽の作品。文庫化にあたり原文を加えた。

(原題『THE PILL VERSUS THE SPRINGHILL MINE DISASTER』)
Author: ことり
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『芝生の復讐』 リチャード・ブローティガン、(訳)藤本 和子

評価:
リチャード ブローティガン
新潮社
¥ 500
(2008-03-28)

雨に濡れそぼつ子ども時代の記憶と、カリフォルニアの陽光。その明暗のはざまに浮かびあがる、メランコリアの王国。密造酒をつくる堂々たる祖母、燃やされる梨の木、哀しい迷子の仔犬、ネグリジェを着た熊、失われた恋と墓のようなコーヒー、西瓜を食べる美しい娘たち・・・。
囁きながら流れてゆく清冽な小川のような62の物語。『アメリカの鱒釣り』の作家が遺したもっとも美しい短篇集。

みずみずしい文章とナイーヴな感性がキラリ。
物語、寓話、スケッチから、詩や散文のようなものまで、さまざまな形態のお話たちをひとつの木箱に無秩序に集めてみた、そんな趣きの短篇集です。
ある時代のアメリカ、そこで見聞きしたものの影響をつよく感じさせながら、幻想と現実が交互に襲ってくる奇抜でシュールな世界。
言葉のはしばしにひんやりとした孤独がやどり、穏やかなまなざしの向こうに絶望がひっそりと横たわっている・・・作者の息づかいや体温に心を澄ませながら読んでいると、時おり心をするどく刺すような言葉の結晶に行き当たります。そのかけらが刺さった場所が、いまも哀しくひりついています。
私のお気に入りは、『芝生の復讐』、『きれいなオフィス』、『装甲車 ジャニスに』。

(原題『REVENGE OF THE LAWN : Stories 1962-1970』)
Author: ことり
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『ロンメル進軍』 リチャード・ブローティガン、(訳)高橋 源一郎

小説家ともうひとつ、詩人という肩書きをもつ著者の詩集です。
フランケンシュタインから大きな鍵穴を連想したり、月面につけられた足跡はズッキーニそっくりだと言ってみたり・・・。小説『西瓜糖の日々』でも感じられた不思議でみずみずしい感性を、日常の話し言葉にまじえてサラサラつむいでいく彼の詩たちは、さりげないのだけど奥行きが深くて感心します。

この本には、私にとって、なんど読んでも心がざわめく一編が収められています。
それは疲弊していく愛の詩。こういう詩です。

三十七歳 
彼女はもうすっかり疲れてしまった
結婚指輪、これはいったいなにかしら
彼女は空っぽのコーヒーカップをじっと見つめている
まるで死んだ鳥の口でも覗き込んでいるみたいだ
夕食は終わり
夫はトイレに行ってしまった
でもすぐ戻ってくるだろう、次は彼女がトイレに行く番だ (『レストラン』)

(原題『ROMMEL DRIVES ON DEEP INTO EGYPT』)
Author: ことり
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『西瓜糖の日々』 リチャード・ブローティガン、(訳)藤本 和子

評価:
リチャード ブローティガン
河出書房新社
¥ 842
(2003-07)

いま、こうしてわたしの生活が西瓜糖の世界で過ぎてゆくように、かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。
あなたにそのことを話してあげよう。わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。

コミューン的な場所、アイデス<iDeath>と<忘れられた世界>、そして私たちとおなじ言葉を話すことができる虎たち。家も橋も、死装束さえも、すべてが西瓜糖でできた世界――透きとおって消えてしまいそうに脆い、微妙な均衡が保たれているアイデスについて、名前をもたない「わたし」が語りはじめる物語。

混沌と、とても不思議なお話でした。
時を超え、いくつかの世界がつながっていくさまは、まるで夢のかけらを渡り歩いているみたい。ぽっかりと空いた誰かの心のすきまにこそ存在するような・・・ふわふわ謎めいた迷子のような浮遊感が好き。
ぜんたいを、甘美な消失の匂いがつつんでいます。淡い色。そう、水っぽくてちょっとぼんやりとした西瓜のうすあまさ。損なわれた世界。
しずかで優しくて残酷な、奇想うずまくこんなメルヘンは、やわらかな毛布にくるまり一人でこっそり夢心地で愛していたい。
これは死にもっとも近い‘夢の果て’でのできごとだから。そしてブローティガンさんの文章こそが幻想であり・・・夢そのものなのだから。

(原題『IN WATERMELON SUGAR』)
Author: ことり
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