『あるクリスマス』 トルーマン・カポーティ、(訳)村上 春樹

評価:
トールマン カポーティ,トルーマン・カポーティ,山本 容子
文藝春秋
¥ 1,594
(1989-12-01)

色とりどりの花咲く中庭、人魚のかたちをした噴水、父の1ダースの女友達――。
クリスマスの思い出』の前年、バディーが6歳の年のクリスマスのお話です。 両親が離婚して母方の実家にあずけられているバディーが、大好きなスックやクイーニーとひととき離れ、長いこと離れて住んでいた父親とニュー・オーリンズですごす、豪奢で窮屈なクリスマス。

父の抱擁よりもスックのおやすみのキスを、ピンク色の瀟洒な家よりも森に囲まれたアラバマの家を、悪夢のような牡蠣やぴりぴりしたレストランの料理よりもしぼりたての牛乳、手桶からじかに飲む糖蜜を恋しがるバディー。独りよがりな父親にたいするつめたい視線、打ち解けられないかたくなな思いがひとひら、またひとひらと降り積もってゆきます。
派手に暮らしながらもみたされなかった父親の淋しい横顔・・・ 父の愛を知らなかった孤独な少年は、過ぎ去った長い年月の果てに、雪の結晶のように繊細なあの日のかけらに愛を見いだす。
にどと帰らない淡い時間。大切にしまわれていた葉書。喉にかたまるほろ苦さ。
遠くはかない、たった一度きりの父親とのクリスマス。

(原題『One Christmas』)
Author: ことり
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『ティファニーで朝食を』 トルーマン・カポーティ、(訳)村上 春樹

評価:
トルーマン・カポーティ
新潮社
¥ 1,296
(2008-02-29)

ホリーは朝のシリアルのように健康で、石鹸やレモンのように清潔、そして少しあやしい、16歳にも30歳にも見える、自由奔放で不思議なヒロイン。
――第二次世界大戦下のニューヨークを舞台に、神童・カポーティが精魂を傾け、無垢の世界と訣別を果たした名作。

映画は映画で素敵だけれど、映画と原作は‘べつの物語’のような雰囲気。
なにより主人公ホリー・ゴライトリーのイメージがまったくちがっています。私はなるべくオードリーが演じたホリーを重ね合わせないようにと意識して読んだのですが、それでもやはり完ぺきに頭から追いやるのには無理があって・・・、うっかり気を抜くとうかんでくるので困ってしまいました。
原作のホリーはもっとハチャメチャで破天荒な女の子です。でも正直で愛らしくて、ガラス細工のように繊細で・・・とても素敵、そう思いました。
小さな唇からとめどなくあふれ出る饒舌は、臆病な心を隠すため・・・?「本物のまやかし」を黒いドレスを着こなすみたいにまとうホリー。彼女の魅力が文中から伝わってくればくるほど、お話を読み終えた時心に残るもの哀しさが増すようです。

目の覚めるようなティファニーブルーに、金のインクで描かれたねこ――
あとがきで春樹さんも「本のカバーにはできれば映画のシーンを使ってもらいたくなかった。」と書かれていますが、この装丁いいです、とっても。
白いりぼんをかけて、誰かにプレゼントしたくなっちゃうな〜。

(原題『Breakfast at Tiffany's』)
Author: ことり
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『クリスマスの思い出』 トルーマン・カポーティ、(訳)村上 春樹

評価:
トルーマン カポーティ
文藝春秋
¥ 1,697
(1990-11-25)

「ねえ、ごらんよ!」と彼女は叫ぶ。その息は窓を曇らせる。「フルーツケーキの季節が来たよ!」

いつまでたっても大人になれない老嬢と、彼女の無二の親友である少年バディー。 犬のクイーニーをまじえた、二人と一匹の、チャーミングなクリスマスの思い出。

貧しい彼らは一年じゅう節約をして、シーズンがおとずれるととびきりのフルーツケーキを大量に焼き、気に入った人たちに(大統領にも!)贈ります。
もみのきを切りにいく朝の、つめたい、冬の森の輝くような美しさ。相手をおもう気持ちがたっぷりつまった、二人と一匹のすてきなすてきなクリスマス。
思い出のなかにたいせつにしまわれたきらきらした日々、無垢な子供の心をもった人だけに映るような美しい景色たちに、心がしん・・と透きとおるのを感じました。

クリスマスやお正月の、朝からすべてがいつもと決定的にちがうあの感じ。
ぴつぴつはじけるサイダーみたいにきりっとまぶしいあの新鮮でとくべつな一日を、作者は空気ごと、お話にとじ込めたかったのかしら・・・。
この季節がやってくるたび、私はなんどでもこの本をひらいて、胸いっぱいにそんな空気をすいこんでみたくなることでしょう。

「最後の最後に私たちははっと悟るんだよ、神様は前々から私たちの前にそのお姿を現わしていらっしゃったんだということを。物事のあるがままの姿――私たちがいつも目にしていたもの、それがまさに神様のお姿だったんだよ。私はね、今日という日を胸に抱いたまま、今ここでぽっくりと死んでしまってもかまわないと思うよ」

(原題『A Christmas Memory』)
Author: ことり
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