『おやゆびひめ』 H.C.アンデルセン、(絵)ヨゼフ・パレチェク、(訳)石川 史雅

評価:
H.C.アンデルセン
プロジェクトアノ
¥ 1,728
(2005-06-15)

私が幼い頃に大好きだったおはなしです。
くるみの殻のゆりかご、バラの花びらのおふとん、チョウに引っぱってもらう葉っぱのボート。
小さく可憐なおやゆびひめは、けれどある晩ヒキガエルにさらわれて――・・・。

けっしてあかるいばかりではなく、じめじめした土のなかで暮したり、凍えそうな寒空のしたで枯れ葉を身にまとったり・・・暗いイメージもつきまとうおはなしですが、この絵本ではどのページもあたたかく、虹のように華やかな色あいにあふれています。
いかにもチェコの絵本作家・パレチェクさんらしい夢いっぱいの色づかい!
春のよろこびをうたうような彼の画風は、気味の悪いヒキガエルや陰湿なモグラでさえも可愛くキュートにみせてくれるのです。
土のうえから見上げた花の天蓋も、ツバメさんの背中から見おろす小さな王国も、すべてがキラキラした魔法にかけられているみたい・・・。

とろけそうにあまいオレンジ色のお花にたたずむおやゆびひめ。
この表紙のおやゆびひめが、裏表紙ではほんのすこうし変身をとげています。それは・・・、このみずみずしい愛のおはなしを読んだ人へのパレチェクさんからのひそやかな贈り物。

(原題『Tommelise』)
Author: ことり
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『人魚ひめ』 H.C.アンデルセン、(絵)ヨゼフ・パレチェク、(訳)石川 史雅

評価:
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
プロジェクトアノ
¥ 1,836
(2005-12-20)

海の底にあるお城で暮らす人魚ひめは、海の上の世界にあこがれていました。15歳になり海の上に出ることを許された人魚ひめは、嵐に遭い沈んでしまった船から王子さまを助け出しますが・・・。
アンデルセンの名作を、ヨゼフ・パレチェクが手掛けた作品。色彩の魔術師と呼ばれる彼らしい色彩で描かれた絵は、テイスト以上に、読む人に語りかけてきます。

先日、この絵本の洋書(古本)に出逢い、あまりの美しさに心奪われてしまったのです。
洋書だったせいかとても高価だったのでそのときは諦めた私・・・でも後日日本版が発売されていることを知って、思わず購入。清川あさみさんの『人魚姫』につづき、我が家にやってきた2冊めの『人魚ひめ』です。

チェコの絵本作家、ヨゼフ・パレチェクさんが手がけられた幻想的な絵本。
時を越えて愛されつづけるアンデルセン童話にふさわしい、匂いたつような気品あふれるイラストたちがとても素敵。
海の底から見上げた水にはあえかな月の光がまざり、波間にはなくしてしまったかなしい歌声がとける。ゆらゆら広がる長い髪や白い手指――ふせた睫毛にとまった涙は、もの言えぬ人魚ひめの秘めた思いを熱く伝えてくれるよう・・・。
ながれるように美しい本格的な訳文をかこったかぼそい枠の外には、きれいな貝殻や魚、かわいらしい小鳥やお花などの小さなカットがそえられていて、外国のおとぎ話の雰囲気をふわりと盛りたててくれています。
この一冊の絵本のすみずみに至るまで、すべてが水の泡のようにせつなく儚くきらめいて、頁をひらくたびにため息がこぼれてしまうのです。

(原題『La petite ondin』)
Author: ことり
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『あかいくつ』〔再読〕 アンデルセン、(絵)いわさき ちひろ、(訳)神沢 利子

キリスト教の儀式である堅信礼の日に、ふさわしくない赤いくつを履いていった少女・カーレンの物語です。
赤いくつの魅力にひかれ、大切な人の看病もわすれてダンス・パーティにとびだしたカーレンは罰をうけ、赤いくつとともに踊り狂います。踊りをやめようとしてもとまらない足。脱ぎ捨てようとしてもぴったりと足にくっついたままのくつ。彼女はとうとう罪人の首を切る男に、足を切り捨ててくれるように頼みました・・・。

子供心にとても怖いおはなしだと思ったことを憶えています。「赤いくつ」と聞くといまでも、足くびを切り捨て、からだから離れたあとも、そのままくるくる踊り続けた赤いくつの残像が脳裡によみがえるほど・・・。
ピアノの発表会のとき、私も赤いエナメルのくつがどうしても欲しかった。女の子にとって赤いくつは憧れの象徴のようなもの。幼い少女に神様のあたえた罰はあまりにも残酷ですが、キリスト教で堅信礼という儀式はそれほどまで敬われなければならないものなのでしょう。
赤いくつを履いてずっとずっと踊りつづける可憐な少女。はかなさと残酷さが、いつまでも鮮烈な印象をのこす絵本。にじむようないわさきちひろさんの水彩画が、アンデルセンの信仰の世界をみごとに描き出しています。

(原題『De roede scoe』)
Author: ことり
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『絵のない絵本』 アンデルセン、(訳)矢崎 源九郎

評価:
アンデルセン
新潮社
¥ 300
(1952-08)

貧しく孤独な絵描きのもとを、お月様がまい晩おとずれ語ってくれる三十三の物語。
もうずいぶん長いこと世界中を旅し、世界のすみずみをてらしているお月様は、空の上から見たいろいろな国のいろいろなできごとをたくさんたくさん知っています。

お月様が絵描きのところにばかりいるわけにいかないせいか、とても短いお話たち。けれど無駄のない文章で織り上げられた詩的で美しい物語は、そのぶんまっすぐ曇りなく心の奥まで届きます。
夜眠る前のひととき。疲れた体をゆったりと横たえて、文章から幻想画のような風景を思い描く・・・そんなふうにして読んだこの本は、まさに「絵のない絵本」でした。

(原題『BILLEDBOG UDEN BILLEDER』)
Author: ことり
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『人魚姫』 アンデルセン、(絵)清川 あさみ、(訳)金原 瑞人

評価:
アンデルセン
リトル・モア
¥ 2,100
(2007-06-26)

夏のある日、ひとめ見た瞬間に、すいよせられるように購入しました。
完訳の『人魚姫』。人間に焦がれた人魚の、美しすぎて、ひどく哀しい大人の絵本。

きれいな声と引きかえに、人間の脚をもらった人魚姫。
自分以外のお姫さまをえらんだ王子をどうしても殺せなかった人魚姫。
なにかを得るためにはなにかを犠牲にしなければならないこと、誰かを愛することのほんとうの意味――いろんな経験を重ねてきたいまだから、人魚の苦しみやせつなさを、子どもの頃とはちがった思いで受けとめている私自身に気づきます。
本音をいえば、いまでも王子がもどかしい。王女さまが憎らしい。そんな私は大人の一定水準にまでたっしていないのかもしれない。けれども、子どもの頃のようにただやみくもに感情をあふれさせるわけではなくて、どこかでものすごく納得もしているの。・・・それはもしかしたら、諦めることを知ったせい?

新しい訳と新しい絵でよみがえった、誰もが知っている物語。
幾重にもかさなる布、たんねんに縫いこまれた糸、宝石のように輝くビーズ・・・ひと糸ひと糸縫いつけられたみごとなアートワークにしばしうっとりと見とれました。
優雅におよぐ人魚たち、海の世界のあぶくやゆらめき。光り輝く青、蒼、紺碧のグラデーション。叶わぬ想いも、こぼれ落ちた涙も、いとしさ、せつなさ、夢やあこがれ、なにもかもがキラキラと輝いて、本のなかに閉じこめられているみたいです。

(原題『MERMAID』)
Author: ことり
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