『贅沢貧乏のマリア』 群 ようこ

評価:
群 ようこ
角川書店
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(1996-04)

父森鷗外に溺愛されたご令嬢が安アパート住いの贅沢貧乏暮らしへ。
永遠に夢みる作家、森茉莉の想像を絶する超耽美的生き方を、憧れとため息とともにたどった、趣深く斬新な全く新しい人物評伝。

うーーん。群さんの主観があまりにも強すぎて、‘森茉莉の評伝’としてはあまりおすすめできないです。
マリアさんの本を読んだことのない方が、この本を読んでマリアさんを知った気になられるのはちょっとかなしいかも・・・。

私はマリアさんの熱狂的ファンというわけじゃないけれど、彼女のエッセイをたくさん読んできて、私なりに彼女の「贅沢貧乏」の精神を理解しているつもりです。
お金がなくても、人生をすばらしく、ばら色にできるものがある――
そういう文章は、読んでいるだけでシアワセでみたされた気持ちになれます。
マリアさんはたしかに我儘で夢みがちなお姫さまみたいな人。でもそれは唯一無二の、彼女だからゆるされた特異な性質。群さんは彼女の生い立ちから性格、結婚生活から親子関係まで、すべてをご自分やその身辺とくらべているのですが(そもそもそういう構成で書かれた本です。)、世間一般とくらべること自体ナンセンスだと思うのは私だけでしょうか・・・。
それに群さんは、マリアさんの精神の核心ぶぶん――「贅沢貧乏」の本質、一ばん大切なぶぶん――に共感できないみたい。それなのに「憧れ」ている? じゃりじゃりした違和感を抱きながら読んでいた私・・・。

‘群ようこのエッセイ’としてならおもしろく読めるかもしれません。
でも、マリアさんの精神にかぎっては、この本ではなくマリアさんご自身の文章から感じとってほしい、そう思いました。(生意気言ってごめんなさい)
Author: ことり
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『トラちゃん―猫とネズミと金魚と小鳥と犬のお話』 群 ようこ

生きものは、いったい何を考えてるのかなあ、と思うことがよくある。ことばは喋れないにしろ、少なくとも私たちが飼っていた生きものは、非常に感情豊かで、ペットなんていう生やさしいものではなく、ネコやネズミやインコの格好をした、人間であった。(あとがき)

群ようこさんの人柄がそのまんまあらわれたような素直な文章、読んでいてとても気持ちがよかったです。たまにのぞかせる大胆な物言いにもちゃんと‘愛’が感じられて、群さんのやさしさが伝わってきます。
これはそんな群さんが、かつて飼っていた動物たちについて語る楽しいエッセイ。明るく情が深いお母さんが中心になり、かしこい弟とやさしい群さんが愛情たっぷりに動物たちと暮らした日々が、おもしろおかしくイキイキと描かれています(そういえばお父さんはあまり出てこない)。
金魚のよしこちゃん、文鳥のチビちゃん、十姉妹のビンタちゃん一家、インコのピーコちゃん、猫のトラちゃん一家、モルモットのハム子ちゃん、ハツカネズミのモンジロウ、隣家の飼い犬ピーター君・・・みんなそろって食いしんぼうで、どこか人間じみていて。それはもう読んでいるだけでスゴイ騒動なのだけど、動物たちの表情やしぐさがあまりにもかわいらしいのと、人間と動物のすてきなコミュニケーションの数々に、頬はずっとゆるみっぱなし。こちらまでほのぼのあったかい気持ちになりました。

動物たちに‘ペット’としてではなく‘家族’としてせっする群さん一家。
群さんのお家で天寿をまっとうできた動物たちはほんとうにシアワセ。
私も動物がだいすきで、小さいころはカナリヤやハムスターなど飼っていました。あのコたち、天国でなかよく暮らしているかしら・・。私の家で生きたこと、シアワセだったらいいな。
Author: ことり
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『かもめ食堂』 群 ようこ

評価:
群 ようこ
幻冬舎
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(2006-01)

素朴でおいしいゴハンを提供したい一心で、フィンランドの首都ヘルシンキへやってきた38歳のサチエは町角に小さな食堂を開店します。
その名は「かもめ食堂」。
「おにぎりは人に作ってもらったものを食べるのがいちばんうまいんだ」――古武道の達人で‘人生すべて修行’がモットーの父は、母を亡くし家事いっさいを背負うこととなったサチエに遠足と運動会の時だけはシンプルなおにぎりをつくってくれたもの。そのおいしさをフィンランドの人びとにも、とおにぎりを握るサチエでしたが、興味本位に覗く人はいてもお客さんは誰も来ない毎日。
そんなある日、日本好きのフィンランド人青年がにこにこしながらお店に入ってきました。めでたくお客さんをむかえたかもめ食堂は、少しずつ空気が動きはじめて・・・。

なにもかも放りだして遠くへ行ってしまいたい・・・そう思うことは誰しもあると思うけれど、このお話でもそれぞれに事情を抱え日本を飛びだした2人の中年女性(ミドリとマサコ)がフィンランドを訪れ、サチエと出会います。日本から遠く離れた異国の小さな食堂に、偶然にも3人の日本人女性が集結するのです。
サチエの優しくたくましい人柄にふれた彼女たちはそこで働くことになり、お店もだんだんと繁盛するようになっていきます。ちょっとしたできごとと会話がつむぎ出すなにげない日常。多くをもとめず、あきらめもせず、現実を見据えながら異国でしっかりと生きる3人の姿が元気をくれるハートフル・コメディです。

偶然も必然も、すべてを受け入れて生きる。
いまいる場所を愛し、そこに生きる人と一緒に生きる。
どこにいたって、日本人として、日本人らしく。
しっかりお米を食べて。前をむいて――。

この本は、同名映画のための書き下ろし。
小林聡美さん(サチエ)、片桐はいりさん(ミドリ)、もたいまさこさん(マサコ)というなんとも魅力的なキャスティングで、ちょうど昨日より公開中です。
・・・ハンバーガーでもポップコーンでもなく、おにぎり(もちろん誰かの手づくりの)を片手に観たいな。
Author: ことり
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『挑む女』 群 ようこ

評価:
群 ようこ
文藝春秋
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(1997-03)

キャリア二十年の編集者アキコ、41歳。
優雅な家事手伝いのサユリ、41歳。
夫と姑に不満爆発の主婦タカコ、32歳。
いい男をゲットすることに命をかけるOLルリ、27歳。
人生、なかなか思うようには運んでくれない・・・立場も年齢も性格もバラバラな友人どうしがくり広げる人生の悲喜こもごもを、ユーモラスに描いたドタバタ痛快小説。

誰からも頼りにされてしまう、いわゆる‘仕切り屋’のアキコを軸に話は進んでいくのですが、途中でサユリ、タカコ、ルリの視点で書かれた章も挿入されていて、それぞれの価値観や個性の差がおもしろく読ませてくれます。
かなりコメディタッチではあるけれど、「あるあるある!」と思わずうなずいてしまうシーンも多いから、ストレスを抱えた女性にはとくにおすすめです。さくさく読めるので疲れていてもきっと大丈夫。

さてさて。4人の女たちは、「自分の居場所」を見つけることができるでしょうか?
Author: ことり
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『いいわけ劇場』 群 ようこ

評価:
群 ようこ
講談社
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(2002-04)

12人の「いいわけ人生」がつまった、哀しくも可笑しい短編集。
目次からさっそく言い訳がはじまります。

『120分の女――目立ちたいから』
『止まらない男――したいから』
『満腹家族――幸せだから』
『老婆の幸福――もったいないから』
『無添加青年――あぶないから』
『欲望の女――格好いいと言われたいから』
『餌やり爺さん――かわいいから』
『癒されない女――疲れてるから』
『パパの憂い――狂おしいほど愛してるから』
『妄想中年――かまってほしいから』
『ぶりぶりママ――生きていかなきゃいけないから』
『炎の勝負師――金がほしいから』

きっと最初は普通の人よりほんの少し○○だっただけ。
だけどそこにうらやましいくらいの全神経をそそぎ込んでしまったために、あさっての方向に突き進んで行ってしまう人びと。
その本末転倒ぶりは滑稽ですらあるのだけれど、本人たちにまわりなんて見えはしない。立ち止まるということを知らない。反省なんかしない。なにか言おうものなら、「だってしょうがないじゃない。○○なんだもん!」なんて噛みつく12人のふくれっつらが、ほらね、想像できてしまうはず。

おもしろおかしいお話たちなのですが、それでいて、ある瞬間みょうにリアルだったりしてドキっとさせられます。誰もが(もちろん私も・・)こんなふうになってしまう可能性をはらんでいるのかも・・・そう思えてくるからちょっぴりゾクリ。
あなたのまわりにこんな人、いませんか?
Author: ことり
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