『天国の本屋―恋火』 松久 淳+田中 渉

そして、二人はもうひとつ約束をしました。二人の想いと、二人の成長の証を形にしようと。

リストラされたピアニスト・健太は、アロハシャツの不思議な老人に「天国の本屋」の短期バイトとしてつれて来られます。そこで健太はもの憂げなひとりの女性ピアニストに出会い、彼女の弾くピアノに接することでピアノのほんとうの素晴らしさに目覚めていきます。
おなじ頃、現世では商店街の飴屋の娘・香夏子が、商店街復興のための花火大会開催に向け奔走していました。香夏子の町にはかつて、「その花火を見ればふたりの恋は成就する」という伝説の花火大会があって・・・。

健太、天国のピアニスト、香夏子、亡くなった叔母、伝説の花火師。
想いがつながる花火大会当日、「もうひとつの約束」が奇蹟をよび起こす――。

「天国の本屋」シリーズ完結編のこのお話は、天国と現世でふたつのストーリーが同時にすすんでいくかたちです。
目をつぶれば、まぶたにうかぶ「恋する花火」。
耳をすませばほら、優しいピアノの旋律が聴こえてきそう。
約束は時空を超えてかなえられ、ふたつの世界がひとつに収束する瞬間がとても鮮やかに心を打ちました。
Author: ことり
国内ま行(松久 淳+田中 渉) | permalink | - | -
 
 

『天国の本屋―うつしいろのゆめ』 松久 淳+田中 渉

だから昔の人は、うつろいやすく消えてしまうという意味を、そのはかなく美しい青に込めて、うつし色と呼んだのだ。

「天国の本屋」シリーズ第2弾の主人公は、篠原イズミ。29歳。
第1弾と同じく、アロハシャツの不思議な老人が「移動士」として登場し、イズミを現世から「天国の本屋」へとつれて行きます。
そしてイズミは本屋から歩いて5分ほどのところにある古い邸宅で、22代目のヘルパーとして働くことになるのですが、偏屈で陰気くさいご主人(長一郎)の厭味や罵倒と格闘する毎日のなか、彼女は長一郎に父の面影を見て・・・。

人と人との関わりをあたたかく、時にせつなく読ませてくれる上質なファンタジー。
ふわりと降りて、じんわり沁みます。
Author: ことり
国内ま行(松久 淳+田中 渉) | permalink | - | -
 
 

『天国の本屋』 松久 淳+田中 渉

評価:
松久 淳,田中 渉
新潮社
---
(2004-04-24)

深夜のコンビニで、さとしはアロハシャツを着た「不思議なおっさん」に出会う。さとしは突然意識をうしない、次に気づいた時、そこは「天国の本屋」だった。

人間の現世での寿命というのは、実は「百歳」ジャストに設定されている。これが本当の意味での「天寿」だという。しかし、もちろん誰もが百歳まで生きられるわけではない。二十歳で死ぬ者もいれば八十歳で死ぬ者もいる。そこで、残った天寿をまっとうする場所が「天国」だというのだ。(中略)そして、百歳という天寿をまっとうすると、人は天国での記憶をすべて消去され、赤ん坊として現世に再び生まれてくる。
このお話のなかで「天国」はこんなふうに設定されています。(もちろん現世で百歳以上生きる者の定義づけもあります) さとしは死んだわけではなくて、現世から一時的に送られてきて、またすぐに現世に戻される「天国経験者」。
「天国の本屋」でさとしは短期バイトとして働きます。仕事のなかにはこのお店が売りにしているサービス「朗読」というものがありました。はじめはいやいやながら引き受けたさとしですが、やがて朗読によって‘誰かに何かを求められる喜び’をかみ締めるようになっていきます。
そして、おなじ本屋で働く緑色の目を持つ少女・ユイに恋をして・・・。

ほんとうに死後の世界がこんなふうだといいなぁと思ってしまいます。
そうしたら、誰も死ぬことなんてこわくないもの。
さとしが「天国の本屋」にやって来たことで変わっていくユイ、そしてさとし自身の姿が瑞々しく描かれていて、ふわふわの柔らかな気持ちになりました。
忙しい毎日に、どうぞ癒しのエッセンスを。
Author: ことり
国内ま行(松久 淳+田中 渉) | permalink | - | -
 
 

『ホワイトグッドバイ』 松久 淳+田中 渉

評価:
松久 淳,田中 渉
幻冬舎
---
(2003-12)

ブリュッセルに本部を置くユーロポール(欧州刑事警察機構)の捜査官・一瀬は、一人の男を追って北の大地に降り立ちます。
12年前に北海道・名館で起きたある事件以来、ユーロポールと南米の有名なテロ組織「コラソン・デル・ソル」の両方から追われていた男がいまになって、危険を冒してまで北海道に舞いもどった理由とは・・・?

静謐で無垢で、ひりつくような白い雪の気配。
無音の世界が豊かなまでに広がり、ぴんと張りつめたつめたい空気があたり一面を支配しています。

「もし神様が許してくれないんだったら、私が許してあげる」
物語をつつむまっ白な雰囲気と、まぶたの裏で十字に輝く太陽の残像が胸にせまり来るミステリー。
だけど私にはちょっぴり退屈だったかな・・・。ストーリーの流れそのものに最後まで魅力を感じられなかったお話でした。
Author: ことり
国内ま行(松久 淳+田中 渉) | permalink | - | -
 
 

『プール』 松久 淳+田中 渉

評価:
松久淳+田中渉
小学館
¥ 1,155
(2002-11-28)

伝えたいことがあります。
同じときを生きているあなたに伝えることが大切なんだと思う。

ある日とつぜん差出人不明の手紙が瑞江のもとに届き、はじまる物語。
手紙は、1通、また1通と届き、それと並行するように、80年代前半の長野、90年代後半の東京、そしてアメリカ・・・2つの時代にまたがる3つの物語がくり広げられていきます。
繋がりのあるようでないような3つの世界。じょじょにみずからの輪郭をうかび上がらせていくお話たちは最後の手紙でみごとに融合し、ゆるゆると雪どけ水のように流れだし、やがてひと筋の川になるさまを見せてくれます。

すべての謎が、今――・・・

不思議な感覚を味わえる、ミステリアスな恋愛小説。
しずかなストーリーに身をまかせて読んでいると、いつのまにか心が温かなもので満たされていく・・・それはきっと、人を想うせつなさとそれを伝えることのむずかしさが飾らずに描かれているから。
「人がいなくなるってことはさ、存在がなくなるってことじゃなくて、いないってことが存在することなんだよ。」
人はひとりじゃないよって、やさしく語りかけてくれる物語。
凍える冬の、ひそやかな夜に。
Author: ことり
国内ま行(松久 淳+田中 渉) | permalink | - | -