『スパイク』 松尾 由美

評価:
松尾 由美
光文社
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(2002-11-19)
瓜二つのビーグル犬を連れた林幹夫と私・江添緑は、初対面から惹かれ合った。驚いたことに、飼い犬の名前も同じ「スパイク」なのだ。
ところが再会を約束した日、幹夫は現れなかった。気落ちする緑に、突然、愛犬が話しかけてきた!「ぼくは幹夫のスパイクだ」と。幹夫の消息を求め、一人と一匹の冒険が始まった――。
不思議で切なく愛おしい、心に沁みる恋の物語。

パラレルワールド――あるとき、あるできごとが災い(?)して、生まれてしまったもうひとつの世界。
このお話では、毛色のうすいそっくり顔の二匹のビーグルが、「向こう」と「こちら」の世界の壁をくぐり抜け入れ替わってしまいます。飼っている犬がとつぜんおしゃべりを始め、それが思いもかけない「もうひとつの世界」のことだったら・・?!
小さな疑問、小さな恋心がすこしずつ謎をふくんで、緑とスパイクの愉快なやりとりにワクワクしながらいっきに読み進めてしまいました。

松尾由美さんの小説は、恋愛とSFとミステリーがほどよくブレンドされているものが多いのですが、この本もそう。そしてラストはやっぱりほんのりと切なくて・・・。
SFはちょっとにがて、そんな方にも彼女の書かれたものはおすすめです。
Author: ことり
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『九月の恋と出会うまで』 松尾 由美

エアコンの穴から、不思議な男の囁き声が聞こえてきた。自分は未来から話しかけている、お願いしたいことがあるというのだ。志織は半信半疑でその奇妙な仕事を引きうけたが・・・。
恋が恋を呼ぶ奇跡のラブストーリー。

新しく借りた住みごこちの良いお部屋。
そこで志織に舞いおりた「マグカップ一杯分の奇跡」のお話です。
未来からの声、毎週水曜日の不可解なミッション、突然おしゃべりを始めた熊のぬいぐるみ――声の主はいったい誰?どんな理由があってこんなことをさせるの?
それから途中ででてくる‘タイムパラドックスの矛盾’なんていうちょっぴりややこしいぶぶん・・じゃあこのお話のラストはどうやって納得させてくれるんだろう?
いろんなことが気になって気になって、いっきに読んでしまいました。
人を想う気持ちが起こした、とびっきりの奇跡・・・。
ラストで次々とびだす驚きの新事実は、私のギモンをきちんと解決してくれるもの。そしてなによりこちらまで心がほこほこしてくるのがうれしい。SFぐあいもほどよくて、ありがちなラブストーリーには飽き飽き、そんな方にもおすすめです。

「その人のために奇跡を起こしたい?」
「そりゃ、そうだよ。男はみんな奇跡を起こしたいと思ってる。好きになった女の人のために」
Author: ことり
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『ハートブレイク・レストラン』 松尾 由美

評価:
松尾 由美
光文社
¥ 1,575
(2005-11-19)
郊外の、あまり流行ってはいないファミリーレストラン。
その店の隅、壁を背にした奥のテーブルには、小柄なお婆ちゃんが座っていた。
フリーライター・寺坂真以が出会う6つの難題――『ケーキと指輪の問題』、『走る目覚まし時計の問題』、『無作法なストラップの問題』、『靴紐と十五キロの問題』、『ベレー帽と花瓶の問題』、『ロボットと俳句の問題』を、そのお婆ちゃんがあざやかに解きほぐす連作恋愛ミステリー。

おもに犯罪ではない‘日常の謎’を、売れない女性フリーライターがキュートなお婆ちゃんの助言を得てみごとに解いていく設定です。
このお婆ちゃん、じつは幽霊だというのがミソなのだけど、幽霊である必要性がとくに感じられなかったのがちょっぴり残念。謎解きと並行して描かれる真以の恋も、とってつけたようなうすっぺらな印象でしかなくて、全体的なおもしろみにも欠ける気がしました。
読みやすいので、息抜き的な読書にはいいかも・・・。
Author: ことり
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『雨恋』 松尾 由美

評価:
松尾 由美
新潮社
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(2005-01-26)

はじめは声だけがきこえた。
それが、自分の死の真相が少しずつ解明され納得するたびに、脚だけがみえ、下半身、首から下、とじょじょに姿をあらわしてゆく彼女。
彼女は3年前にこの部屋で死んだ、千波(ちなみ)という女性の幽霊。雨の日にだけあらわれて、そしてぼくと恋をする。

ミステリーにSF要素がまざりあった、異色の恋愛小説です。
千波に、私がこんなカタチでこの部屋をさまよっているのは自分の死に納得がいっていないから。そんなふうに言われたぼくは、最初は彼女に出ていって(成仏して)ほしい一心で彼女の死の真相解明に乗りだしたわけなのだけど、その気持ちはしだいに変化を遂げていきます。
真実がすべて明らかになり、千波の顔をみることができた時、ぼくたちに訪れるもの、それは・・・。

つかのまの恋。はかない抱擁。やわらかなキス。
この雨が、やんだら――・・・

せつない恋のお話です。けっして結ばれることのない・・・。
ふたりの恋の結末がわかってしまうがゆえに、のどの奥が熱くなりました。
雨の日がもたらした、あまずっぱくて心やさしい、ちいさな奇跡の物語。
Author: ことり
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