『容疑者Xの献身』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
文藝春秋
¥ 1,680
(2005-08-25)

「以前おまえにこういう問題を出されたことがある。人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか――」
アパートの隣に住むシングルマザー・靖子を愛してしまったさえない風貌の数学教師・石神。今でこそ高校教師に甘んじているけれど、じつは彼はかつて知る人ぞ知る天才数学者だった。靖子がもとの夫を殺したことを偶然知ってしまった石神は、天才的な頭脳をフル稼働させて彼女の犯罪を隠蔽するが・・・。

おそろしく冷静で頭のいい石神がつくりだした筋書きをあばくのは、「ガリレオ」シリーズ(『探偵ガリレオ』『予知夢』)の天才科学者・湯川助教授。
湯川助教授は今回、石神の旧友かつライバルという立場で登場します。ふたりの頭脳合戦とあざやかなトリックが魅力ながら、ラストには苦さとむなしさの残るせつなすぎる純愛ストーリーでもあるこのお話。
人はどこまで深く、一人の人を愛しぬけるのでしょうか。

「思い込みによる盲点をつく」・・・文中にこんな言葉がありましたが、まさに私たちの盲点までも思いっきり突きやぶってくれる大満足のミステリーでした。
東野さん自身「今まで書いてきた作品の中でまちがいなくベスト5に入る」と語る渾身の最新刊。衝撃のラストは必見!
Author: ことり
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『幻夜』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
集英社
¥ 1,890
(2004-01-26)

これだけ読んでもじゅうぶん楽しめるように書かれていますが、『白夜行』を事前に読んでおくことがこのお話を最大限に楽しむためのヒケツかも。すでに読まれた方も、できれば直前に読み返されることをおすすめしたいです。
このお話と『白夜行』とは、こまかなぶぶんでかなりリンクしているから。

1995年1月17日。西宮。
瓦礫と粉塵のなか、金銭トラブルの末に叔父を衝動的に殺めてしまった水原雅也のそばで、新海美冬は妖しげにたたずんでいた。
未曾有の大惨事・阪神大震災の朝に出逢った男と女の壮大なミステリー。

『白夜行』にはまったくなかった、主人公(桐原と雪穂)目線の描写。
今回のお話に、『白夜行』とくらべて‘男の哀愁’みたいなものをより強く感じるのは、雅也目線で描かれるぶぶんがたくさん出てくるせいでしょうか。女性側(美冬)目線の描写は相変わらずないことが、いっそう彼女の‘魔性の女’度を際だたせているみたい・・・。桐原と雅也の印象がかなり違うのも、もしも桐原のしていたことを‘普通の男’がせざるを得なくなったとしたらどうなるか、そんな位置づけで雅也は描かれているように思えます。桐原はそれだけ特殊な魅力をもった人物だったといえるかも。
――いったい、美冬とは‘誰’なのか。
読んでいるあいだ、ずっとずっと私につきまとっていたナゾでした。東野さんはそこかしこにそのヒントを散りばめてくれているけれど、それでも推測はできても矛盾点が最後までのこされてしまう、そんなちょっといじわるな描かれ方をしています。
そしてこのラスト・・・、まだまだ先は続きそうな予感。もやっとした思いがのこるのも、このお話にかぎってはおもしろさの証しなのです。
Author: ことり
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『白夜行』〔再読〕 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
集英社
¥ 2,052
(1999-08)

続編(『幻夜』)刊行ということで、約4年半ぶりに読みかえしてみました。
はじめて読んだときはこんなにも複雑な小説だという予備知識がぜんぜんなくて、途中でなんども戻り難儀した記憶があったので、今回はノートをそばに置き、かなり念入りに書き出しながらの読書。こうして読み終わる頃には複雑な(というか、ぐちゃぐちゃの・・・)「人物相関図」ができ上がっていたのでした。
スケールの大きさと、細部にいたるまで緻密に設計された伏線には、いまさらながら舌を巻きます。私が書き出した登場人物の総数はなんと47人。そして47人をそれぞれに結ぶ線が、蜘蛛の巣のごとく張りめぐらされていました。
その巣の中心で何本もの糸を放っていたのが、桐原亮司と唐沢雪穂。
この、二人です。

物語は、1973年に大阪の小さな町で起こった「質屋殺人事件」に端を発します。
被害者は質屋を営む桐原洋介。彼は当時まだ小学生だった亮司の父親で、また、洋介と最後に会った質屋の客・文代の娘が、おなじく小学生の雪穂でした。
容疑者は何人もあがっていながらも、やがて事件は迷宮入りに。
しかしどうしてもあきらめきれないのが笹垣潤三という刑事。その後笹垣が執念で追うこととなった、19年にもおよぶ長い長い二人の「白夜」が世相とともに描かれます。
女らしいふるまいを身につけ、猫を思わせるアーモンド形の目と妖艶な魅力で人びとを惹きつける雪穂。そして彼女のまわりで次々と不幸になってゆく人びと・・・。
その影で、常に働き続けた得体の知れない黒い力とは――?!

邪魔者を排除し、偽りで塗りかためられた二人の人生に、太陽は存在しなかった。
読み終えた後には、冷えびえとした、えも言われぬ切なさが残ります。
Author: ことり
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