『虚像の道化師』 東野 圭吾

新興宗教の教祖が送る念、奇妙な幻聴、不可思議な殺人現場、犯人が仕掛けたトラップ。ガリレオこと湯川がすべての謎を解き明かす。
ガリレオシリーズ、待望の最新短篇集!

『幻惑す(まどわす)』、『心聴る(きこえる)』、『偽装う(よそおう)』、『演技る(えんじる)』の4編。「ガリレオ」シリーズの第7弾です。
相変わらず、湯川先生の頭脳が冴えわたります。
ひと通り楽しんだ私だったけど、あまりにもサラサラするする読めてしまってちょっぴりもの足りなさも。もちろん、安定したおもしろさはあるのだけれど・・・。
Author: ことり
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『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2012-03-28)

夢をとるか、愛をとるか。現実をとるか、理想をとるか。人情をとるか、道理をとるか。家族をとるか、将来をとるか。野望をとるか、幸せをとるか。
あらゆる悩みの相談に乗る、不思議な雑貨店。しかしその正体は・・・。
物語が完結するとき、人知を超えた真実が明らかになる。

人びとと場所が時を超えてつながる、ほっこりせつないファンタジー。
悪事をはたらいた3人組が身をひそめる廃屋(ナミヤ雑貨店)に、真夜中、悩み相談の手紙が舞い込みます。返事は牛乳箱に入れておくこと・・・。
さいしょ、このふしぎな手紙のやりとりは誰かの作為によるものなのかも?なんて思いながら読み進めていた私・・・。正真正銘ほんとうの奇蹟、だったのですね。

人生の岐路で、人びとがさまざまにかかえている悩み。
それにこたえる浪矢さんと、時空を超えた場所にいる3人組――
いくつものエピソードが奇妙な縁でからまり合い、やがてナミヤ雑貨店とある児童養護施設とを結ぶひとつの深い深い愛が明かされてゆきます。

読後感もよく、どなたでも楽しめそうな仕上がりですが、1970年代に青春を送った方(とりわけビートルズ・ファン!)には、きっとたまらないお話です。
Author: ことり
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『歪笑小説』 東野 圭吾

新人編集者が目の当たりにした、常識破りのあの手この手を連発する伝説の編集者。自作のドラマ化話に舞い上がり、美人担当者に恋心を抱く、全く売れない若手作家。出版社のゴルフコンペに初参加して大物作家に翻弄されるヒット作症候群の新鋭・・・俳優、読者、書店、家族を巻き込んで作家の身近は事件がいっぱい。ブラックな笑い満載!小説業界の内幕を描く連続ドラマ。とっておきの文庫オリジナル。

東野圭吾さんの「○笑小説」シリーズ第4弾。
出版業界の内幕を鮮やかに暴くブラックな短篇集で、どちらかといえばイメージは『超・殺人事件―推理作家の苦悩』のほうが近いのかな?(あっ、でも『黒笑小説』の文壇連作とのつながりはあります)

編集者、新人作家、大御所作家たちをめぐるさまざまな事情・・・文芸誌に文学賞、映像化などにまつわる裏話的なエピソードがてんこ盛りで、私たちが日頃読んでいる「本」が出来上がるまでのいろんな人たちのいろんな苦労がリアルかつユーモラスに描かれています。
お話を通して、「編集者って大変だよな、いつもありがとう」なんて東野さんの声がきこえてきそうなことも、読んでいて心地よかった。こんなふうに謙虚な目線で(しかもおもしろく)舞台裏を描けるベストセラー作家はきっと彼だけです。
実在の有名人・有名作家をもじった名前がたくさんでてくるのも愉快だし、あと「巻末広告」にもニンマリ。最後の1ページまで楽しめる一冊でした。
Author: ことり
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『マスカレード・ホテル』 東野 圭吾

都内で起きた不可解な連続殺人事件。次の犯行現場は、超一流ホテル・コルテシア東京らしい。殺人を阻止するため、警察は潜入捜査を開始し・・・。1行たりとも読み飛ばせない、東野ミステリの最高峰。

誰かが誰かをこのホテルで殺害する――
のこされた暗号でつぎの殺人が予告され、犯人もターゲットも分からないまま警察はホテルマンや利用客の‘仮面’をかぶり、潜入捜査を開始します。
連続殺人事件の大きな謎を追いながらも、一流ホテルという特殊な場所で起こるさまざまなできごとがていねいに描かれ、どちらかというとそんな枝葉がすばらしくて、ホテルで働く人たちの心意気やこまやかな気くばりにひとつひとつ感動しながら読んでいきました。
人の仮面を剥がすことが仕事の警察と、お客様の仮面を守ることが仕事のホテルマン。さいしょはぶつかり合っていた新田刑事とフロントクラークの尚美がすこしずつお互いを認め、心を通わせていくさまが描かれます。それは読んでいてとても気持ちがよかったのです。

最終的に判明する犯人は予想もしていなかった人物でしたが、そういうミステリーとしての一面よりも、迷いながらも地道にプライドをもってまっとうする‘プロの仕事っぷり’を見させてもらった気分。愚鈍そうに見えて、しっかり新田刑事をフォローしている能勢刑事も心憎いほど素敵だったし、ラストまでおもしろく読みました。
Author: ことり
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『真夏の方程式』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
文藝春秋
¥ 1,700
(2011-06-06)

夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか・・・。
これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは――。

眩しい陽光、美しい海。「ガリレオ」シリーズの長編です。
海辺のちいさな田舎町・玻璃ヶ浦を舞台に、小学生の恭平と湯川先生が遭遇する真夏の殺人事件。被害者が元警視庁の刑事だったことから、過去に東京で起きたもうひとつの事件があばかれていきます。

現地にいる湯川先生の‘手足’となり、東京ですすめる草薙・内海刑事の地道な捜査、湯川先生と恭平のほほえましい交流、そして美しい海の環境をひっしで守ろうとたたかう成実(旅館の娘で恭平のいとこ)たちの奮闘ぶりがからまりあうように描かれていて、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
過去の事件が現在の事件にどんなふうにつながっていくのか、というのはもちろん気になるのだけれど、それ以上に東野さんが描きたかったのは恭平の‘成長’なのかな・・・読んでいるとそんなふうに思えてきます。恭一をけっして子ども扱いすることなく、時につめたく突き放しながら科学の魅力を教えていく湯川先生。二人のやりとりの場面はとても愉快で、読んでいて楽しかった。(そのクセ、二人の会話が伏線になっていたりするから気が抜けないのだけど)
「博士」と出会うことで、この夏恭平は一歩大人に近づきます。いつかほんとうに大人になった時、恭平はどんなふうにこの夏のことを思いかえすのでしょうか・・・恭平の‘試練’を思うとせつない苦味のようなものがこみ上げてくるけれど、でも同時に「きっと大丈夫」そんな頼もしい気持ちも湧いてくるのです。

それにしても。
長編でのガリレオ先生は、短篇シリーズよりも情に厚い気がするのは私だけ?
Author: ことり
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『麒麟の翼』 東野 圭吾

寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、胸に刺さったナイフだった。大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。

加賀刑事シリーズ第9弾。
派手さはないけれど、東野さんの伝えたい思いがしみてくる一冊でした。

誰かのために祈ること、誰かを救うことのほんとうの意味――
犯人を捕まえることはもちろん大事。でも加賀刑事は、のこされた人たちが今後の人生にどんなふうに希望を見出していくのかをなにより大切にしながら、真相にせまっていくみたい。ひとつひとつ丹念に捜査をかさねる彼の一貫した姿勢は、見ていてほんと気持ちいいです。
ただ、いくつかの問題が放置されたまま終わっていて・・・ちょっとモヤモヤの後味。それにもっと大胆に驚かせたり裏切ったりしてくれてもよかったかな。
東野さんにたいしてはついついハードルが上がってしまう身勝手な私です。
Author: ことり
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『プラチナデータ』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
幻冬舎
¥ 1,680
(2010-07)

犯罪防止のため受刑者や国民のDNA情報の管理が可能となるDNA法案が国会で可決し、警察庁はDNA捜査システムを導入。警察庁特殊解析研究所主任・神楽龍平が操るこのDNA捜査システムは、現場の刑事を驚愕させるほどの正確さを持って次々と犯人を特定。検挙率が飛躍的に上がる中、それを嘲笑うかのような連続殺人事件が発生。警視庁捜査一課の浅間は、神楽のもとへ訪れ、遺留品のDNA解析を依頼する。事件は、いつものように簡単に解決されるはずだったが――。

監視社会と多重人格をテーマに描く、東野さんお得意の理系ミステリーです。
科学が目ざましく進歩して、国民はDNAレベルで国家に管理されつつある・・・そんな近未来の日本で起きた殺人事件の真相。
すべてがデータ化・簡略化されている日本では、殺人事件の捜査すらシステム頼み。足を使って調べていく地道な捜査方法は過去のものになっています。上層部の動きに不信感を抱く刑事と、身体のなかにべつの人格をもつシステム解析員、この2人が得体の知れない大きな陰謀に巻きこまれていくさまが東野さんらしい筆はこびで描かれていて、いっきに読み進めてしまいました。

お話のなかに、「人間の心は遺伝子によって決まる」と信じている人がでてきます。「心は、単なる化学反応と電気信号に過ぎない」という人も。
機械があふれ、細胞のひとつひとつまで監視されている世の中は、なんてむなしくて味気ない世界でしょう。
でもいま、少しずつそこに向かっているのかもしれない私たち・・・。思いきって心身を解き放ち、人のやさしさにふれ、自然を感じてみることの大切さを伝えてくれている小説でもありました。
Author: ことり
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『カッコウの卵は誰のもの』 東野 圭吾

スキーの元日本代表・緋田には、同じくスキーヤーの娘・風美がいる。母親の智代は、風美が2歳になる前に自殺していた。緋田は、智代の遺品から流産の事実を知る。では、風美の出生は? そんななか、緋田父子の遺伝子についてスポーツ医学的研究の要請が・・・。さらに、風美の競技出場を妨害する脅迫状が届く。複雑にもつれた殺意・・・。超人気作家の意欲作!

「遺伝子」「ウィンター・スポーツ」、そして「事件」。
東野ミステリーならではのキーワードを、父娘の絆や少年の葛藤、研究にかける科学者の熱い思いがつないでいます。
少しずつ明かされてゆく過去、ひとりの少女の出生の秘密。二転三転する展開から目が離せなくなって、いっきに読みました。
でも最後まで読み終えて、「そういうことだったのね」と分かったとたんに頭をもたげるいくつかの疑問・・・。だったらあの人はどうしてあんなことしたんだろう、これくらいの理由でそこまでするかしら? そんなふうに思うのは、この小説と私自身の感性のズレなのかも。
東野さんは、書き方が抜群に巧いので、ついつい引き込まれてしまいますね。
Author: ことり
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『新参者』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
講談社
¥ 1,680
(2009-09-18)

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が・・・」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。
着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。

加賀刑事シリーズの第8弾は、東野さんにはめずらしい人情ミステリー。
人形町の商店街を舞台に、短編のひとつひとつがつながりを見せ、やがてひとつの殺人事件を解決に導きます。
そこに生きる人びとのかかえる悩み、小さな謎・・・事件には直接関係のないそれらを日本橋署に赴任したばかりの‘新参者’加賀刑事がするどい観点からときほぐし、どんどん事件の核心にせまっていく展開はお見事。
ものすごく傲慢な言い方だけど、この構成、すごく巧いなあと思いました。
わだかまった人間関係や思い違いだとかすれ違い、人と人がかかわって生きていくうえでけっして避けては通れない問題たちがひとつずつクリアにされていく、それを知ることで癒される人がいる・・・そんな彼らを見ていたら、じんわりとうれしくなって、心がほろり。

でもその一方で、加賀刑事は少しばかりおせっかいすぎると思ってしまう私もいて。
現実にこんな刑事さんがやってきて、事件とは関係ないと分かったあとまで根掘り葉掘りやられたらちょっぴり鬱陶しいかも・・・考えすぎかな?
Author: ことり
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『パラドックス13』 東野 圭吾

評価:
東野 圭吾
毎日新聞社
¥ 1,785
(2009-04-15)

13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13現象”とは何か。生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。

「世界」が一瞬にして崩壊してしまい、訳も分からないままとり残された13人が、それでも生きる道をもとめ極限状態をさまようパニック・ノベルです。
「世界」が変われば善悪の尺度すら変わってしまう・・・年齢差、性の違い、これまでの人生でつちかわれてきた価値観や性格など、彼らひとりひとりの相違がさまざまなドラマを生み、そのひとつひとつに考えさせられました。
こうしたほうがいい、そのほうが未来がある、って頭では分かっていてもどうしても割り切れないものが残る・・・それはきっと、人には‘心’があるから。
「生きるということは、ただ命を繫ぐというだけのことじゃない」
そんな核心をついた言葉が印象に残っています。エッセイ『たぶん最後の御挨拶』に「エッセイはこれで最後にしたい。訴えたいことは小説で書いていきたい」というようなことが書かれていましたが、この言葉は小説の登場人物に託された、東野さん自身の‘声’なのかもしれませんね。

ハリウッドのSF映画を観ているような感覚でいっきに読み進められた一冊。
もうすでに映画化の話がでていたりして?なんて思ってしまうほど、映像化向き。
Author: ことり
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