『ゆんでめて』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,470
(2010-07)

身体は弱いが知恵に溢れる若だんなの、史上最大の後悔。
ズレてはいるけど頼りになる妖たちも、今度ばかりは、助けられない?「しゃばけ」シリーズ第九弾。

「あの時、ああしていればよかった」――
そんなふうにきっと誰しも思い当たるはずの人生の岐路。弓手(左)の道と馬手(右)の道、若だんなの行く手でふたつに分かれた未来。
『ゆんでめて』、『こいやこい』、『花の下にて合戦したる』、『雨の日の客』・・・お話ごとにどんどん時間をさかのぼっていき、最終話『始まりの日』がまた『ゆんでめて』につながって、最後にそのふしぎな構成の謎がとけます。

いくつもの別れ道をくり返し、えらんでは切り捨てて、自分色に織りなしてゆく人生。
本来の道を行かなかった若だんなを‘もうひとつの未来’で待っているのは、大切な友との別れ、心揺れる恋、新たな妖(あやかし)たちとの出逢い・・・すべて読み終えた時には、ほろり哀しい味がしました。いやおうなく感じさせられるのは、すべてを手に入れることはできないということ。
若だんなが馬手で出逢った賑やかな人たち。これから先の未来でも、めぐり巡っていつかまたちがうかたちで出逢えたらいいのに。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『ころころろ』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,470
(2009-07-30)

摩訶不思議な妖怪たちに守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいる江戸有数の大店の若だんな・一太郎。ある朝起きると、目から光りが奪われていた!その理由は、空前絶後のとばっちり?長崎屋絶体絶命の危機に、若だんなが名推理。だけど光りの奪還には、暗雲が垂れこめて――。佐助は妻と暮らし始め、どうなる、若だんな?
絶好調「しゃばけ」シリーズ第八弾。

目次をひらいてみると、『はじめての』、『ほねぬすびと』、『ころころろ』、『けじあり』、『物語のつづき』の5つのタイトル。でもいつもの短編スタイルとはちょっとことなり、それぞれに完結せずにお話がつぎつぎにつらなっていく、ひとつの長編小説のような印象でした。
ある朝、若だんなの目から突然光りがうばわれてしまい、長崎屋の妖たちは若だんなの目を治すために奔走します。若だんなのためだけに立ち動きたいのに妖や子供たちに頼られて困惑する仁吉(『ころころろ』)や、なぜか奥さんと暮らしていてフワフワとした現実にまるめこまれてしまう佐助(『けじあり』)・・・そんないつもとちがう兄やたちの(人間らしい?)表情が楽しい。もちろん屏風のぞきや鳴家たちの出番もたくさんあって、きゅわきゅわころころ、心をなごませてくれます。

ふり返ってみると、たくさんの恋(若だんなの初恋も!)がつまっていた今回のお話、「神とはいかなる者なのか」という問いに焦点があてられています。
不機嫌でいじわるな生目神の悲恋が明かされるラストでは、じんわり熱いものがこみ上げてきました。
長くシリーズを追いつづけていると、若だんなや妖たちの成長ぶりがかいま見える、そのことも楽しみのひとつ。ただやさしいだけではなくて、きちんと相手の立ち場にたって気持ちを考えてあげられる若だんなはとても素敵・・・。神様だって、恋もすればいじわるもするのです。勘違いも、ね。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『いっちばん』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,470
(2008-07)

摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいる日本橋大店の若だんな・一太郎に持ち込まれるは、訳ありの頼み事やらお江戸を騒がす難事件。大人気「しゃばけ」シリーズ第七弾。

約一年ぶりに刊行されたシリーズの最新刊です。
『いっちばん』、『いっぷく』、『天狗の使い魔』、『餡子は甘いか』、『ひなのちよがみ』の5つのお話が入った短編集は、お馴染みの妖(あやかし)たちがオールキャストで活躍するお話から、厚化粧のお雛ちゃんの素顔が明らかになるお話まで・・・今回もヴァラエティに富みつつ安定感のあるおもしろさ。

私のお気に入りは、4話めの『餡子は甘いか』。これは三春屋の跡取り息子・栄吉が不器用な自分をなげくお話です。
いっこうに上手くならない菓子づくり・・・おまけにライバルまで現われて・・・。追いつめられた栄吉のつらい気持ちがきりきりとこちらに伝わり、けれどそのぶんじんわりしみる読後感が際だつようでした。
妖を見ることができない栄吉目線で描かれたお話ですが、シリーズをずっと追いかけてきた私たちにはその物音や気配から「あっ、いまのはきっと鳴家のしわざね!」なんて察しがついてしまう・・・そんなワクワクするような書かれ方も楽しい。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『ちんぷんかん』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,512
(2007-06)

江戸有数の大店の若だんな・一太郎は、摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいたが、日本橋を焼き尽くす大火に巻かれ、とうとう三途の川縁を彷徨う羽目に・・・。若だんなと鳴家の三途の川縁冒険譚に、若き日のおっかさんの恋物語、兄・松之助の縁談に気になるあのキャラも再登場で、本作も面白さ盛りだくさん!大好評「しゃばけ」シリーズ第六弾。

『鬼と小鬼』、『ちんぷんかん』、『男ぶり』、『今昔』、『はるがいくよ』の5つのお話が入っています。読んでいるといつも心がほっこりしてくるこのシリーズ・・・今も私の胸はせつないあたたかさでいっぱい。
ラストの『はるがいくよ』がとくにじんわりしみました。命のみじかい桜の花びら・小紅ちゃんをなんとかこの世にとどめる術はないかと奔走する若だんな・・・
「去って行かなければならない者は、悲しくて哀れかもしれないけれど・・・残される者もまた、辛い思いを持てあますことになるんだね。
私もいつか、皆を置いてゆくんだね」
去る者、そして残される者。変わっていく状況のなかで、相手のほんとうの気持ちを察したり、いつでも会える今この時に感謝すること・・・このシリーズがあたたかいのは、誰もが誰かを大切に想っていることがまっすぐ伝わってくるから、なのかしら。

最後になりましたが、今回、鳴家(やなり)たちが抜群に可愛いです。
彼らのしぐさ、かわいらしさだけで言ったらこれまでで一番かも・・・少なくとも、私のハートは鷲づかみ。うーん、私も一ぴき欲しい!
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『うそうそ』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,470
(2006-05-30)
日本橋の大店の若だんな・一太郎は、摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいた。その上、病だけでは足りず頭に怪我まで負ったため、主に大甘の二人の手代、兄・松之助と箱根へ湯治に行くことに!
初めての旅に張り切る若だんなだったが、誘拐事件、天狗の襲撃、謎の少女の出現と、旅の雲行きはどんどん怪しくなっていき・・・。
大好評「しゃばけ」シリーズ第五弾。

今回は第一弾『しゃばけ』以来の長編ということ、それからお話の舞台も‘長崎屋の離れ’から旅先の箱根へと大きく移していることで、なかなかの変化球。
旅先が舞台なので、おなじみの妖たちはほとんどが江戸でお留守番。出番が少ないのがちょっぴり残念でした。(松之助兄さんと手代2人のほかは、鳴家3匹だけが旅のお供)
相変わらず心やさしい若だんなにすっかり癒されモードの私ですが、でも・・・やっぱり若だんなには‘長崎屋の離れ’で妖たちとたわむれていてほしいなぁ・・・なんていうのは私のわがままかな。遠出もいいけれど、近所の三春屋にでかけるだけで大甘の手代たちからお説教をくらってしまう、そんな長崎屋の日常風景が私は大好きなのでした。

それにしても、このシリーズはハラハラドキドキだけで終わらせず、いつも人の心の奥をのぞかせてくれるのが深いですよね。
今回のテーマは「己の居場所」でしょうか。誰も彼もが己一人の思いすら持てあまし、己の居場所に心細い思いを抱えている、というのがなんとももの哀しくて、せつなくなってしまった私です。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『おまけのこ』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,365
(2005-08-19)

摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいる日本橋大店の若だんな・一太郎に持ち込まれるは、訳ありの頼み事やらお江戸を騒がす難事件。
親友・栄吉との大喧嘩あり、「屏風のぞき」の人生相談あり、小さな一太郎の大冒険ありと、今回も面白さてんこ盛り。お待ちかね、大好評「しゃばけ」シリーズ第四弾!
身体は弱いが知恵に溢れる若だんなと、頼れるわりにちょっとトボケた妖(あやかし)たちの愉快な人情妖怪推理帖。

『こわい』、『畳紙』、『動く影』、『ありんすこく』、『おまけのこ』の5編が収録されている今回は、これまでワキでいい味をだしていた妖たちが中心となって展開するお話があるのが読みどころです。
なかでも、家をきしませる妖・鳴家(やなり)がきゅわきゅわぎいぎい大活躍の『おまけのこ』は、第一弾から鳴家ファンな私にはたまらないお話でした。

『おまけのこ』
長崎屋に持ちこまれた「お月様」と一緒に迷子になった鳴家。
店では暴行事件と窃盗事件が起こり大わらわで、誰も迷子の鳴家に気づかない!空を飛んだり川でおぼれたりしながら、「お月様」を守ろうとする一匹の鳴家の大冒険。超・超キュートな物語ながら、一太郎と鳴家の再会の場面ではほんわりあたたかな感動につつまれます。

現在『小説新潮』にて、「しゃばけ」シリーズ第五弾が連載中とのこと。
このシリーズは、ずっとずーっと追いかけたいな。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『ねこのばば』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,365
(2004-07-23)

若だんなと妖(あやかし)たちが活躍する「しゃばけ」シリーズもいよいよ第三弾。
今回も短編集で、『茶巾たまご』、『花かんざし』、『ねこのばば』、『産土(うぶすな)』、『たまやたまや』の5つのお話を収録しています。

若だんなは相変わらず身体が弱く、佐助と仁吉は相変わらず過保護で、妖たちは相変わらず若だんなによく懐き、幼なじみの栄吉は相変わらず菓子づくりが上達しない・・・。
第三弾ともなるとマンネリ化が危ぶまれそうだけど、このシリーズに関してはそんな心配はご無用。‘相変わらず’が多いこの物語も、少しずつ変化を遂げたり、少しずつ過去が明かされたりしているせい?
謎解きや捕り物帖ぶぶんを前面にだしつつも、私にとっては若だんなや妖たちの日常風景や江戸の情緒を楽しみ、そして心癒されるシリーズになっているから・・・?
妖よりもなお怖ろしいのは人の心
そんなメッセージが嫌というほど伝わるのに、読み終わる頃にはホッと癒され気持ちはぽかぽか・・・、それがこのシリーズの最大の魅力なのです。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『ぬしさまへ』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,365
(2003-05)

大妖(たいよう)を祖母に持ち、幼き頃から人ならぬ者の姿が見えてしまう若だんなは身体がめっぽう弱く、大甘の両親たちに過保護に育てられた。
そんな若だんなが妖(あやかし)たちと共に事件を解決していく「しゃばけ」シリーズの第二弾。

第一弾は長編だったのですが、こちらは短編集で『ぬしさまへ』、『栄吉の菓子』、『空のビードロ』、『四布の布団』、『仁吉の思い人』、『虹を見し事』の6編が収録されています。
このなかで私のお気に入りは『空のビードロ』。若だんなの腹違いの兄である松之助のお話です。切なくも心にしみいる内容で、さらに読み進めるうちに前作『しゃばけ』のラストに繋がっていくという思わぬお楽しみも。
全体的に今回は人間くさい事件というのかしら、苦味のあるしんみりしてしまいがちな事件が多いのだけど、でもそこを、妖(あやかし)たちのほんの少しズレた一生懸命さだったり、若だんなの気をひこうと先を争う様子だったりがうまい具合にカバーしていて、また、さまざまな体験をかさねることで成長していく若だんなの姿も手伝って、読後感はほっこりとあたたかです。
犬神、白沢(はくたく)をはじめ、屏風のぞき、鳴家(やなり)、野寺坊、獺(かわうそ)、鈴彦姫、濡れ女、猫又、見越の入道・・・ああ、いいな、私のまわりにもこんな妖たちだったらいてほしい。ますます‘しゃばけワールド’にどっぷり!の私なのでした。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -
 
 

『しゃばけ』 畠中 恵

評価:
畠中 恵
新潮社
¥ 1,575
(2001-12)

江戸有数の廻船問屋兼薬種問屋(=長崎屋)の一粒種、一太郎(=若だんな)は、めっぽう身体が弱く外出もままならない。大甘の両親となぜだか一太郎の周りに集う妖(あやかし)に守られて、日々なんとか死なずに暮らしていたが、皆の目を忍んで一人こっそり外出した夜に人殺しを目撃してしまう。自分自身も殺されかけた一太郎は、以来、江戸で続く猟奇的殺人事件の謎を解くべく、人の姿を借りた妖たちとともに事件解決に乗り出す。
愉快で不思議な妖怪人情推理帖「しゃばけ」シリーズ第一弾!

もともと、歴史小説・時代小説のたぐいがにがてな私。
抵抗なく読めるのは明治時代のお話までで、それ以前の時代設定となると、もうそれだけで二の足をふんでいました。
そんな私がずっとずっと気になっていたのがこの「しゃばけ」シリーズ!
時代小説×ファンタジー(妖怪もの)×ミステリーという感じのこの物語は、冒頭こそ‘世界’に入りこむのに手こずりましたが、いったん入ってしまえば今度はなかなか抜け出せなかったほど。
長崎屋の手代である佐助(犬神という妖)と仁吉(白沢という妖)のほか、付喪神(つくもがみ)の屏風のぞき、プチサイズでわらわら出てくる鳴家(やなり)など、若だんなのまわりを取り囲む妖たちが最高に魅力的!心優しき若だんなは、妖たちにとてもとても愛されているのです。
シリーズ第一弾は、なぜか薬種屋ばかりがねらわれる連続殺人事件に、若だんなが妖たちと挑みます。現在第四弾まで出ているこのシリーズ、今後の展開に今からワクワク・・・。
Author: ことり
国内は行(畠中 恵) | permalink | - | -