『石井好子のヨーロッパ家庭料理』 石井 好子

幻の料理本、復刊!
ヨーロッパ各地の家々を訪ね、レストランでは味わえない家庭の味、食卓の風景を取材した料理指南書にして第一級の食紀行。

ああ、とてもすてきな一冊でした。
いまから40年ほども前、石井好子さんがフランスをはじめヨーロッパ各国の家庭料理をたずねてまとめたエッセイ+レシピ本です。
取材した人たちについてのエピソードもすてきだし、古い写真にうつし出された温かみのあるインテリアや家族団欒、笑顔あふれる調理風景、そして食卓に所せましとならべられた料理の数々・・・みているだけで幸せな気持ちが広がります。
柔らかなムールのポタージュ、オーブンから直行のふわふわスフレ、ぶどう酒で3日かけてコトコト煮込んだコック・オ・ヴァン、生クリームと砂糖をたっぷりかけたなしとバナナの簡単タルト、うすいとろみのあるアスパラガスのスープ、きつね色に焼き上げたクリスマスのスタッフトダック・・・
どれもこれもとびきりおいしそうに描写され、ユーモアをまじえた華やかなエッセイは読みごたえ十分。すべての料理のつくり方が紹介されているのもうれしい。

さっそく今夜、『オセ・クリーブランドのノルウェー料理』の章より、ミートボールのクリーム煮をつくってみました。できたてをふうふうしながらいただく濃厚なひと皿は、寒い季節のなによりのごちそう。
素朴でやさしく、じんわりおいしい心のこもった異国の家庭料理たち――
ほかにもいろいろ試してみたい。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -
 
 

『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』 石井 好子

あるときはスペインの浜辺でパエリャに舌鼓をうち、またあるときはカポーティのベイクドポテトに想いを馳せ、なべ料理に亡き夫を思い出す――食べることの歓びがあふれる素敵な一冊。
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』姉妹編。

巴里の空の下―』から二十数年後に書かれたというお料理エッセイです。
さまざまなおいしさの諸外国のロールキャベツの思い出からはじまって、ふわっと盛り上がりクリーム色の地肌を出しながら焼けたスフレ、浜辺で碧い海を眺めながらたべた豪快なパエリャ・バレンシアーナ、たっぷりのバタと玉子のうす切りにかいわれ菜をはさんだサンドイッチ、じゃがいもと玉ねぎのペーストでつくるパンケーキ、甘ずっぱい苺のソースをはったお皿に魚介類や生野菜をのせたヌーベル・キュイジーヌふうのサラダ・・・これでもか、というくらいに美味しそうな描写のオン・パレード。
石井さんの人柄あふれる文章ですてきに表現されたごちそうの数々は、読んでいるだけでほこほこしあわせな気分がみちてきます。
おもてなしの心、市販のものでもひと手間かける工夫・・・お料理にたいするちょっとした気くばりがきらきらと光っていて、うれしくなる一冊でした。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -
 
 

『女ひとりの巴里ぐらし』 石井 好子

一九五〇年代のパリ――戦後の芸術文化が華やかに咲き誇った街で、日本人歌手としてモンマルトルのキャバレー<ナチュリスト>の主役をつとめた著者による自伝的エッセイ。
楽屋生活の悲喜こもごもや、まだ下町らしさの残るパリでの暮らしを、女性ならではの細やかな筆致で生き生きと描き、三島由紀夫にも絶賛された「貴重な歴史的ドキュメント」。

1950年代に、パリのキャバレーで舞台の中央に立っていた石井好子さん。楽屋生活をはじめ、当時のパリの風俗や暮らしぶりなどがいきいきと描き出されているエッセイです。
汗と香水、女たちのかしましいおしゃべり・・・なかでも<ナチュリスト>の楽屋でのようすは、ムンムンした熱気だとか華やかな喧噪が手にとるように伝わってきて、とても面白く読みました。そのなかで起こった数々の涙と笑いのエピソードも。
義姉のとみ子さん(=仏文学者の朝吹登水子さん)母娘とのアパートでの暮らしは、石井さんにとってひとときのやすらぎだったのでしょうね。このパートを読むとき、私の心もふっと力がぬけるようでした。

華々しい活躍のかげには、当然のことながら、さまざまな苦労と強靭な覚悟があった・・・そのことも、文章のはしばしから読みとることができます。
西洋音楽の歴史は、日本においては、まだまだ浅い。でも、私たちはいつもたゆまず闘って来た先輩に感謝しなくてはいけない。そして、これから出る人々のための捨石になるべき努力も忘れてはならないと思う。
石井さんは謙虚な方だから、ご自分のすごさをけっしてひけらかされてはいないけれど、巻末の解説を読むと彼女がどれほどすごい方だったのかが分かります。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -
 
 

『私の小さなたからもの』 石井 好子

評価:
石井 好子
河出書房新社
¥ 1,575
(2011-08-20)

「お気に入りのフライパン」「ハンブルグの絵皿」「バラのコサージ」「パリとパルファン」 人生の節目節目に出会った大切な物たちについて、エッセイの名手が綴った極上のコレクション。

昨年亡くなられたシャンソン歌手・石井好子さんの「たからもの」エッセイ。
愉しく美しく生きるために集められた「たからもの」たちを通して、パリやアメリカでの生活、素敵な人たちとの出逢い、シャンソンのこと、お料理のこと・・・石井さんの落ち着いたものの見方や考え方がうかがえて、豊かな気持ちになりました。
石井さんといえば、そのお育ちの良さから少なからずハイソなイメージもくっついてきてしまいますが、華美なものばかりではない、本物を知っている方のシンプルさ・上品さがふわっとにじみ出た物えらび、とても素敵だと思いました。きっとたくさんのご経験やお人柄によるものなのでしょうね。

本の中ほどに、「石井好子、愛用の品々」と題してカラー写真が4頁ほどはさみ込まれています。
そのひとつひとつに関するエピソードを読むと、彼女がどれほどこれらを愛し、その思い出ごと大切にされてきたのかがしのばれます。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -
 
 

『バタをひとさじ、玉子を3コ』 石井 好子

料理エッセイの名著『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の著者による単行本未収録エッセイ集。50年代のパリで培われたエレガンスとエスプリ溢れる、食いしんぼう必読の一冊。

昨年亡くなられた石井好子さんの単行本未収録エッセイをまとめた本。
巴里の空の下―』も装丁が可愛くて大好きな本だけれど、この本も手にとるだけで幸せになれちゃう素敵さ・・・。

中がとろけたチーズトースト、あますところなくいただくフランス料理のソース、ブランデーがじゅくじゅくに染みたトライフル、まっ白な塩にぎり、デリケートなふぐのから揚げ、白魚のつくだにのサンドイッチ、「小川軒」のオックステールシチュー、クツクツ煮えた玉子グラタン・・・ああ、いまこれを書いているだけで、ごくん、と喉が鳴ります。
台所にはいって冷蔵庫や戸棚をあけ、「何もないわね」と困ったときが、私にはなんだか楽しいときだ。
つくるのも食べるのも大好き!、そんな石井さんらしさがあふれている一冊でした。
半世紀ちかくまえに書かれたエッセイもあり、古きよき時代のフランス・日本の香りがそこかしこから漂ってきます。「バタ」という言葉の字面ひとつとっても、私たちが知っているバターとはぜんぜんちがう美味しさやふくよかな風味がありそうな気がしてくるから不思議です。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -
 
 

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』〔再読〕 石井 好子

‘おいしいもの’が大好きなシャンソン歌手の石井好子さんが、パリでの生活や旅行先でのエピソードとともに、フランスに暮らす人びとのふだんの食について紹介したお料理エッセイ。

たっぷりのバタを溶かしたフライパンに卵をさっと流して焼き上げるふわふわのオムレツ、こだわりのフレンチドレッシングをまぜあわせたみずみずしいレタスのサラダ、バタと粉チーズだけをかけるシンプルなスパゲティ、ぐらぐら煮立たせたスープにとろけたチーズと焼いたパンをうかべたグラティネ(グラタン)、裏ごした野菜をスープでのばした香りたかいポタージュ・クレソニエール(せりのポタージュ)・・・食欲をそそる描写がたくさんで、思わずおなかがグウ〜っと愉快な音をたてます。
文字を追っていると頭のなかにつぎつぎにおいしそうなお料理がうかんで、煮こみ料理のコトコトいう音とか、焼きたてパンのぱりっとしたこうばしい風味とか、匂いや湯気やワイワイ楽しげな人びとの話し声や食器とスプーンのぶつかる小さな音や・・・そんなこまやかな気配までも伝わってくるようで、私はたちまち幸福な気持ちでいっぱいになってしまうのでした。

食べることにくわえ、お料理すること、人に食べてもらうことが大好きな石井さんは、たとえ仕事でくたくたに疲れていても、お腹をすかせた人がいればつい台所に立ってなにかしらつくってしまうといいます。材料が何もない時に急なお客さまが来ても、卵一コあればかきたまのおつゆがつくれるし、あとはおにぎりとありあわせのお漬物でもだせばよろこばれる・・・ああ、おもてなしってきっとそういう気持ちのこと。
お料理はなんのきまりもないのだから、とらわれないことだ。それから自信をもってまな板に向うことだ。こんな材料ではおいしいものがつくれる筈はないと思う前に、これだけのものでどんなおいしいものをつくってみせようかと考えるほうが幸福だと思う。
石井さんの言葉には、読む人を明るく元気にしてくれる力がそなわっていますね。人柄が文章ににじみ出た、忘れられない一文です。

この本が初めて出版されたのは、まだ海外渡航すらめずらしかった1954年。当時の読者たちは、遠い異国のおしゃれでキラキラした見たこともないお料理にどんなに心ときめかせたことでしょう。
もちろんいま読んでもじゅうぶんに魅力的で、誰にでもつくれそうに思わせる身の丈のレシピと飾らない文章、チャーミングでポジティヴなお人柄にあふれたほんとうに素敵なエッセイ!
「今夜はなにをつくろうかしら?」 食べてくれる人の幸福そうな顔(夫の食べっぷりったらなんとも見事なのです!)を思いながら、どんどんふくらむ幸福なイメージ・・・。
私はこの本をキッチンの本棚に立てて、お守りにしています。
Author: ことり
国内あ行(石井 好子) | permalink | - | -