『秘密は日記に隠すもの』 永井 するみ

評価:
永井 するみ
双葉社
¥ 1,365
(2012-07-18)

父親の秘密を見つけた女子高生の日記「トロフィー」、母の死を引きずる43歳独身男性の日記「道化師」、姉妹で同居している結婚を控えた姉の日記「サムシング・ブルー」、熟年夫婦の日常を記した夫の日記「夫婦」。まったく無関係な4人だが、本人たちも気づかぬところで、実は不思議な繋がりがあった・・・。
急逝した著者の絶筆となった最後の作品。

2年まえに亡くなられた永井するみさんの遺作短篇集。
日記がそのまま文面に表されるので、誰かの秘密をこっそり覗いているような気分になってしまいます。そしてそれが、そもそも誰かに盗み見されることを前提に書かれてあったりもして、心がヒヤっと痺れるものも・・・。
永井するみさんらしく、どのお話もラストに「そうきたか!」とか「うわぁ〜・・・」なんてつぶやかずにはいられないオチが仕掛けられています。
後味の悪いものも多かったけれど、最後まで彼女らしい短篇集でした。
Author: ことり
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『歪んだ匣』 永井 するみ

評価:
永井 するみ
祥伝社
---
(2000-07)

事故、盗難、横領、ケンカ、そして殺人・・・。
都心にそびえる二十八階建ての最先端ビル内で次々に起こる怪事件。日常の職場に潜む恐怖と危険を描いたアーバン・ミステリー。

図書館でなにげなく手にした本。とてもおもしろかったです。
東京・神谷町にそびえ立つオフィスビル、「インテリジェントビル」。1階にはドラッグストアやカフェ、地下階にはフィットネスクラブ、最上階の28階には会員制クラブをそなえ、各フロアにはコンピュータ会社やお菓子メーカー、建設会社、イタリア家具のブランドや外資系の化粧品会社などが入っています。このオフィスやお店を舞台に大小さまざまな事件が起こる連作ミステリーです。
9つのお話たちがビルの共用部や掃除のおばさんでほんのりとつながり、登場人物どうしの絡みもあって、読み終える頃にはこの不吉なはずのビルがなんとなく親しいものになっていました。ほんとうにこんなビル、どこかにありそう・・・。
女の狡さだとかしたたかさ・・・永井するみさんは女性特有のイヤなぶぶんを描くのがやっぱり上手。思わず感情移入してしまう主人公もいたりして、ドキドキしながら頁をめくった私でした。
Author: ことり
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『唇のあとに続くすべてのこと』 永井 するみ

結婚前、不倫関係にあった上司の葬儀に出たことがきっかけで再会した、かつての同僚と逢瀬を重ねる菜津。その上司の死について、他殺の可能性があると警察が尋ねてきたとき、平穏な日常が姿を変え始める・・・。恋愛サスペンス。

かわいらしい娘も、優しい夫も、好きな仕事も、そして、愛する男も。
主人公の菜津は、そのすべてを手ばなしたくないと痛切に願うしたたかな女性です。お金も家族も仕事も地位も、なにもかももっていていっけん幸福そうにみえるのに、じつはとても淋しい女性。(でも、それって自業自得なのだけれどね。)
理解のある夫、従順な家政婦、噂好きの元同僚、長いつきあいの編集者・・・秘密をかかえている菜津は、まわりの人たちのささいな言動にも過敏になります。
表面は笑顔、でも陰ではお互いにさぐりをいれあっている・・・そんな暗いかけひきもこの小説にはたくさん盛り込まれていて、永井するみさんの女性心理を描き出すたくみさは相変わらず。菜津をはじめ登場人物の誰ひとりとして好きになれなかった私ですが、最後まで惹きつけられてしまいました。
Author: ことり
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『欲しい』 永井 するみ

評価:
永井 するみ
集英社
¥ 1,680
(2006-12-15)

彼は突然逝った。汚名だけを残して。
人材派遣会社を経営する由希子、42歳、独身。恋人の死の真相を探り出すため動き出す。
女性起業家、派遣スタッフ、出張ホスト。彼の死で、何を失い何を得たのか。心理の表裏を抉る注目作家の傑作長編。

誰だって、‘欲’はあるもの。
ひとつ満たされてはまたひとつ欲しくなる・・・それが人間なのでしょう。
けれどこのお話の中心にあったのは、誰もがあきれ果ててしまう種類の欲望でした。そんな欲望のために死ななければならなかった一人の男。そして、またべつの人間のあらたな欲望を置き去りにしたまま終わるラスト・・・読み終えて、なんだかやるせなくなってしまったのです。
由希子、テル、ありさ、優也、久原。5人の男女が複雑にからみ合う展開にハラハラしながら、人間の‘欲深さ’について考えさせられたサスペンスです。
Author: ことり
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『ダブル』 永井 するみ

評価:
永井 するみ
双葉社
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(2006-09)

車に轢かれて死亡した若い女性と、駅の階段で転落死したサラリーマン。
2つの未解決事件の裏には、1人の女性の影が見え隠れしていた。
なんとか世間を認めさせる記事を書きたいと奮闘する週刊誌記者・多恵は、おっとりとやさしい雰囲気をまとった妊婦・乃々香に目をつけ、接近する。
何から何まで対照的な2人の女性・・・それも‘追う’側と‘追われる’側の視点でかけひきしながら進んでいく、ハラハラドキドキのサスペンス・ミステリー。

「見かけだけで人を判断してはダメ」
誰だってわかってはいること。だけど結局それはたてまえで、やっぱり外見から受ける印象で感情が左右されるのもある程度はしかたがないのではないかしら?不快な風貌、不快な声、不快なしぐさ・・・初対面で関わりたいと思う人はまずいないはず。
これはそこをあえてえぐってくる小説だから、読んでいると心の裏側がざらざらとして落ち着かなくて、後ろめたいような気分がみちてきます。
でもなによりゾッとするのは、見かけのいい人にたいしてもおなじことが言える時。やさしそうでも、幸せそうにみえても、心のなかは――?!

そんなただでさえ読みごこちがいいとは言えないお話なのに、永井さんたらイヤな女の心理を描くのも上手いから、乃々香目線のパートを読んでいるともう辟易・・・。
多恵が「あの女の化けの皮をひっ剥がしてやりたい」と思うところなんて「はやくひっ剥がしてー!」とヤキモキした思いで見守っていました。そう。乃々香に辟易しつつも、というより乃々香を嫌悪すればするほど、読むのをやめられないおもしろさがあるのです。
そしてそんな私を固まらせてしまう衝撃のラストが・・・!
ものすごく不愉快にさせられもしたけれど、それはある意味ものすごいパワーがある、ということの証明なのかもしれません。
Author: ことり
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『さくら草』 永井 するみ

評価:
永井 するみ
東京創元社
¥ 1,995
(2006-05-27)

清純な初々しさと上質な高級感を兼ねそなえたデザインで、ローティーンの少女たちに絶大な人気を誇るジュニアブランド「プリムローズ」。そんな「プリムローズ」の服をまとった少女ばかりが狙われる、連続殺人事件が起こります。

「プリムローズ」を着た少女に異常な執着をみせる「プリロリ」(プリムローズ・ロリータ)と呼ばれる男たちの犯罪なのか?少女たちが犯人に誘われてついて行ってしまった理由、彼女たちを釣った‘餌’は何だったのか?
事件の謎を追うのは、ブランドにもファッションにも疎いおじさん刑事・俵坂昭三と少年課あがりの女性刑事・白石理恵のコンビ。
一方で、「プリムローズ」をここまでに育て上げ、心底「プリムローズ」を愛するゼネラルマネージャー・日比野晶子が、‘プリムローズ殺人事件’によって失墜寸前のブランドイメージをなんとか守ろうと奮闘する姿が描かれます。
このふたつの展開を主軸に、華やかなファッションブランド業界の裏事情や、もはや少女たちばかりでなくその母親までもが「プリムローズ」の魅力に憑かれのめり込んでいく病的な社会現象を複雑にからませたミステリー。

永井するみさんの本を読むのはこれがはじめて。
新刊だったのでなんとなく手にしてみたら、想像以上のおもしろさ!上下2段組の長編でしたが一日足らずで読み終えてしまいました。
ジュニアブランドにハマる母娘、無法地帯と化したネットでの闇取引、読者モデルにコンテスト・・・現代社会の‘狂気’ともいえるぶぶんがあぶり出され、スリル満点のストーリーに頁をめくる手が止まらないのです。お話を引っぱってくれる晶子と理恵に好感がもてたことも大きいのかも。女性ならではの心理をこまやかに、しかも無理なく描くのがうまい作家さんなのですね。
・・・ただ、最終的に明らかになる真犯人の性癖に、とってつけたようなどこか強引な印象が残ってしまったのがざんねんでした。ほんの一文、ぼんやりでかまわないから性癖についての伏線がほしかったなぁ・・・。
Author: ことり
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