『はなびのひ』 たしろ ちさと

評価:
たしろ ちさと
佼成出版社
¥ 4,940
(2018-06-19)

今日は待ちに待ったお江戸の花火大会。
早く夜にならないかと退屈していたぽんきちは、お母ちゃんに頼まれて、花火職人のお父ちゃんに夜食を届けに出かけました。すると、それを見た人たちが次々と後をついてゆき、町中が大騒ぎに!
江戸の町並みと夜空に咲く大輪の花火が夏の風情を感じさせる、たしろちさと初の和風絵本です。


なんと、神保町の絵本屋さんでたしろちさとさんにお会いできました!
その場で書いてくださったサイン本です↓ 娘あて。
Author: ことり
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『戀愛譚―東郷青児文筆選集』 東郷 青児

画家・東郷青児の知られざる“文筆”世界。少女の生態や恋愛をテーマに、東郷の“ことば”がもっとも魅力的に綴られた詩的で夢幻的な文筆作品を精選。単行本未収録原稿を含む決定版、全38篇。

東郷青児さんの絵が好きです。
蒼く淡いかりそめの闇。長いまつ毛に縁どられた瞳、冷たくなめらかな白い肌。
あの夢のように蒼白く華奢な乙女たちを描きつづけた男の目をとおして、紡がれてゆく甘やかな恋愛小説群です。
薔薇や菫のかぐわしい色香のゆらめき・・・あきれるほどロマンティックで、気障でスノッブ。東京や巴里のしゃれた街角にたたずむ美しい娼婦や少女の面影が、虚実を抱きこみ、絵画の乙女たち(への目線)につながってゆくようです。

女という生きものへの幻想とあこがれ。万華鏡のような陶酔。
東郷青児という人は、絵でも文でも――それはおそらく人となりも、ということかしら――そのイメージがほとんどブレることがありません。見事なまでに。
東郷青児―蒼の詩 永遠の乙女たち』でも一部抜粋でいくつかの文章が紹介されていますが、こちらでは文章のみをまとまったかたちで読むことができます。彼の‘世界観’を愛する方に。
Author: ことり
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『花嫁化鳥』 寺山 修司

評価:
寺山 修司
中央公論新社
¥ 740
(2008-11)

大神島の風葬、青森のきりすとの墓・・・寺山修司が旅した不可思議な世界。日本各地の奇習をたずね、うつつと夢のあわいを彷徨しながら日本人の原風景をさぐる。
「身捨つるほどの祖国」を歩く旅を描いた本書は、寺山修司への最良の入門書である。

犬神、風葬、鯨の墓――・・・
寺山修司さんが日本列島あちこち旅して書き上げた、民俗学ふうの紀行文です。
古来より言い伝えられてきた土着の呪術や迷信、ほの昏い伝説などをたずね歩き、彼ならではの視点からつむがれていて、すごくおもしろい。どこからか虚構のエピソードがまじり始め、すっかり独自の想像世界につれて行かれてしまうところも。
海や野山にかこまれた小さな集落(秘境)にじっとりと息づいてきた妖しい風習が、「寺山修司」というフィルターを通るとふしぎな郷愁をともない、現実と神話の美しくも怖ろしいコラボレーションを生みます。それはどこかかくれんぼや子守唄のかなしさにも似て、心細いような懐かしさがしみてくるのです。

ハイカラな娘さんが可愛らしい竹久夢二さんの装画に惹かれて手にとった本。
この表紙と本の内容は、イメージがかなりかけ離れているような気がするけれど・・・でも読んでよかったです。
Author: ことり
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『はりもぐらおじさん』 たちもと みちこ

評価:
たちもと みちこ
教育画劇
¥ 1,260
(2011-03)

チョキチョキ チクチク タタタタタ・・・
はりもぐらおじさんの いえから、いつも きこえるおと。
さて、はて、なんのおとかな?

仕立屋さんのはりもぐらおじさんのお店に、森の動物たちがつぎつぎ‘おしゃれなお洋服の注文’にやってくる可愛いおはなし。
とにかく絵が素敵です。エリック・カールさんを思わせる色彩感覚とコラージュ!
やってきた動物たちがどんなお洋服につつまれて帰っていくのか、ワクワクしながらページをめくりました。はりもぐらおじさんはお客さんの希望とサイズにぴったりのお洋服をこしらえる、センスある仕立屋さんなのです。
ラスト、満月の夜のパーティで、とびきりのおしゃれをした動物たちがせいぞろいするシーンが観音びらきで演出されています。
目にとびこんでくる色彩のシャワーに圧倒される、うつくしい絵本です。
Author: ことり
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『カルルとふしぎな塔』 寺田 順三

紅茶をしみ込ませたみたいな、ほのかにあめ色のレトロな感じ。
寺田さんのイラストはとにかくかわいくて、気持ちがほっこりするから好き。

なかよしのパネットはパン屋さん、ロロはくだもの屋さんをしています。
でもカルルはまだやりたいことをさがしているとちゅう。
そんなとき、ふしぎな塔の鐘の音が止まってしまい町の人たちは大よわり!1日3回きまった時間の鐘がならないと、ごはんの時間がわからないのです。
器用なカルルは、ふしぎな塔のてっぺんめざしてのぼり始めました・・・。
ふしぎな塔での‘出逢い’が、カルルの心をほんの少し動かしてくれるおはなしです。

おなじタイトルでアニメーションもあるんですって。
カルルたちが動きまわるところ、みてみたいな〜。
Author: ことり
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『赤糸で縫いとじられた物語』 寺山 修司

「ジュリエット・ポエット」――寺山修司自らが名づけた、散文詩とも童話ともつかない不思議な作品の数々。
人間が次々と鳥に変身してしまう『壜の中の鳥』、魔法の消しゴムで恋敵を次々と消していく『消しゴム』、十年後の姿を映し出す写真機を描いた『まぼろしのルミナ』・・・抒情と幻想がシュールに溶け合った、鮮やかな十二篇を収録した、ジュリエット・ポエットの代表的作品集。

ふしぎな色気がにじむ、お砂糖のようにきらきらはかない詩とメルヘン。
かん違いの水夫ジョニー、言うことをきかない手足、すれちがいのアリスとテレス、ふしあわせなリボンの少女、ふたつの影をもつアリス・・・哀しみをおびたおとぎの国の住人たちが、甘くせつなく心を濡らし消えてゆきます。
どのお話も、なんて残酷・・・なんて美しい。
どこかに忘れてきてしまった‘自分の一部’をさがして歩くような、そんな心許なさにつつまれました。
それはもしかしたら、あの頃の無邪気だった恋。無邪気だった私。

 女のからだは お城です
 なかに一人の少女がかくれている
 もういいかい?
 もういいかい?
 逃げてかくれた自分を さがそうにも
 かくれんぼするには
 お城はひろすぎる
Author: ことり
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『抱擁』 辻原 登

評価:
辻原 登
新潮社
¥ 1,470
(2009-12-18)

二・二六事件の翌年、昭和十二年の東京・駒場。前田侯爵邸の小間使として働く十八歳の「わたし」は、五歳の令嬢・緑子が、見えるはずのない何かの姿を見ていることに気づく――。
歴史の放つ熱と、虚構が作り出す謎が、濃密に融け合う世界。イギリス古典小説の味わいを合わせ持つ、至高の物語。

昭和12年、鬱蒼とした森に建つ西欧のお城のような旧加賀藩前田本家の邸宅。
戦争に向かっていく剣呑な時代のはずなのに、お邸のなかではミセス・バーネットのハイティーでのおしゃべり、ニレの木陰のベンチでいただくお茶やお菓子、窓際での刺繍・・・世間の喧噪をよそにきらめくばかりの時間がゆったりと流れています。
もしかしたら、この空間そのものが夢だったりして。そんなことを思ってしまうほど。
外気から遮断されたお邸「駒場コート」で、小間使いとして働いた「わたし」がのちに検事に語った不穏な事件――お仕えしたお嬢様のもとで起こった一部始終。

つぎつぎに起こる奇怪なできごと。ぞわりと肌を走る‘いる’としか思えない感覚。
ゴシック・ロマンのモチーフをあちこちにしのばせた物語は、怖いというより、日頃は忘れかけている「あちら側」の世界のことをあらためて意識してしまう、そんなお話に感じられました。
なにもかもがうす靄のなかにかすんで、見えざる者たちがくっきりと立ち現われてくれることはありません。「わたし」のもの静かな語り口が霊的な空間をいっそう際だたせ、最後に置かれた衝撃のひと言は、まるで翡翠色の泉に投じられたひと粒の小石のよう。本をとじてなお、さざ波は静まることなく世界を歪め、さわわ、さわわ、と私の心を波立たせました。

私の脳裡で、いまもゆれ続ける幽玄な蝶のイメージ。
・・・妄念と真実の境いめはどこ?
Author: ことり
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『東郷青児―蒼の詩 永遠の乙女たち』 東郷 青児

詩情あふれる美人画で一世を風靡した画家・東郷青児。
タブロー、ブックデザイン、洋菓子店の包み紙、雑貨デザイン、化粧品のパッケージ、喫茶店のプロデュース――その愛らしく、ロマンティックな意匠をご紹介する、初めての1冊。

蒼く澄んだ夜気を思わせる空間に、優雅にゆらめく美しい乙女の肢体。
どこか陶器めいた柔らかそうな素肌、ふせた睫毛のアンニュイな目線、夢みがちで白くきゃしゃな指。
私の大好きな画家・東郷青児さんの絵画、それらが彩るロマンティックな生活小物たちが紹介されています。可憐ではかなく、闇を抱いた小鳥のような幻想美――このうっとりと妖しい匂いたつような甘やかさは、上等なケーキの箱を開けるときめきにたしかに通じるのかもしれません。

素敵・・・
こぼれたため息の数だけ、絵のなかの彼女たちの物思いに深く蒼く、しずかに心が侵されてゆくみたいです。
Author: ことり
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『舞い落ちる村』 谷崎 由依

評価:
谷崎 由依
文藝春秋
¥ 1,400
(2009-02)

ユートピアのような村と大学街を往還する「わたし」の奇妙な生活誌。
村と街の間の計りきれない距離と時間を繊細極まる文で綴る。
第104回文學界新人賞受賞作品。

近親婚によって支配された閉鎖的な村。
慣習も道徳観も、時間さえもねじれたそんな村で生まれ育ち、大学進学で街に出たいち子は、そこで初めて「村」と「村の外」の差異を目の当たりにします。
言葉など信じない村と、言葉を重んじる街。いち子を、そして読み手をも惑わせていく相対するふたつの世界・・・。

村の内外の物語に、ひとの心の内外が、そして、物語の内外が秘められている・・・ひもといていくにつれこぼれ出す、そんな拡がっていく感が好き。
美しい文章で奏でられた、いち子がふたたび村へ還るときのぐらぐら旋回するような覚束ない感覚も。
ささやかな耳鳴りの、白くかそけきその音は、繊細なレース編みのようだった。(中略)耳を澄ますと、レース編みはひとつの言葉になった。
――ごめんね。
ごめんね、と言って言葉は跳ねた。ウサギのように跳躍しながら木々の向こうに消えていった。ごめんね、ごめんね、一緒に行かない、ごめんね――レースの耳鳴りはつぎつぎほどけて言葉になった。言葉は私の耳から零れ、やはり白ウサギになり出て行った。

それにしても、この妖しげな雰囲気をただよわせた不思議な「村」の魅惑的なこと。耽美的箱庭世界のとりこになりました。
Author: ことり
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『アンドゥ』 高山 なおみ、(絵)渡邉 良重

評価:
渡邉 良重,高山 なおみ
リトル・モア
¥ 2,310
(2008-04-26)

ブローチ』につづく、渡邉良重さんのアート絵本。今回のパートナー(文章担当)は料理家の高山なおみさんです。
中央でふたつに分かれたページを上へ上へ、UN(左)DEUX(右)UN(左)DEUX(右)と交互にめくっていく、とってもおしゃれな絵本。つるつるとした茶色のうす紙(今回は透けません)にうかぶピンクや黄色や青色の、やわらかな色彩に心が躍ります。

ふと感じる不安、孤独、わきあがる希望、喜び・・・日々のあらゆる感情を通して、きのう、今日、あした、と連続する時間のなかで成長していくひとりの女性の物語。
心の芯をギュっとかためて感じたい、真珠のように可憐な絵本です。
Author: ことり
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