『強運の持ち主』 瀬尾 まいこ

評価:
瀬尾 まいこ
文藝春秋
¥ 1,300
(2006-05)

瀬尾まいこさん久々の新作は、元OLの占い師・ルイーズ吉田が主人公。
なにごとも長続きしないタチの彼女が占い師という職業を選んだのもテキトーなら、その占いぶりもかなりテキトー。はじめこそ占い本を駆使してまじめに占っていたけれど、だんだんその人を見たときの‘直感’で占うように。
そんないんちき占い師のルイーズが、お店を訪れるまよえる人びとと出逢い、奮闘し、自分もまた大切なものに気づき成長していく姿を描いた連作短編集。

瀬尾さんの本はいつも、とても読みやすいのに、でもしっかり届いてくる感じが好き。
ほんの数時間ですっかり読み終わってしまうのに、ほんわりした空気と、ほんとうに大切ななにかを、ちゃんと残していってくれる感じ。
主人公のルイーズはけっして‘イイコ’じゃありません。占いを悪用して、お客さんの恋人を横どりしてしまったり・・・なんてちょっぴり?自分本意なところもあったりして。でも、瀬尾さんの手にかかるとそれすらもいい意味での人間くささに思えてくるから不思議なのです。とくに3話めの『おしまい予言』で、「物事の終末が見えてしまう」という武田君から、自分が‘おしまい予言’されてしまったルイーズの慌てぶりは、そういう人間っぽさみたいなものがよく表れていました。
ルイーズは、占い師というちょっと特殊なことを職業にしているだけの、ごくふつうの女の子。そんな彼女が占いを通して、そこに通う人たちの悩みを通して、日常や生活こそがかけがえないものなんだって気づいていく。それがすごく爽やかに、さりげなく描かれていて、読んでいるだけで前向きな気持ちが湧いてくるのです。

占いは、なにかに行きづまったとき、ちょんと背中を押してくれるかもしれない。
勇気やキッカケをくれるかもしれない。
だけど、占いばかりにふりまわされて、大切なものを見失ってちゃいけないよね。
「ちょっとした気持ちの持ち方次第で明日は開ける」ものだろうし、
「いざとなれば、あてになる人が周りには結構いる」はず。
うん。それを忘れないでいよう。
Author: ことり
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『幸福な食卓』 瀬尾 まいこ

評価:
瀬尾 まいこ
講談社
¥ 1,470
(2004-11-20)

私はもともと、ちょっとおかしな、愛ある家族の物語が大好きです。
すっとぼけてて、どこかズレててマイペース。でもそこにはいつもほのぼのした愛にあふれていて、読んでいると思わず笑みがこぼれてしまう、そんな家族の物語が。
だからこの佐和子一家はもうそれだけで私をとりこにしたのだけれど、でもこの本の魅力はそれだけではありませんでした。
――たとえば。佐和子の家庭はけっして‘幸福’とはいえません。自殺をこころみて失敗した父さん、家を出て一人で暮らす母さん、人生から‘真剣さ’を捨てたのんきな直ちゃん(兄)と、ごく普通の中学生の佐和子・・・。このいっけんどうしようもなくアンバランスな家族たちは、それぞれの優しさと思いやりと明るさで、絶妙のバランスをたもっているのです。

‘幸福’とはほど遠いはずなのに、‘幸福’を感じずにはいられない。
お話の後半にはものすごく哀しいできごとが起こって、私の頬は涙でぐしょぐしょになってしまったけれど、それでもその痛みや苦しみさえも大きな優しさでつつみ込み、最後にはたしかな温度でほのかな未来を予感させてくれました。
・・・こんなに哀しいのに、なんでこんなにあったかいの・・・?

私は大きなものをなくしてしまったけど、完全に全てを失ったわけじゃない。私の周りにはまだ大切なものがいくつかあって、ちゃんとつながっていくものがある。

読んだあと、思わず抱きしめたくなる一冊。避けては通れない別離や喪失の場面で、人びとが拠り所にしたい一ばん肝心なものが、ここにあります。
Author: ことり
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『図書館の神様』 瀬尾 まいこ

評価:
瀬尾 まいこ
マガジンハウス
¥ 1,260
(2003-12-18)

大学を出て、海の見える高校で講師をすることになった清(きよ)。
アクシデントがきっかけで、ずっと打ちこんできたバレーボールをやめた彼女は、コーチとしてバレーボールにかかわりたいと思いたち、適当な気持ちで教師になった。
でも清は、皮肉にも文芸部の顧問にさせられてしまう。図書室に重い足をはこぶと、そこにいたのはたった一人の部員・垣内君だった。
ろくに本を読まない清にとって、それはまったく納得のいかない仕事。私生活でも、不倫相手の浅見さんにたいして淋しさや苛立ちがつのる。そんな彼女の人生を、意外にも文芸部が変えてゆく・・・。
「のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする。」

私も、小学5年から中学3年までバレーボール部の選手でした。陸上競技(短距離)にも小学5年から高校3年まで並行して打ちこみました。いっぽう読書も大好きで、小さな頃からよく本を読む子でした。
スポーツと読書は一般的に両極端で、どちらか片方に傾倒している人もきっと少なくないですよね。そういう人たちが自分の感覚の範疇を超えるものを受け入れられず、できれば嫌なことなどしたくないのは仕方のないことなのかもしれません。
だけどスポーツも読書も大好きだった私には、このふたつ――いわば動と静――はおなじ延長線上にあるように思えます。瀬尾さんはもしかしたらそのことを、中学の頃にしていたサッカーよりも本を読むことがおもしろくなってしまった少年と、スポーツ馬鹿だったのにそれを取り上げられてしまった講師とのさわやかな交流を通して伝えたかったのかな・・・私にはそんなふうに感じられました。

清にとってのカミサマは図書室にいたわけだけど、誰にもカミサマはいるのかな。
私にも、あなたにも。
カミサマは思いもよらない場所に、近くに、いるのかもしれない。
――自分を、ほんとうの意味で‘救ってくれる’人。
Author: ことり
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