『本と女の子 おもいでの1960-70年代』 近代 ナリコ

山梨シルクセンター&サンリオ、新書館フォア・レディース・シリーズ、『私の部屋』、『新婦人』・・・女性であるからこそ愛着を感じ、大切に思えるような1960〜70年代の「女の子図書」をご紹介。
宇野亜喜良、寺山修司、澁澤龍彦、内藤ルネ、水森亜土等の世界、必見!!

「1960年代から70年代にかけて、女の子たち・女性たちと蜜月をすごした4つの読み物」について関係者へのインタビューをまじえ紹介する古本ヴァラエティ。
ちょうど私の母が少女だった時代(母は手にしたことがあるのかしら?)・・・可愛らしさと色っぽさがまざりあった素敵すぎる「女の子図書」が頁いっぱいにならべられています。
アヴァンギャルドでちょっぴり官能的なセピア色の空間。‘おませさん’な読者のきらきら眩しい憧れや恋心、甘い吐息が立ち上ってくるようで、うっとりうっとり・・・ため息まじりですみずみまで堪能しました。
とりわけ、宇野亜喜良さんが手がけられた当時のイラスト、ロゴデザイン、表紙デザインをたっぷり見せてもらえたのがうれしい。アンニュイな艶めきをたたえた少女たちの表情はもちろん、匂いたつような独特のセンスが冴えきっています。

――ところで、私の持っている本が2冊掲載されていました。
数年前に神保町の古書店で、ひとめぼれして購入したフォア・レディース・シリーズの『恋する魔女』(立原えりか)と『さようなら パパ』(岸田理生)。どちらもとっておきの私の宝物。うふふ、です。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『なんらかの事情』 岸本 佐知子

評価:
岸本 佐知子
筑摩書房
¥ 1,575
(2012-11-08)

「ああもう駄目だ今度こそ本当にやばい、というとき、いつも頭の片隅で思うことがある」 第23回講談社エッセイ賞受賞『ねにもつタイプ』より6年。待望の最新エッセイ集。

もーう、なんておもしろいのー!
相変わらずの岸本ワールド、今回もくすくすアハアハ大笑い。
岸本さんは世の中のちょっとした‘ほころび’が気になってしまうタチなのですよね。その糸の先っぽを触ってみたり引っぱってみたりしているうちに、いつのまにかぐるぐる巻きにされてしまうみたい。
私が気にもとめずに通りすぎてしまったものが、思いもよらない妄想や幻想にふくらんでいく・・・すごく愉しい!そしてそれが絶妙にひねってあったり、とっておきの可笑しな表現で書かれていたりするものだから二重三重のおもしろさなのです。

ボタンつけをする猿、物言う機械たち、「アロマでごわす」、空き瓶一族の訴え、モヤモヤする言葉、ひらがなたちの野望・・・
「岸本佐知子」というフィルターを通してみると、私たちはなんてふしぎな世界に生きているんだろう!と気づいて、なにやら途方もない気持ちになってきます。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『雪とケーキ』 片山 令子

評価:
片山 令子
村松書館
¥ 2,100
(2010-01)

「詩はとてもいいものだ。真っ青な空のように、そう思う。」
あとがきにあった一文です。
その思いが生まれたばかりの雪どけ水のように素直にしみてくる詩集でした。
ことばのひとつひとつが、それぞれのあるべき重さでしずかに心にひびいてきます。

舞い降りる雪が見せてくれる時間、
空をすべっていくレースの雲がおしえてくれる時間・・・
片山令子さんの詩にはやさしい時間がながれている。
ことばのいい匂いがして、はかない気もちがこみあげてくる。

もう いないひとの
おかしさを思い出し
笑うと
わたしたちは
かるくなり
はんたいに
見えなくなったひとは
見えないまま
重さをとりもどす。 (『笑うきもち』より)
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『おとぎの国、ロシアのかわいい本』 小我野 明子

愛らしいどうぶつが登場する昔話やおとぎ話が数多くあるロシア。
時が経ても人々になお愛され続けるかわいらしい古書をたくさん集めました!現地の保育園や児童図書館も取材し、本が大好きなロシアッ子たちの様子もご紹介します。

著者の小我野さんが、ロシアの古書店や「本の市場」を訪れすこしずつ集められた稀少な絵本コレクション。
きびしい寒さや政治的背景など、ロシアに抱くイメージは人それぞれかもしれませんが、ノスタルジックな絵本のなかにひろがるロシアはかわいらしいおとぎの国。
ここで紹介されている絵本たちに、日本で読めるものはほとんどないのがたまらなくもどかしいけれど・・・ほっこり懐かしい色づかい、動物たちのほほえましい表情は、ページをながめているだけで癒されてしまいました。
マトリョーシカや武井武雄さん、子どものための雑誌などについて書かれたコラムもかわいい写真つきで楽しい。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『新編 あいたくて』 工藤 直子

「だれかに あいたくて なにかに あいたくて 生まれてきた――」。
心の奥深く分け入って、かけがえのない存在に触れてゆく言葉たち。多くの人びとに愛誦されてきた名詩「あいたくて」をはじめ、48編の詩が奏でる生きる歓び、温かくやさしい気持ち・・・。
絵本『のはらうた』で日本中の子どもたちに愛される童話作家と『100万回生きたねこ』の絵本作家がおくる、心を元気にする詩集。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『もうひとつの場所』 清川 あさみ

評価:
清川 あさみ
リトル・モア
¥ 1,680
(2011-06-27)

地球でもっとも美しい、絶滅図鑑。
糸やビーズで織りなす、動物、鳥、魚、恐竜、昆虫、草花・・・230種。
かつてどこかに生きていた、今もどこかに生きている、強く儚い、動植物たちが集うファンタジア。

ただ、ただ、ため息がこぼれる・・・。
絶滅した、あるいはその危機に瀕している動植物たちを、はかなくきらめくビーズやスパンコールでひと糸ひと糸ていねいに描き上げた画集です。
沁みるような美しさで訴えかけてくるしずかなまたたきは、かつてどこかに存在した生命たちの鼓動。声なき叫び。
ひっそりと濃密な幻想世界に酔いながら、私たちはこれほど美しいものをうしなってしまったのだ・・・、そのことに気づかされます。

きびしい環境の変化で消えてしまった生命・・・
私たち人間が乱獲したことで滅びてしまった生命・・・
こんなふうにやさしく、こんなふうに色鮮やかな彼らが棲む「もうひとつの場所」。
時をとめて、永遠のなかに閉じこめられたかなしい美しさに、ただ言葉をなくします。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『くさはら』〔再読〕 加藤 幸子、(絵)酒井 駒子

家族で川へ遊びにいったゆーちゃん。川はシャラシャラうたいながら走っています。
そのときです。――あ、ちょうちょ!
手をのばしたら、スィーとくさはらのほうへ。
まてまて、ちょうちょ。ゆーちゃんはくさはらの中へと分け入りました。

音とたててふいていく風。海の波みたいに揺れるくさはら。
おなかがしずんで、肩もしずんで・・・、
ゆーちゃんはたちまち背の高い草にとりかこまれて――・・・
ここって どこなんだろう。
ちょうちょはもう見えないし、動いたらピシッと葉っぱがほっぺたをぶちます。
泣きたくなって目をつぶったそのとたん、ささやかな音や生きものの気配がきゅうに色濃くせまってくる。小さな胸がにわかに不安にかられ、じわりと心細くなるようすが闇夜のように伝わってきます。ゆーちゃんのトクトクいう鼓動や息づかい、青々とした草いきれまでも感じとれそうなほど。

ついいましがたまであかるく楽しかったのに、突然立ちはだかるまっ暗なべつ世界。
そんな心細さがあわや、というところで大きな安心にくるまれる切り替わりの鮮やかな絵本です。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『のれんのぞき』 小堀 杏奴

「生れた家のある本郷の団子坂から、谷中、上野桜木町を経て、根岸へ通じるあの辺一帯はたとえどんな道筋でも、横丁でも、私には見覚えのあるものばかりで、もし夢にどこか解らないがよく知っている道が出て来たとしたら、必ずあの辺りと思ってよかった」(本文より) 昭和の風にふかれて、老舗、職人、名跡をてくてくめぐる日和下駄。生まれ故郷の団子坂から父眠る三鷹の寺まで、東京を歩いて拾った声と情趣。

森鷗外さんの次女・小堀杏奴(アンヌ)さんの随筆集。
『のれんのぞき』。まずこのタイトルがとても好きです。のれんをすっと上げて、「いまいいかしら?」とか、「ごめんください(おそるおそる)」とか、「また来てしまいました」とか・・・そんなふうにお店をたずねるアンヌさんがにこやかに目にうかぶよう。
お付き合いのある店主や職人に聞かされた逸話や、亡き母との思い出、いまでは見かけなくなった懐かしいものものへのあふれやまぬ思いなど、人やものにそっとよりそいしたためられている味わい深いエッセイの数々です。

ちょいちょい着の糸織の袷せに黒繻子と腹合わせの帯、地味な縞おめしの羽織を着た母が、白い膝を見せ、ぎしぎしきしむ車に乗り込むと、車夫はたちまち小さい私の両脇に手を差し入れて吊すように抱きあげ、例の毛布を大きく拡げて、私を載せた母の膝ごとしっかり膝掛けでくるみ込み、黒い前幌の尾錠を嵌める。私は幌の桐油臭い匂い、埃っぽい膝掛けの匂いに包まれ、外界とは全く遮断されてしまう。宝丹の香が漂う柔い母の、びろうどのショールが私の後頭をくすぐり、眼の前の四角く切り開かれたセルロイドの窓からは、街灯の光が揺れ動き、またたいている。(『人力車』)

端正で、さわやかに控えめな文章は、装飾や横道にそれることが多い姉の森茉莉さんのそれとはまた印象がちがいますが、やはりハイソな少女時代を過ごされた教養高さや美意識も感じさせます。
ここに収められているのは、昭和30年代、雑誌『酒』に連載された「のれんのぞき」「お江戸は遠くなりにけり」「ハイカラ風俗史」「江戸の古寺」から厳選されたもの。
ひと昔まえの風にぼんやりと吹かれながら、香り高い東京散歩が愉しめました。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『あとがき』 加藤 久仁生

評価:
加藤 久仁生
白泉社
¥ 1,575
(2011-12-16)

『つみきのいえ』を出て、加藤久仁生は時を彷徨う。風や雨、音や光、小さな物語。思い出のカケラ達は、集まってふしぎな世界を織り上げた。
永遠の宝物にしたい、優しく美しい短編集絵本。

エッセイのような、短篇フィルムのような・・・
詩みたいな、漫画みたいな、絵日記みたいな・・・ ふしぎな絵本。
頁をひらくとなつかしい光がふわりとみちて、夢と思い出がまざりあったような奇妙な空間に誘われます。
帰り道、初恋、妖しい隣人、夜の動物園、夏の小川、冬の湯豆腐・・・
手をのばせば届きそうでとどかない、淡くぼやけた‘昭和’の風景。

ぽろろ、ぽろろん・・・
小さな子の弾くピアノの音色がどこからともなくきこえてきそうな、しんみりはかない夕焼けのような絵本でした。
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -
 
 

『Scope』 桑原 弘明

評価:
桑原 弘明
平凡社
¥ 2,160
(2009-12)

・・・なんという美しさ、緻密さ。思わずすい込まれる魅惑の作品集です。
左側の頁には、とくべつな気配をまとった美しい真鍮の小箱。
右側の頁には、そのレンズを覗きこんだとき、眼前に突如現われる部屋や庭。
光が差し込まれ、球体にゆがみ、時が止まったかのような幻想美に息をのみます。
腐蝕や錆びの微妙な質感、ふしぎな奥行き・・・。そしてそんな‘世界’を形作っているオブジェ――骸骨、ヴァイオリン、椅子など――が人差し指の爪にのるほどの極小サイズであることを知って、またべつの愕きに眼をみはりました。

ここに閉じ込められたのは、一瞬なのか、永遠なのか――
これらの小箱、できることならじかにレンズを覗きこんでみたいな。
そして一度でいいから・・・、この甘美なスコープの小部屋の住人になってみたい。


桑原弘明さんの「Scope」展に出かけました。(スコープを覗いてきました。感激!)
サイン本です↓ <2015年12月追記>
Author: ことり
国内か行(その他) | permalink | - | -