『はるのワンピースをつくりに』 石井 睦美、(絵)布川 愛子

かぜが はこんできた すみれの かおりで、
さきちゃんは めを さましました。

「はるが きたから、はるのワンピースが ほしくなったの」
さきちゃんは仕立て屋のミコさんをたずねます。
春のはなは? 春のいろは? 春のおとは? さきちゃんの‘春’のイメージをミコさんはひとつひとつたしかめてゆきました。
とりどりの裁縫道具、野の花いろの紅茶、そよ風がゆらすカーテン・・・心うきたつような春の小部屋で採寸をしてもらうと、さきちゃんはすっかりお姉さんになったきぶん。はかなげなレースの衿や、たっぷりしたポケット、ころんと音をたてそうなボタンたちがワンピースを可憐に彩ります。
ふわふわきらきら、うふふふふ。柔らかな春そのものをまとい、花かごをかかえて、さきちゃんはどこへむかうのでしょう? こまごまと愛らしい春小物がちりばめられた甘い香りのあふれる絵本。


布川愛子さんの「はるのワンピース」展に出かけました。
サイン本です↓ 娘あて。 <2018年3月追記>
Author: ことり
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『あそびましょ』 いしい むつみ、(絵)こみね ゆら

評価:
いしい むつみ
アリス館
¥ 1,365
(2011-08)

にちようび。
パパは おしごとで おでかけ、ママは そうじを はじめたので、
わたしは、つまらなそうな あやこを つれて、はらっぱへ いきました。

原っぱで、わたしはじっとすわったまま、あやこがしろつめくさを摘むのをながめていました。足もとには、ありやカエルが通りすぎていきます。水たまりの小石にとまったかとんぼは、空高くふうわりふうわりのぼっていきました。
やがて、あやこがしろつめくさのかんむりを、わたしの髪にかざってくれて・・・。

スモーキーな色合いで描かれていく、わたしとあやこの倦んだひととき。
途中まで、『わたしとあそんで』(マリー・ホール・エッツ)のようなおはなしかしらと思っていたら・・・最後のページ、一瞬で空気が凍り、世界がひっくり返ります。
かわいらしいなりをして、すうーっと怖いくせ者絵本。

そらは、とても たかくて、あおいのです。
そして、どこまでも、どこまでも、ひろがっているのです。
Author: ことり
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『パメラ・パティー・ポッスのあたらしいいえ』 いしい むつみ、(絵)こみね ゆら

まりのお父さんが一年ちかくかかって完成させた、「パメラ・パティー・ポッスのあたらしいいえ」。
すてきないえです。ちょっとなかをのぞいてみましょう。
深いばら色のがんじょうそうなドアをあけると・・・台所のお母さんがオーブンをのぞき込んでいたり、窓べのゆりいすではおばあちゃんがうつらうつらしていたり、お父さんがパイプをくゆらせながら書斎で本を読んでいます。
ちいさなベッドにちいさなテーブルといす、ちいさな本棚があるお部屋(パメラ・パティー・ポッスの部屋)もありました。
この家の住人パメラ・パティー・ポッスと、おうちをのぞき込むまりの目が合って・・・

ちいさい頃に憧れていたドールハウス。
お人形好きの女の子ならきっと誰もが憧れていた、美しいミニチュア世界にするりと入り込める絵本です。
こみねゆらさんの繊細なフランスふうの絵がいつもながら素敵すぎるのですが、まりの家のそとでは雨が降っているのかしらと思うほど、ぜんたいがほの昏いトーンで貫かれていて、それがますます幻想ムードを高まらせます。
マリーではなく「まり」だから、ここは日本? ううん、この雰囲気、まりのお父さんはもしかしたら仕事でパリにやってきて、まりもついてきたのかも・・・そんなふうに勝手きままに想像をめぐらせる時間もまた楽しいものでした。
Author: ことり
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『おばあさんになった女の子は』 石井 睦美、(絵)宇野 亜喜良

私はいつから、翳りや憂いをおびた女の子に惹かれるようになったのかしら・・・。
この絵本もそう。宇野亜喜良さんの装画、気怠そうに寝そべるちょっぴりエロティックな女の子に惹かれて手にとりました。

少女から大人へ、大人から少女へと、時を超える物語。
はるかは絵本の最後のページにいたおばあさんに乞われ、ページ(時)を遡り、指先で‘彼女’をつまんでほうりこみます。哀しい手紙、あこがれの部屋、あのひととの愛。そして‘彼女’を甘やかな檻に閉じこめてあげるはるか。今度こそ、永遠に――。

「わたし、いかなくちゃ」
「どこに?」
「あのひとのところによ」

女の子というものは、多かれ少なかれすでに女だし、大人の女も、言ってみれば一生女の子なんだなあ・・・そんなことをあらためて思います。
女の子。私も、お母さんも、おばあさんも、みーんなかつては。あるぶぶんは、今もなお。そして、時間というものがとても残酷であることも。
ほっぽりっぱなしだった絵本のなかから聴こえてきた「あきあきしたわ」の声。そこから始まるちょっと大人なファンタジーの世界は、‘かつての女の子’におすすめです。
Author: ことり
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