『バティストさんとハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵のおはなし』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織

正直で忠実なバティストさんは長いあいだ、あちこちの王さまやお姫さまのもとではたらいてきました。でも今は猫と二人きり、さびしい暮らしをしています。そんなある日、バティストさんは九番屋敷というお城にすむ伯爵のもとではたらくことになりました。
「マドレーヌ」シリーズの作者ルドウィッヒ・ベーメルマンスがえがくユーモアたっぷりの楽しいお話です。

バティストさんのたんすには、色違いのりっぱな制服が7着と、金のとめがね付きのぴかぴかの靴が7足と、黒いりぼんで結ばれたかつらが7つはいっています。曜日ごとにまいにち着替えるので、人びとはみんなバティストさんの制服の色でその日が何曜日かわかりました。
そんなバティストさんが九番屋敷のハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵にお仕えすることになるのですが、あたらしいご主人さまは何にでもぴったりの名前をつけたいと言いはじめ、まわりのものの名前を片っぱしから変えてしまいます。
犬は「互いに、互いの、友達」、バティストさんは「何か持ってくる」、階段は「足持ち上げ」、ベッドは「夢の箱」・・・そんなふうに。
忠実な執事・バティストさんは指折り数えながら名前をおぼえますが――?

ずらりとならんだ色違いの制服たち、
生活感あふれるお部屋ごとのディテイル、
気ままなご主人と忠実な執事・・・
ベーメルマンスさんらしいこだわりが本の随所にほのみえます。
ものの名前を変えたことが生み出すとんちんかんな会話にくすり。ラストはけっこう深刻なのに、「あらまあ」とでも言うようなあっけらかんとした余韻がただよいます。
のびやかなカラーイラストですみずみまで楽しい、愉快な物語絵本です。

(原題『THE CASTLE NO.9』)
Author: ことり
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『マドレーヌのクリスマス』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織

評価:
ルドウィッヒ ベーメルマンス
BL出版
¥ 1,260
(2000-11)

パリの、つたのからまる古い屋敷に住んでいる12人の女の子。クリスマスの前の晩、屋敷中がかぜで寝込んでしまいました。
ただ一人、おちびで勇敢なマドレーヌだけがてきぱき働いていると、玄関をたたく音が聞こえて・・・。

クリスマスのまえのばんに現われるのが、サンタクロースではなくてじゅうたん商人(じつは魔術師でもある!)というのがベーメルマンスさんらしいなぁ。
「マドレーヌよ、のぞみを のべよ」
「ちょうど ゆうごはんが すんだところなの。
おさらあらいを てつだっていただける?」
魔術師にお皿洗いをたのんでしまうマドレーヌちゃん、かわいいですよね。
カチカチに凍ったり風邪をひいたり・・・ちょっとかわいそうな魔術師ですが、大いなる呪文でみんなを夜空へとはこんでくれます。
クリスマスの雰囲気は控えめかな・・・だけど夢がいっぱいのすてきな絵本。

なお、先日読んだ伝記には、ベーメルマンスさんはこの『マドレーヌのクリスマス』を「マドレーヌと魔術師」というタイトルでつくりなおしている最中に亡くなったと書かれてありました。オリジナルの絵は行方不明で、そのためこの絵本は雑誌掲載時のものを引き伸ばしたものに彩色をしたそうで、こまやかな陰影や彼らしい繊細なタッチはざんねんながら損なわれています。
(ベーメルマンスさんが生前かかれた「マドレーヌ」シリーズはぜんぶで6冊。私は『マドレーヌといぬ』と『マドレーヌとジプシー』が一ばん好き。)

(原題『MADELINE'S CHRISTMAS』)
Author: ことり
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『ロンドンのマドレーヌ』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織

評価:
ルドウィッヒ ベーメルマンス
BL出版
¥ 1,575
(2001-11)

『げんきなマドレーヌ』、『マドレーヌといぬ』、『マドレーヌといたずらっこ』、『マドレーヌとジプシー』以来、久しぶりに手にとったマドレーヌちゃんの絵本。
小さい頃に読んだ4冊から、じっさいずいぶん時間をあけての出版だったようです。訳者も瀬田貞二さんから江國香織さんへ。そして、印刷の色味もすこうしあかるくなったような気がします。

相変わらずマドレーヌたち12人の女の子は、パリの「つたのからまるふるいやしき」で「2れつにならんで」暮しています。相変わらず「まいあさ9じはんぴったりに」散歩にでかけ、ミス・クラベルにみまもられています。
この‘相変わらず’がとても嬉しい。・・・なつかしさと安心感、たっぷりとした幸福。

さて、『ロンドンのマドレーヌ』は、おとなりのペピート一家が引っ越してしまい、ロンドンまでみんなで会いにいくおはなしです。
おてんばで元気いっぱいのマドレーヌといたずらっこのペピートが、相変わらず楽しい騒動を引き起こします。2階だてバスやバッキンガム宮殿など、ロンドンの風景が美しく描かれ、黄色い揃いの服を着た女の子たちのかわいい行進も愉快。
江國さんの訳文もとても素敵でした。とくに、「ぱっぱらー ぷっぱらー」となりひびくトランペットの音!躍動感のある場面にもぴったりで、ああ、いいな〜!そう思いました。

(原題『MADELINE IN LONDON』)
Author: ことり
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『ゴールデン・バスケットホテル』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織

評価:
ルドウィッヒ ベーメルマンス
BL出版
¥ 1,575
(2011-04)

レモン・スフレ、トマト色の椅子、ぬいとりのあるナプキン――
鐘の音が聞こえる当ホテルへ。
「マドレーヌ」シリーズの生みの親ルドウィッヒ・ベーメルマンスによる本格的な読み物。1937年ニューベリー賞オナーブック。

小さな姉妹セレステとメリサンドは、お父さんにつれられて、ベルギーの古都にある古いホテル「ゴールデン・バスケットホテル」にやってきました。
女の子たちがブルージュの街ですごす、ゆかいなひとときの物語。

情景描写がこまやかで美しいこの本。
上品なご婦人たちの話し声、お部屋での潜水艦ごっこ、ホテルではたらく人のしゅっと誇り高いさまなどが、ゆったりとやさしいタッチで描かれていきます。
とくに私が共感したのは、シェフが姉妹にちょっとだけ分けてくれるできたてケーキやアイスクリーム。厨房のすみで立ったまま食べるそれは、テーブルで食べるのよりずっと味がいい、っていうのはすごくよくわかるなあ。あと、りっぱな支配人ムッシュ・カルヌヴァルのポケットの中身を見せてもらうときの興奮も。
大人と子どもの心愉しい交流が、とってもほほえましいお話なのです。
鐘楼のてっぺんにのぼったり、大聖堂の神聖な空気を味わったり、運河ではちょっとした冒険も!でもやがて姉妹たちがこの街を発つ日がやってきて――・・・
物語の終わりに、姉妹たちを見送ったあとのホテルの人びとのちょっぴり淋しそうな様子が描かれているのがじんわりと素敵・・・。

ひびきわたる鐘の音色まできこえてきそうな、古く美しい石畳の街並み。
思わず「食べたい!」ってさけんでしまうジャム入りのオムレツやレモン・スフレ。
かわいらしい挿絵はもちろん、ちっちゃな頃のマドレーヌちゃんもお話に登場するので「マドレーヌ」の絵本ファンにはとくにおすすめです。

(原題『THE GOLDEN BASKET』)
Author: ことり
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『よくぞ ごぶじで―きつねのかぞくのおはなし』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス、(訳)江國 香織

評価:
ルドウィッヒ ベーメルマンス,ビーヴァリー ボガート
BL出版
¥ 1,728
(2010-10)

ルドウィッヒ・ベーメルマンスさんが、晩年に描かれた絵本。
友人のビーヴァリー・ボガートさんの詩がもとになっているそうです。

休日の朝、猟犬係が高らかにラッパを吹き鳴らし、たくさんの人びとが集まってはじまるおはなし。
きつね狩りは、当時の人びとの楽しみのひとつです。猟犬をつれ馬に乗った大勢の男たちが、匂いを頼りにきつねを追って夕暮れまで野山を駆けまわるのです。
そんなとき、なんにも知らないきつねのこどもに、お母さんぎつねはあるおはなしを聞かせます。人間の残酷な遊びをさらりとかわし逃げのびた、知恵のまわる勇敢なふるぎつねの物語を。
一ぴきのきつねと大勢の追っ手との命がけの追いかけっこがダイナミックな線で描かれていきます。私はこのいきおいのある、ユーモラスな絵がとても好きです。あたたかなおうちできつねの帰りを待っている家族のようすも・・・。追われるきつねにも、もちろん家族がいるのです。
『よくぞ ごぶじで』という日本語タイトルが、これ以上ないほどおはなしにぴったり!

(原題『WELCOME HOME!』)
Author: ことり
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