『戦争童話集』 今江 祥智

<わたし、馬と話ができるのよ・・・> あのこはそういった。村の遠くでサイレンがなり、高い空に、きれいな鳥みたいな飛行機が、いくつもいくつも町へむかって飛ぶのが見えた。町が空襲にあったのは山あいの村からあのこが消えた夜のことだった。日本がいくさに負けた年の疎開地での少年と少女を描いた永遠の名作「あのこ」など、児童文学の第一人者が魂を込めた「あの戦争と少年少女たち」の物語。

『メリー=ゴー=ラウンド』、『あのこ』、『あいつ』、『黒い馬車』、『夕焼けの国』、『七番目の幸福』、『こぶし』、『あにい』、『ユキコボシ』、『やっぱり、あいつ』、『ピアニスト』、『ホタテクラゲ』、『ひどい雨がふりそうなんだ』、『まぼろしの海』、『すてきなご先祖さま』、『ホテル』―― ‘戦争’の影がうっそりと立ち上る戦争童話集。
抒情的なファンタジー、大人になって回想する少年期、祖父母が語り聞かせる体験ばなし・・・戦争がらみではあるけれど、そこはやはり今江さんのこと、柔らかで透明なせつない童話世界がひろがっています。

あのこがならんで走れるくらい、馬はまだ幼なかった。それでときどき、ほっそりしたあしを、木のかぶにぶつけてころんだ。そのたびに、あのこは星のようにすんだ声をあげてさけび、子馬はその声におどろいて、もくんと立ち上がってまたかけるのだった。
月が青く風が青くて、夜はガラスざいくのようにキラキラしていた。
(『あのこ』)

文章のひとつひとつが星みたいにきれいな『あのこ』、女きょうだいのなかでそだった少年の成長『七番目の幸福』、秘密めいた客室にはいるとそこは・・・ふしぎなファンタジー『ホテル』がとくにお気に入り。
「雨」が天から降る水の滴だけではなく、敵機から落とされる「火の雨」を連想させもした時代。そんな時代に生きた少年少女たちにしずかに思いをめぐらせました。
Author: ことり
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『オリーヴの小道で』 今江 祥智、(絵)宇野 亜喜良

評価:
今江 祥智
BL出版
¥ 1,512
(2005-07)

マリアばあちゃんの毎日は、穏やかで静かな日々。ねこのジュゼッペとふたりきりの朝食のあと、モランディ美術館へと仕事に出かける。ある日、展示室にひとりの紳士が現われ・・・。
今江祥智のゆったりとした不思議の世界と、宇野亜喜良の優雅なイラストレーションがやわらかにとけあった美しい絵本。
Author: ことり
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『あたたかな パンのにおい』 今江 祥智、(絵)宇野 亜喜良

評価:
今江 祥智,宇野 亜喜良
偕成社
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(1978-12)

部屋じゅうにあま〜いこうばしさが立ちこめて、ふっくらほかほか焼きたてパンがでてくるお話、・・・かと思いきや、なんとパンそのものはどこにもでてこないのでした。

カメラに凝りはじめ、鳥の写真を撮るために森にこもってしまう兄ちゃんと、いつもほったらかしにされて淋しい妹のさなえ。
(兄ちゃんのいじわる!)
――おーこわこわ、その目はまるでハゲタカの目つき。
なんて、さっさとでかけてしまう兄ちゃんをきらいになってしまいそうだったある日のこと、兄ちゃんはさなえにおみやげをもってかえります。それはあの不思議な毛玉ケサランパサランみたいにたよりなく、ふわふわとしたちいさなフクロウのヒナ・・・さなえはヒナに「おにいちゃん」と名づけてそだて始めますが――・・・

今江さんのこまやかな心理描写にくわえ、宇野さんのモノトーンのイラストたちが、読み手のことをどんどん妖しげで不穏な世界に誘いこみます。
女性らしい丸みのまだないきゃしゃなからだつき、それなのにたっぷり艶やかな黒髪と、諦念や孤独がにじんだ少女のあの目。よからぬたくらみに満ち、冴えざえと光る切れ長の目は、まっすぐにこちらを見つめなにもかもをすいこんでしまいそう・・・。
思いがけず、遠い遠い幻想の国へといっきに解き放たれて終わる物語は、私の心にひやりとつめたいものをのこしていきました。
Author: ことり
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『薔薇をさがして・・・・』 今江 祥智、(絵)宇野 亜喜良

評価:
今江 祥智
BL出版
¥ 1,470
(2006-11)

淡々と不思議で、とても幻想的なおはなしです。
主人公は昭夫という少年。父親が不慮の事故で死んでしまい、13歳にして母親とふたり、居酒屋(タバーン)をきりもりするコックさん。
ある日昭夫は、厨房の小窓から色っぽい女のひとの後姿を見つけ、昭夫はその人を来る日も来る日も待ち続けます。背すじをぴんとのばし、ぼんやりと銀いろにともるほっそりとした後姿。まるで銀いろのうさぎみたいに・・・。
‘銀いろさん’は引っ越してしまったクラスメイトの女の子? それとも――。

いれたてのコーヒー。ほのかに立ちのぼる薔薇のかおり。夢とうつつ。
宇野亜喜良さんの絵がすばらしく素敵な、おとなと子どものはざまの物語。
Author: ことり
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『きょうも猫日和』 今江 祥智

評価:
今江 祥智
マガジンハウス
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(1991-10-25)

猫をこよなく愛する今江祥智さんの、ちょっぴり不思議でどこかなつかしい短篇集。
なぁあお・・・なぁおうう・・・ にゃおおん・・・
のどを鳴らしこちらをふりむく猫にさそわれるようにして、一つ一つの物語をたどってゆきました。

世にも珍しいアリスの「笑い猫」飼いになる夫婦、できたてのお豆腐みたいに白くてふっくらした子猫の化身、ほれぼれするような女の子ねこちゃんのための口笛フルート。じゃれついたかと思ったらしっぽを向けるクルクル気まぐれな猫たちと、そんな彼らを柔らかなまなざしでつつみ込む人々のお話は、読んでいるだけでやさしい気もちになれるのです。
おっとりと美しいシュノンソー村では白い道でおひるね猫が日なたぼっこ、屋根の上にねそべる猫は時空をこえてパリのアパルトマンでゆめのつづき、女の子はやがてスミレの花のようにしあわせそうにねむる猫になる・・・。
猫にはなんて‘まどろみ’と‘まぼろし’がにゃあ〜う!(似合う)んでしょう。
あさきゆめみし――・・・うとうとと甘くて可憐、ふんわりそよぐ夢ごこちの猫時間。

『笑い猫飼い』、『あさきゆめみし』、『どしゃぶりねこ』、『日なたぼっこねこ』、『冬の部屋』、『とぶねこ』、『間奏曲ふうに』、『白い椿の咲く庭』、『ねこふんじゃった』、『セーターのあな』、『フクロウと子ねこちゃん』、『ゆめみるモンタン』、『スミレの花さァくゥころォ・・・』、『その名はマタタビ』、『招き猫通信』、『フルートと子ねこちゃん』、『ねこをかうことにしました』、『周潤発的猫』、『のびするノビタ』、『ああ、トージョーはん』を収録。
Author: ことり
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