『サーカス物語』 M・エンデ、(訳)矢川 澄子

ミヒャエル・エンデさんの物語。いつもながら、奥深くて風刺が効いています。
これは戯曲なのですが、物語のなかに物語があり、それらがしだいにまじわっていく・・・そんな愛と幻想にあふれたもの。

廃業寸前のサーカスの一座には、エリという知恵遅れの少女がいました。
みすぼらしいサーカスワゴンを工事現場の空き地に停めて、メンバーが今後について話し合っていると、大きな工場が、(有害な)化学薬品の宣伝をすることを条件にサーカスを買いとってくれる話が舞い込みます。けれどもその契約に、エリはふくまれていませんでした・・・。
やさしい道化師ジョジョは、エリが王女となって登場する「明日国(あしたのくに)」の物語を語りはじめ、ここからもうひとつの物語が始まります。
ジョアン王子にあこがれて、自分の面影をのせた魔法の鏡を王子さがしの旅に出すエリ王女。ジョアン王子の治める「明日国」は、自由にみち暴力もなく、遊びが聖なるものと唱えられ、いうまでもなく心のなかのユートピアでした。ところが王子は大蜘蛛アングラマインにだまされ、国を追われてしまい――・・・

やがて、いつしか「明日国」とサーカス一座の現在が重なりあっていきます。
あやつり人形のように意志も気力もうしなっているアングラマインの国の人びと、おそろしい深淵。サーカスワゴンの背後では、工場地帯の騒音と、せまり来るブルドーザー。ジョアン王子はエリ王女と出逢い、夢みる国「明日国」をとり戻せるのでしょうか。そうしてサーカスのみんながえらんだ道は・・・?
エンデさんは現代社会のさまざまな‘毒’をこのお話に投影し、私たちに語りかけてくれるよう。そっと胸に手をあてて、なにが一ばん大切なのかをひとりひとりが見失わないようにする・・・むずかしいけれど、そういうことなのかな?なんて思いました。
白地に紺色が際だつ司修さんの版画が、きっぱりと清潔ですばらしく良い雰囲気!

(原題『DAS GAUKLERMÄRCHEN』)
Author: ことり
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『モモ』〔再読〕 ミヒャエル・エンデ、(訳)大島 かおり

これまで何度となく読み返した『モモ』の本。たくさんの本たちとの出逢いのなかでも『モモ』は私にとって特別な本のひとつです。
初めて読んだのは小学校の高学年で、もちろんそのときはただ‘ふしぎな冒険譚’として読んでいたはず。でもおとなになってから読むと、モモの存在は私たちおとなにこそ必要なのだと思わされるのです。これほどファンタスティックで、風刺に富み、心をみたしてくれる物語を、ほかに思いつかない。

ある日町はずれの円形劇場に住みついた女の子。町の人たちはみんなモモのことを好きになりました。彼女に話を聞いてもらうと、すばらしいアイデアがうかんだり、希望や明るさがわいてくるからです。
けれど、灰色の時間どろぼうがやってきてから人びとは急にせかせかいそがしくなります。遊んだり、お茶を味わったり、のんびり風に吹かれたりすることはすべて時間の無駄遣いだとふきこまれ、「時間の節約こそが幸福への道」と人びとの心がすさんでいくのです。
みんなの時間をとりかえそうと、モモは灰色の男たちに立ち向かいますが・・・?

時間とはすなわち生活なのです。そして生活は人間の心の中にあるものなのです。人間が時間を節約すればするほど、生活がやせほそって、なくなってしまうのです。

私は時たま、時間どろぼうに私の時間がぬすまれてしまったのかしらと思う瞬間があります。ああ時間がない、あれもしなきゃ、これもしなくちゃ、なんてアタフタしてるとき心はささくれ、生活はやせほそっているのでしょうね。
そんなとき、私はこの『モモ』にあった道路掃除夫ベッポの言葉を思いうかべます。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。そういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
時間とは動いていくもの。一種の音楽、耳をすませば流れているもの――。
何年かに一度読み返し、私は耳をすませます。ぬすまれた時間をとりかえすため、『モモ』はいつも私の本棚にあります。

(原題『MOMO』)
Author: ことり
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『ゆめくい小人』 エンデ、(絵)フックスフーバー、(訳)さとう まりこ

評価:
ミヒャエル=エンデ
偕成社
¥ 1,404
(1981-11-01)

眠ることが大切な、まどろみ国。おそろしい夢のせいで眠るのがこわくなってしまった姫をすくおうと王様は旅に出て、荒野でふしぎな小人に出会います。
色鮮やかでファンタスティックな物語絵本。

うんと小さかった頃、目をつむり寝そべったスタイルのダックスフントのぬいぐるみが私のおやすみのお供でした。
彼のベレー帽のぼんぼりを引っぱるとひもが出てきて、そのひもがじりじりと帽子にすいこまれるあいだにながれる「ブラームスの子守唄」。幼い私を眠りの世界にさそいこんでくれたやさしいオルゴールの音色。
この絵本を読んでいると、そんな遠い日のメロディが聴こえてきそう。

この物語にでてくる呪文・・それは子供たちが安心して眠るための魔法。
ここちよい眠りにさそってくれる魔法。「ブラームスの子守唄」みたいに。

(原題『Das Traumfresserchen』)
Author: ことり
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