『くだものだもの』 (選)俵 万智

村上春樹さんは「葡萄」、江國香織さんは「メロン」。よしもとばななさんはもちろん「バナナ」・・・。くだものを作品のどこかに織り込んだ短篇小説やエッセー、詩から落語まで、32篇を精選したアンソロジー。

爽やかな夏みかん、よく熟れたメロン、葡萄や枇杷のしたたる果汁・・・
香りゆたかな甘さと酸味、時おり残るほろ苦さ。
くだものたちの記憶がみずみずしく立ちのぼる、素敵なセレクションでした。
あまんきみこさんの『白いぼうし』は小学生のとき大好きだったお話で泣きたいほどなつかしかったし、江國香織さんの『メロン』(『こうばしい日々』所収)はもちろん、武田百合子さんの『枇杷』や庄野潤三さんの『梨屋のお嫁さん』もものすごく好き。
作家さんそれぞれの持ち味がぞんぶんに生かされた文章を、あますところなく堪能した私です。
向い合って食べていた人は、見ることも聞くことも触ることも出来ない「物」となって消え失せ、私だけ残って食べ続けているのですが――納得がいかず、ふと、あたりを見まわしてしまう。
ひょっとしたらあのとき、枇杷を食べていたのだけれど、あの人の指と手も食べてしまったのかな。――そんな気がしてきます。夫が二個食べ終るまでの間に、私は八個食べたのをおぼえています。(『枇杷』)

『初恋』(島崎藤村)や『いちじくの葉』(中原中也)などの美しい詩が織り込まれていたり、ラストをかざるのが『檸檬』(梶井基次郎)だというのも心憎いなぁ。
選者である俵万智さんのこだわりが随所にほのみえ、うれしくなります。


■ この本の執筆者たち
椎名誠、あまんきみこ、ねじめ正一、笑福亭松鶴、芥川龍之介、蘯のぶ子、清水義範、白石公子、林真理子、江國香織、原田宗典、瀬戸内晴美、島崎藤村、谷川俊太郎、鷺沢萠、林望、中原中也、武田百合子、庄野潤三、宮澤賢治、松本侑子、村上春樹、太宰治、開高健、吉本ばなな、立原えりか、野田秀樹、内田百痢阿部昭、高村光太郎、梶井基次郎
Author: ことり
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『クリスマスのりんご―クリスマスをめぐる九つのお話』 (編訳)上條 由美子

クリスマスにまつわる外国の物語を9つあつめた短編集です。
日本ではあまり知られていないものばかりで、ワクワクしながら読みました。
ルース・エインズワースさん(私の大好きな『ちいさなろば』の作者)とアリソン・アトリーさん(私の大好きな『チム・ラビットのぼうけん』の作者)のお話が2つずつ入っているのも、個人的にとてもうれしかった。

くつ下のなかのプレゼント、イエスさま誕生の夜、まずしい人のゆたかな心・・・
どのお話にも、クリスマスをお祝いする神聖な気もちがつまっています。寒い季節に読むあたたかなお話はやはりいいなぁ、そう思います。

『砂糖ネズミときょうだいネズミ』 ルース・エインズワース
『納屋のクリスマス』 F・アーンステイン
『小人とくつ屋のむすこたち』 メリー・B・パルヴァー
『ふしぎなクリスマス』 ルース・エインズワース
『大きな白いネコ』 リーラ・バーグ
『あるクリスマスのお話』 ヘレン・クレア
『小さなモミの木』 アリソン・アトリー
『クリスマスのりんご』 ルース・ソーヤー
『人形の家』 アリソン・アトリー
Author: ことり
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『短篇で読むシチリア』 (編訳)武谷 なおみ

世界遺産を五つも有する地中海最大の島シチリア。ギリシア、カルタゴ、ローマ、スペイン・・・積み重なる支配の歴史は独特の文化をかたちづくった。火山エトナとマフィアの島としても知られる。
同時にシチリアは数多の作家を生んでいる。本書は19世紀から20世紀にかけてのシチリア作家の短篇集。デ・ロベルトに始まり、ヴェルガ、ピランデッロ、ブランカーティ、ヴィットリーニ、ランペドゥーザ、そしてショーシャまで7人の14篇はほとんど初めて紹介されるものばかりである。
ファシズムと戦争を挟んで、灼熱のなか、オリーブと葡萄酒、矜持と情熱、論理と諧謔にあふれたユニークな短篇を読むことは、この神秘の島への旅にも匹敵する文学の旅となるだろう。

19世紀から20世紀にかけての「シチリア文学」アンソロジー。
私にとっては少々重苦しくて、小難しく感じられた一冊でもありましたが、ランペドゥーザやピランデッロといった名のあるイタリア作家さんの短篇小説を味わえてとてもよかったです。
あかるい日ざしがもたらす美しい風土と、積年の暗く妖しい歴史から生み出されたお話たちは、なんともいえない独特の‘熱’を帯び、謎めいた島の魅力の一端をかいま見せてくれています。複雑で重層的な文化が文学のゆたかな土壌となる・・・それは考えてみれば当然のことなのかも。
小説を愉しみつつ、シチリアの歴史背景をひもときたい方におすすめしたいです。
私のお気に入りは、『ルーパ』、『ホテルで誰かが死んだので・・・』、『室内ゲーム』。

『ロザリオ』 フェデリーコ・デ・ロベルト
『金の鍵』 ジョヴァンニ・ヴェルガ
『ルーパ』 ジョヴァンニ・ヴェルガ
『真実』 ルイージ・ピランデッロ
『ホテルで誰かが死んだので・・・』 ルイージ・ピランデッロ
『免許証』 ルイージ・ピランデッロ
『二度とも笑わなかった男の話』 ヴィタリアーノ・ブランカーティ
『幸せな家』 ヴィタリアーノ・ブランカーティ
『生への疑問』 エリオ・ヴィットリーニ
『奴隷のような人間』 エリオ・ヴィットリーニ
『幼年時代の場所』 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーザ
『撤去』 レオナルド・ショーシャ
『言語学』 レオナルド・ショーシャ
『室内ゲーム』 レオナルド・ショーシャ
Author: ことり
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『すてきなあなたに』 (編著)大橋 鎭子

評価:
大橋 鎮子
暮しの手帖社
¥ 1,800
(1994-09)

ほんの少しの心遣いで、人はもっと気持ちよく暮らすことができる――
ぬくもりあふれる小さくて上品なエッセイが12の月ごとにまとめられた一冊。
まいにちすこしずつ読みました。

いまから30年以上もまえに『暮しの手帖』に掲載されていた文章だそうですが、どのお話も普遍的。いますぐ実践できる、人づきあいや生活の秘訣がいっぱいです。
ひとつ読み終えるたびに心がふっくり豊かになっていくみたい・・・幸せ・・・。

この本のなかにみつけた、たくさんの‘まごころ’たち。
人のやさしさのこと、さりげないおしゃれのこと、お料理のつくり方・・・心温まるエピソードの数々が、午後のお茶のひとときのようなやすらぎをはこんでくれます。
Author: ことり
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『コイノカオリ』 角田 光代、島本 理生、栗田 有起、生田 紗代、宮下 奈都、井上 荒野

評価:
角田 光代,島本 理生,栗田 有起,生田 紗代,宮下 奈都,井上 荒野
角川書店
---
(2004-12)

人は、一生のうちいくつの恋におちるのだろう。ゆるくつけた香水、彼のタバコや汗の匂い、好きな人に作った特別な料理――。
柔らかく心に迫る恋の匂いをモチーフに繊細に、あるいは大胆に綴った6つのラブストーリー。

ほのかに香るおなじシャンプー、野蛮な甘ったるさのハチミツ、ことことと煮込まれた豆のスープ・・・
淡い恋の気配と、そこにふわんと広がるさまざまな匂い。
どの物語もドラマティックなものではなく、ごく日常的なひとコマをつかまえてみずみずしい文章にされている感じがとても心地よかった。

栗田有起さんのお話が読みたくて手にとったアンソロジー。
やっぱり私は彼女の『泣きっつらにハニー』が一ばん好きでした。
高校生の女の子が、家族のピンチにマッサージルームで働き始めるお話です。ユーモラスな設定と会話。かわいくて、滑稽で、すこうしだけせつない空気。
井上荒野さんの『犬と椎茸』も、とても好き。
こちらは、かつて恋人をとられた女性から30年ぶりに電話がかかってきて幕をあけます。ひと筋縄ではいかない女同士の複雑な気持ちのゆれが、荒野さんらしいキワドさで描かれている一篇。
・・・そして、一ばん印象的だったのが、宮下奈都さんの『日をつなぐ』です。
生まれたばかりの子どもをかかえてどんどん閉塞した孤独感に苛まれていく主人公に息がくるしくなりました。
たゆたゆとやわらかく煮込まれていく豆。ひとりでのむスープの淋しい味。夫との思い出とか、赤ん坊の泣き声とか、楽器店での顛末とか、そんないろいろがたたみかけるように折りあわさって迎えるこのラスト、なんとも言えない余韻をのこすのです。

『水曜日の恋人』 角田 光代
『最後の教室』 島本 理生
『泣きっつらにハニー』 栗田 有起
『海のなかには夜』 生田 紗代
『日をつなぐ』 宮下 奈都
『犬と椎茸』 井上 荒野
Author: ことり
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『短篇コレクション供戞 癖圈肪嘸 夏樹

池澤夏樹さんが編まれた「短篇コレクション」の第2巻。
こちらにはヨーロッパ圏で書かれた短篇ばかりが集められています。(『短篇コレクション』はヨーロッパ以外)

霞のかかった童話めいた物語『おしゃべりな家の精』、大人の世界に踏みだす少女の哀しみ『ローズは泣いた』、人間の謎を上質なミステリーのように仕立てた『芝居小屋』、ちらばった硝子片からもとの花瓶を想像するような『日の暮れた村』など、すてきな短篇がたくさん収められているなかで、もっとも私が気に入ったのは、『トロイの馬』という一篇。
酒場でのワンシーンを描いた物語なのですが、そこでは大人たちにまじって一頭の馬がお酒を飲んでいるのです。男と飲んでいる女性に「私とお酒を飲みましょうよ」と誘う馬。あんまり自然にとけ込んでいるものだから、読みながらこの上なく楽しい気分になってしまいました。後ろ脚で優雅に立ち上がったその尻尾には紫のリボンが結ばれていたりするのにも。
「あなた方、私が酔っぱらっているとお思いなんでしょう?ちっとも酔ってませんよ。ちいっとも」
でもこの男女にとっては馬のことなんてどうでもよくって、自分たちの話に夢中です。シャルロット叔母さんにお金を借りられるかどうかのほうが大切なのです・・・。
馬のキャラクター、男女の会話。この物語のへんてこりん度合いがたまらなく好き。

良質な短篇小説とは絵画のようなものだなぁ、とよく思います。
たとえば一まいの絵をみて、描かれているものから想像できる物語に思いをめぐらせることに似ている・・・そんな気がするのです。
物語の入り口から出口まで、なにを語り、なにを語らないか。それぞれの作家さんの技が光っています。

『おしゃべりな家の精』 アレクサンドル・グリーン
『リゲーア』 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ
『ギンプルのてんねん』 イツホク・バシェヴィス
『トロイの馬』 レーモン・クノー
『ねずみ』 ヴィトルド・ゴンブローヴィチ
『鯨』 ポール・ガデンヌ
『自殺』 チェーザレ・パヴェーゼ
『X町での一夜』 ハインリヒ・ベル
『あずまや』 ロジェ・グルニエ
『犬』 フリードリヒ・デュレンマット
『同時に』 インゲボルク・バッハマン
『ローズは泣いた』 ウィリアム・トレヴァー
『略奪結婚、あるいはエンドゥール人の謎』 ファジル・イスカンデル
『希望の海、復讐の帆』 J・G・バラード
『そり返った断崖』 A・S・バイアット
『芝居小屋』 アントニオ・タブッキ
『無料のラジオ』 サルマン・ルシュディ
『日の暮れた村』 カズオ・イシグロ
『ランサローテ』 ミシェル・ウエルベック
Author: ことり
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『ろうそくの炎がささやく言葉』 (編)管 啓次郎、野崎 歓

評価:
管 啓次郎,野崎 歓
勁草書房
¥ 1,890
(2011-08-08)

朗読のよろこび、東北にささげる言葉の花束。
31人の書き手による詩と短編のアンソロジー。

東日本大震災から半年、NYテロからは丸10年という節目の日に手にとりました。
「言葉」はそれ自体としては無力だけれど、私たちはたしかに言葉によって生かされている・・・そんな思いから、小さな炎をかこみ身を寄せあってひっそりと語られるために編まれたという一冊。
声高にがんばれ、がんばれ、と叫ぶのではなく、しずかに、でも誰かの思いをのせてたしかにとどく「言葉」たち。素直に、言葉の力ってすごいなと思います。

谷川俊太郎さんの「ひとあしひとあしあるいてゆくと からだのそこからたのしさがわく」という言葉の灯るようなやさしさに癒され、「僕たちは、敵の象徴を(あるいは、たったひとかけらの敵をも)持たないからこそ、赦されるんじゃないんだろうか。」という古川日出男さんの一文に考えさせられました。
新井高子さんの棚のお茶碗から水が降ってきたエピソードや、ペローの童話にのせた工藤庸子さんの思い、大好きなエイミー・ベンダーさんの可愛らしくて深みのある寓話などが心にのこりました。

ろうそくの炎が照らすうす暗がりに、そっと手渡される美しいささやきの花束。
たくさんの人びとの思いがつまった、やさしくて心強い一冊です。


■ この本の執筆者たち
明川哲也、新井高子、石井洋二郎、エイミー・ベンダー、エリザベス・マッケンジー、笠間直穂子、工藤庸子、小沼純一、柴田元幸、J・P・トゥーサン、管啓次郎、S・ダイベック、関口涼子、田内志文、谷川俊太郎、旦敬介、鄭暎惠、冨原眞弓、中村和恵、西山雄二、根本美作子、野崎歓、ぱくきょんみ、林巧、文月悠光、古川日出男、細見和之、堀江敏幸、岬多可子、ミシェル・ドゥギー、山崎佳代子
Author: ことり
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『愛蔵版 冷静と情熱のあいだ』〔再読〕 江國 香織、辻 仁成

『冷静と情熱のあいだ』・・・大好きで大好きで、たまらない物語です。
はじめて読んだのは1999年。すごく話題になっていた頃、Rosso(江國さん)を読んでからBlu(辻さん)を読みました。
あおい側の物語が大好きで――甘ったるいお酒みたいな、ものうい空気感がほんとうに好き――、それ以来Rossoばかり再読している私・・・数年前に購入した愛蔵版(贅沢な函にはいった、ひどく美しい本)でひさしぶりにBluもあわせて読んでみました。

片側だけを読んでいると、もう片方がいまどんなことを想い、どんなふうに生活しているのか分からない。だからあおいの物語を読むとき私はついついあおいになりきってせつない思いで読んでしまうのですが、こちらの愛蔵版ではRossoの第一章、Bluの第一章、Rossoの第二章、Bluの第二章・・・と一章ずつかわりばんこに進んでいくので、どちらの気持ちも知りながら読める楽しみがあります。
順正も苦しいほどあおいをもとめていることが分かって、祈るような気持ちで(結末は知っているくせに)読んでしまいました。

怠惰な生活を送りながら、所有は最悪の束縛だ、というあおい。
修復師として過去と向き合い、過去にとじ込められてしまう順正。
まるで合わせ鏡のような、あおいと順正それぞれの物語はなんど読んでも私の心を揺るがし、ざわめかせ、狂おしいほどにひびいてきます。

2008年に再訪したフィレンツェで、「どうしても、ここにのぼりたいの」 そう我儘を言って、夫といっしょに初めてドゥオモにのぼりました。・・・あの景色、一生忘れない。
夫とふたりでのぼりたかった場所――
だってフィレンツェのドゥオモは、「愛しあう者たちのドゥオモ」だから。
Author: ことり
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『作家の口福』 恩田 陸 ほか

評価:
恩田 陸
朝日新聞出版
¥ 588
(2011-02-04)

贅沢なチーズ鱈、卵の黄身をとろっと絡めたトースト、はんぺんのオイルフォンデュ、白砂糖入りの七草粥、ハーブティーで淹れたココア、モンゴルのいのちを頂くヤギのシチュー・・・20人の作家が自分だけの“ご馳走”を明かす。読めば「美味しい!」を共感できる極上のエッセイ集。

20人の作家さんがそれぞれ4編ずつ、食について書かれたエッセイたち(元は朝日新聞土曜版に掲載されたコラム)が一冊の文庫になりました。
江國香織さんめあてで手にした本ですが、やはり私は彼女のエッセイが一ばん好きで、4編ともそれぞれすばらしいなあと思いながら読みました。
豆のさやからすじを取り除くときの「すじが、半透明の緑色の極細のりぼん状になって、ときにくるくるっとカールして、剥ける。」といういきいきとした表現(『春の豆』)も、インド料理店でのトイレの貼り紙にしばし見惚れるお話(『スパイスと言葉』)も、チャイナ・タウンのはずれでたべたとびきりおいしいお粥に思わず発した「わあお」という弛緩した歓声(『白い、やさしい、とろとろのもの』)も、愉しく陶然とした空気がそっくり伝わってくるのがうれしい。
そしてなんといっても『ほめ言葉 おいしいものを食べるわけ』の‘理由’がまったく江國さんらしくて素敵なのです。
私はその人(壺に納めてくれる、係の人)を本心から驚かせたい。できれば最初に息を呑み、それから目を細めて微笑んで、こんなふうに言ってほしい。
「贅沢なかただったんですね。ええ、お骨を見ればわかります。栄養がいきとどいています。新鮮な魚や肉を、たくさん召し上がってこられたんですね。好物はかわはぎ、小鯛、それにのどぐろあたりでしょうか。それにしてもこの白さ。なかなかいらっしゃいませんよ、こんなお骨のかたは。尋常ではない量の果物を召し上がったんですね。メロン、西瓜、桃、ぶどう、梨。お骨の一つ一つがみずみずしい。(中略)いやあ、いいお骨を拾わせていただきました。私、もう長いことこの仕事をしておりますが、こんなに幸福そうなお骨は見たことがありません」
このエッセイは、「だからきょうも全力で、おいしいものをたべるのです。」という一文で結ばれます。「全力で、おいしいものをたべる」・・・なんてシンプルですこやかなひびき。ため息がでるほど魅力的な一編でした。


■ この本の執筆者たち
恩田陸、絲山秋子、古川日出男、村山由佳、井上荒野、山本文緒、藤野千夜、川上未映子、森絵都、津村記久子、三浦しをん、江國香織、朱川湊人、磯憲一郎、角田光代、道尾秀介、池井戸潤、中村文則、内田春菊、中島京子
Author: ことり
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『きのこ文学名作選』 (編)飯沢 耕太郎

評価:
飯沢耕太郎,萩原朔太郎,夢野久作,加賀乙彦,村田喜代子,八木重吉,泉鏡花,北杜夫,中井英夫,正岡子規,高樹のぶ子,宮澤賢治,南木佳士,長谷川龍生,いしいしんじ
港の人
---
(2010-11-27)

ぽこぽことくり貫かれた穴だらけのカバーから、ぴかぴか眩しい金色が覗いて。
趣向をこらした表紙をめくると、今度はきのこにまつわるお話たちがさまざまな質感の紙を通してにょきにょきと立ち現われます。
ふしぎで、可愛くて、ちょっと不気味で艶かしくて。そんなきのこたちの妖しい魅力が闇のなかでしめやかに明滅する――珠玉の「きのこ文学」16編。

皮肉たっぷりのシュールな「きのこ会議」のお話や、きのこにあたってみんな踊りだしてしまう狂気を描いた愉快な古典文学、昏い雨の森で見つけてもらえるのをいまかいまかと待っている4行の詩、きのこの魔力が炸裂する泉鏡花の幻想譚、きのこを見上げる蟻の視点がみずみずしい宮澤賢治の童話などなど・・・、それぞれのお話が読み手をくらりと幻惑させ、異界へと誘い込みます。
ことしに入って、『昼の家、夜の家』や『茸類』(『八つの小鍋』所収)など、なぜか「きのこ文学」によばれる私。この本でますますその魅力に憑かれてしまいそう。
紙の手触りやそこに印字される文字の字体やレイアウト・・・きのこの謎めいた佇まいにそっとよりそう祖父江慎さんの奇抜な装丁も、あきれるほど楽しい一冊です。

『孤独を懐しむ人』 萩原 朔太郎
『きのこ会議』 夢野 久作
『くさびら譚』 加賀 乙彦
『尼ども山に入り、茸を食ひて舞ひし語』(『今昔物語集』より)
『茸類』 村田 喜代子
『あめの日』 八木 重吉
『茸の舞姫』 泉 鏡花
『茸』 北 杜夫
『あるふぁべてぃく』 中井 英夫
『蕈狩』 正岡 子規
『茸』 蘯 のぶ子
『くさびら』(『狂言集』より)
『朝に就ての童話的構図』 宮澤 賢治
『神かくし』 南木 佳士
『キノコのアイディア』 長谷川 龍生
『しょうろ豚のルル』 いしい しんじ


飯沢耕太郎さんと岸本佐知子さんのトークイベントに出かけました。
サイン本です↓
Author: ことり
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