『みどりのスキップ』 安房 直子、(絵)出久根 育

大きな目玉をぴかぴかさせて、桜の木のてっぺんにとまっているみみずく。
桜林にあやしいものが入り込まぬよう、まい夜みはりをするみみずくは番兵でした。

あるとき、みみずくは満開の桜のしたにすわっているきれいな女の子に出逢います。花かげちゃんと名のった女の子は、桜の精。・・・桜がちったら消えてしまう運命。
みみずくが、花かげちゃんの顔をはっきりとみたのは、このときいちどきりでした。それなのに、みみずくは、この日から、かわいい花かげちゃんの番兵になったのでした。
みみずくは林のいりぐちの一ばん高い木にとまり、花かげちゃんを夜も昼も眠らずにまもろうとします。雨こぞうも、風のおじさんも、森の動物たちも・・・誰ひとり桜林に入れるものはありません。
ところがある日のこと、みみずくがちょっとうとうとしたそのすきに、
トット トット トット トット
高らかな足音が近づいてきたのです。
この足音は猟師でしょうか。雨こぞうでしょうか。それとも・・・?

すばらしく美しい桜の花の、けれどはかないいのち。
波のようにやってくる季節のうつろいが濃やかに歌われています。
――あまりにけなげで純粋な、‘せつなかわいい’恋のおはなし。
Author: ことり
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『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』 安房 直子

グラタンざらの黄色いアヒル。おさらの絵だとおもっていたら・・・まあ、ふしぎ、ピョンととびだした!?
おさらのアヒルはふしぎなアヒル、どんなとこにもいけるアヒル。まほうのことばをとなえて、目をつぶってしんこきゅうを3かい。すると・・・。

日常にまぎれ込んだ、ちいさな魔法のお話です。
ひまさえあればグラタンをこしらえているグラタン好きのおばあさん。彼女のお気に入りのグラタン皿にはきいろいアヒルの絵が描かれていて、なんと魔法が使えるのです!
でもアヒルはあることでおばあさんとけんかして、お皿からとび出し、おばあさんの家からも出ていってしまいました・・・。

アヒルはそのあと町へでて、なん人かの人たちと出逢います。
でも、アヒルがずうっと腰を落ち着けられる場所はなかなか見つかりません。
ぱっと見にはいい人でも、人にはいいところばかりじゃなくて悪いところもある・・・そんなちょっと辛口の‘真実’をやさしいファンタジーにうまくとけ込ませてしまうところ、さすが安房さんだなぁと思いました。
転々と住みかをかえていくアヒルのせつない旅。アヒルはずうっといられるすてきな場所をみつけたでしょうか? それは読んでみてのお楽しみ。

いせひでこさんのいまにも動き出しそうな挿絵が、素朴であたたかな物語に楽しくよりそってくれています。このお話を読んだら、こうばしくとろけた焼きたてのグラタンをはふはふ食べたくなりました。
Author: ことり
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『すずをならすのはだれ』 安房 直子

さむいさむい二月のこと。まっ白い森のなかを、まっ白いうさぎがとおりかかります。
「よもぎのはっぱを三十まい、はこべのはっぱを十五まい、クローバーのはを七まい半。」
うさぎは、町までかいものにゆくところなのでした。
うさぎは森のなかで、いり口にすずのついた白い小さな家をみつけて――。

ちり、ちり、ちり、ちり・・・
まるで、空の星が、
いちどに ふりこぼれてくるような音がして、
そのあと、家のなかから
こんな声が聞こえてきました。
「とびらのすずをならすのは、だれ?」
きれいな、やさしい声でした。

美しい声にみちびかれ、つぎつぎに小さなおうちに入っていく動物たち。
けれど彼らは夜になっても、夜があけても、いく日たっても出てきません。家のなかからは、かすかに歌声が聴こえてくるだけです。
ひょっとして、こわいお話なのかな・・・
どきどきしながら読みすすめた私でしたが、お話のさいごはとてもすがすがしく晴れやかな気持ちになれました。
さむい冬の夜におすすめの、すてきな春待ちファンタジーです。
Author: ことり
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『うさぎのくれたバレエシューズ』 安房 直子、(絵)南塚 直子

バレエきょうしつにかよいはじめて、5ねんもたつというのに、そのおんなのこは、おどりがじょうずになりませんでした。
たんじょうびにも、たなばたさまにも、おんなのこのねがいは、たったひとつだけでした。「どうか、おどりがじょうずになりますように」
するとあるあさ、ふしぎなこづつみが、おんなのこのところに、とどいたのです。

ふわあ〜っとやわらかな風がふいて、ピンクの花びらがこぼれそう。
おどりがじょうずになりたい女の子は、山のくつやをたずね、バレエシューズづくりのお手伝いをします。
カタカタカタ・・・ミシンの音。とぷとぷとぷ・・・つぼいっぱいのさくらの木の汁。
爽やかなさくらの香りがいっぱいに立ちこめた部屋で、60本のりぼんをくつに縫いつけていくのです。そうしてバレエ団のうさぎたちがやってきて――・・・

風になり、蝶になり、花びらになっておどる女の子。
満開の桜のしたでは、やはり不思議なできごとが起こるようです。
Author: ことり
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『雪窓』 安房 直子、(絵)山本 孝

評価:
安房 直子
偕成社
¥ 1,470
(2006-02)

「三角のぷるぷるっとしたやつください。」
雪のふる寒い寒い晩、屋台にきた厚いコートのお客はいいました。
「三角のぷるぷる」って?
山のふもとのおでんの屋台『雪窓』には、ときたまふしぎなお客がくるそうです。今夜も提灯がともり、店がひらくとちょっとばかり風がわりなお客がやってきたようです。

山のふもと、人のいいおやじさんがやっているおでんの屋台のおはなしです。
おばあちゃんの昔ばなしにでてきそうな、せつなさと妖しさとあたたかさが共存する美しい日本のメルヘン。安房さんの童話によりそう山本さんの絵もとても素敵です。
やってきたたぬきが助手になり、おやじさんの悲しい過去が明かされ、そんなある雪の夜、「雪窓」にかくまきを頭からかぶった女のお客があらわれて――・・・
お風呂のなかで凍えた手足の先っぽがあたたまっていくように、心にじんわりとやさしさがしみていく、そんな絵本でした。
おやじさんのおでん、きっとやさしい味がするんだろうな・・・。

2月1日〜2日。東京に雪がつもった記念に。
Author: ことり
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『くまの楽器店』 安房 直子、(絵)こみね ゆら

評価:
安房 直子
小学館
¥ 1,620
(2009-08-27)

野原の真ん中に、くまの楽器店はありました。
かんばんには、「ふしぎや」とかかれています。
そこでは、ふしぎなふしぎな楽器が、たくさんありました。
お客さんが、すてきな気持ちになる楽器なのです。

『ふしぎなトランペット』、『月夜のハーモニカ』、『野原のカスタネット』、『さむがりうさぎのすてきなたいこ』の4つのおはなし。
「ふしぎや」には、かわいい男の子や、元気のないおじさん、おなかをすかせたねずみの子供、寒がりやのうさぎたちがやってきます。店主のくまさんは、それぞれのお客さんにぴったりの楽器を勧めてくれるのです。

「そんなら、いいものをあげましょう」
おっとりとして、ほわっとつつみ込んでくれそうなくまさんの人柄に癒されて、いつしかやさしい気持ちになっている絵本。私も「ふしぎや」に行ってみたいな・・・そしたらくまさん、私にはどんな楽器を勧めてくれる?
Author: ことり
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『うさぎ座の夜』 安房 直子、(絵)味戸 ケイコ

評価:
安房 直子
偕成社
¥ 1,470
(2008-01)
小夜(さよ)は山ふかい小さな温泉宿の一人娘です。友だちは山の鬼の子やてんぐ、風や木とも話ができます。
小夜はやまんばの子なのでしょうか。
そんな小夜のもとに人形しばいうさぎ座から手紙がきました。まっ赤な紅葉の葉の手紙でした。

安房直子さんの書かれた、愉快で愛らしい物語が絵本になりました。
えらばれた子どもだけが招待されるといううさぎ座のお芝居。木枯らしの吹きすさぶ秋の夜に、少女がたったひとりで足を踏み入れる不思議な世界は、宮沢賢治さんの『どんぐりと山猫』を彷彿させます。そういえば、安房さんのファンタジーは賢治さんのそれととてもよく似た匂いがするのは私の気のせい?
まっくらな森の広場にあたたかそうな着物を着込んだうさぎたちが集まり、火鉢で暖をとりながら人形劇をたのしみます。人間の観客は、小夜ひとり。
日本の昔ばなしにぽっかりと迷いこんでしまった、そんな読みごこちの絵本です。
Author: ことり
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『初雪のふる日』 安房 直子、(絵)こみね ゆら

評価:
安房 直子
偕成社
¥ 1,470
(2007-11)

冬枯れの木々、ずっしりと重たそうな低い空。
昭和を思わせる田舎風景と、一本道にどこまでもつづく石けりの輪。
「なあんて長い石けり!」 女の子はとびこんで石けりをはじめます。
ふと気がつくと、前とうしろをたくさんの白うさぎたちにはさまれ、もう、とんでいる足をとめることができなくなっていました。

気づいたときにはもうすべり落ちている・・・
そこに広がるのは、もの哀しくひそやかな安房直子さんの幻想世界。
初雪のふる日に白いうさぎのむれにまきこまれたら、うさぎといっしょに世界のはてまでとんでいってさいごには小さい雪のかたまりになってしまう・・・いつかおばあさんに教わったおそろしいお話を思い出した女の子。彼女はいままさに、うさぎたちにさらわれてゆくところなのです。

初雪の日はいつもとなにかが少しだけちがう気がしませんか?
ひんやり心細いファンタジーがはりつめた空気の色と溶けあって、一人っきりの夜に怖い夢をみたような、いま、ひどくたよりない気分。
Author: ことり
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