『私自身の見えない徴』 エイミー・ベンダー、(訳)管 啓次郎

評価:
エイミー ベンダー
角川書店
¥ 1,995
(2006-03)

10歳の誕生日、父が原因不明の病気になり、モナは「止めること」をはじめた。大好きなピアノも、得意だった陸上も、デザートも映画も、卵入りサラダも何もかも。止められなかったのは、木をノックすること、それから数学。リズミカルにノックしながら、無限に数える。それがモナの愛。モナの全て。20歳を迎えたモナは、ある町の小学校で逃げ出した先生の代わりに算数を教えはじめる。理解不能、個性ばらばら、手に負えない子供たち。閉じていたモナの宇宙が、否応なしに開かれてゆく。
短編集『燃えるスカートの少女』で比類なく美しく切ない世界を描き出したエイミー・ベンダー。より深くより鮮やかに物語を紡ぐ待望の初長編。

(原題『AN INVISIBLE SIGN of MY OWN』)
Author: ことり
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『わがままなやつら』 エイミー・ベンダー、(訳)管 啓次郎

評価:
エイミー ベンダー
角川書店
¥ 2,052
(2008-02-29)

鳥籠で飼われる小人、かぼちゃ頭の両親から生まれたアイロン頭の子供、その指に10の鍵をもつ少年・・・幻想と現実のよじれの中に人々の交わり、痛み、愛を深く鋭く描き出す。
文句なしの絶品、五感が震える15篇。

足元にぽっかりとあいた闇に心がすくむ。
どのお話もエキセントリック。不思議で、痛くて、少しさみしい。
その描き方はどこかつめたく突き放しているようにも見えるのに、エイミーさんのまなざしはやさしくて、孤独で繊細な人たちにそっと寄りそうのを感じます。
夢うつつのあわいを裸足で散歩するような・・・心細くすらあるおとぎ話めいた世界にうかび上がるなまなましい‘人間’たちの姿。そんな彼らのありさまが、いまにも頽れそうな物語たちの手綱をきゅっとにぎりしめてくれているのでしょうか。
光と闇のあいだ、あたたかさとつめたさのあいだで。

旅先で立ち寄った奇妙なお店のお話『果物と単語』と、心やさしいアイロン頭の男の子の哀しみを描いた『アイロン頭』が、とくにたまらない。
帯にあった江國香織さんの推薦文が素晴らしかったので、最後に引用します。

エイミー・ベンダーの小説世界は、野の花のように荒々しい。
このような物語は、ほかでは味わうことができない。
それはつまりこういうことだ。味わいたければ、野にでなければ。

(原題『Willful Creatures』)
Author: ことり
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『燃えるスカートの少女』 エイミー・ベンダー、(訳)管 啓次郎

評価:
エイミー・ベンダー,管 啓次郎
角川書店
¥ 2,052
(2003-05-30)

不可思議で、奇妙で、痛々しく、哀しみに満たされた、これは現実をかたる物語たち――
失われ、取り戻される希望、ぎこちなく、やり場のない欲望、慰めのエクスタシー、寂しさと隣り合わせの優しさ、この世界のあらゆることの、儚さ、哀しさ、愛しさ。少女たちが繰り広げるそれらの感情が、物語を超え、現実の世界に突き刺さる。本処女作にして強烈な才能を発揮し、全米書評家たちをうならせ絶賛された、珠玉の傑作短編集。

この本のもつ不可思議な魅力をいったいどうやってお伝えすればよいのでしょうか。
過去のこと、家族のこと・・・しずかな視点で描かれたお話は、どれも刺すように哀しくて、抱きしめたくなるほどに愛おしいものばかり。
銀の雨にうたれながら、温かいのは自分の心臓だけではないかと疑うような・・・
夢のなかで食べたアリスのきのこなのに、舌に独特の風味が残っているような・・・
そんな心細くはかない肌感覚が色とりどりに押しよせてくるふしぎな本。

心にのこったのは、恋人が逆進化していくお話(『思い出す人』)と、お父さんのおなかに大きな穴があいてしまうお話(『マジパン』)と、火の手をもつ女の子と氷の手をもつ女の子のお話(『癒す人』)。そんな風変わりなストーリーたちだけど、みたされない気持ちとそれを埋めようとする欲望が、痛みや淋しさにつながっていく様子に引き込まれます。
奇抜なのに哀しくて、野蛮なのに繊細・・・。そしてなにより描かれている少女たちの冷静なこと。これほど不可解な世界観をするりと受けとめてしまえるのは、ひょっとして彼女たちの冷静さのせい、なのかしら。
崩れているようにみえて、完ぺきに統御された美しさ。
このような物語は、よそではなかなか味わえないかも。

(原題『The Girl in the Flammable Skirt』)
Author: ことり
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