『我が家の問題』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
集英社
¥ 1,470
(2011-07-05)

平成の家族小説シリーズ第2弾!
完璧すぎる妻のおかげで帰宅拒否症になった夫。両親が離婚するらしいと気づいてしまった娘。里帰りのしきたりに戸惑う新婚夫婦。誰の家にもきっとある、ささやかだけれど悩ましい6つのドラマ。

『甘い生活?』、『ハズバンド』、『絵里のエイプリル』、『夫とUFO』、『里帰り』、『妻とマラソン』――『家日和』につづく、‘家’が舞台の短篇集。
家庭・・・それはそれぞれが小さな宇宙として独立しているもの。よその人からしたら些細なコトでも本人にしてみたら一大事!、そんな悩みや気がかりがかろやかなタッチで描かれていて、主人公に共感したり、私だけじゃないんだってほっとしたり・・・6つの家々の‘問題’に引き込まれました。
一ばん好きだったのは『里帰り』、ラストが爽快な『夫とUFO』も好き。あと、私小説ふうの『妻とマラソン』もおもしろかったです。これは、『家日和』に収録されている『妻と玄米御飯』の続編で、N木賞作家・大塚康夫さん夫婦のその後がのぞけます。夫婦っていいな、家族っていいな・・・そうほのぼのと思えるお話です。

奥田英朗さんの本を読むたびに思うのだけど、彼はどうしてこんなに女性の気持ちが分かるのかしら。この本でも、私たち主婦の思いがとてもリアルで、「ああ、分かる!そうなんだよね」なんて思わず本を相手にうなずきたくなってしまいました。
Author: ことり
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『最悪』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
講談社
¥ 920
(2002-09-13)

小さなつまずきが地獄の入り口。転がりおちる男女の行きつく先は?
不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化!

始めはジリジリ・・、その後あれよあれよというまに転落していく人生。
いちど転がりはじめたら、もう止めることはできない。冷静になんて、なれない。
なにか抗いようのないなにか強い力に引っぱられ、足掻けば足掻くほど自分の人生が「最悪」へと向かっていく・・・そういうどうしようもなさ、みたいなものが怖いくらいの臨場感で伝わってくる物語でした。
でも、前半は彼らの苛立ちや怒り、諦めなどがぴしぴしとみちていて、読んでいるだけで暗く憂鬱になるほどのリアリティがあったのに、ラストはいっきにドタバタ劇・・・。私にはなんだか釈然としないものが残ってしまったのです。
Author: ことり
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『家日和』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
集英社
¥ 1,470
(2007-04-05)

会社が倒産して家事に目覚めた夫。ネットオークションに、はまる専業主婦。凸凹夫婦の不思議な人生の波長。いつもどおりの“家”にだって、ドラマティックな出来事はある!家って、やっぱり面白い。
ビター&スウィートな“在宅”小説。

『サニーデイ』、『ここが青山』、『家においでよ』、『グレープフルーツ・モンスター』、『夫とカーテン』、『妻と玄米御飯』――‘家’が舞台のユーモラスな短篇集です。
私が断トツで好きだったお話は『家においでよ』。
妻が家を出たとたん、自分ごのみにお部屋を改造していく夫。「男の城」づくりはカーテンやカーペットを変えることから、レコードプレイヤー、液晶薄型テレビ、サラウンドシステム、まっ赤なソファとどんどん本格的にエスカレート!我が家で肩身のせまい思いをしている同僚たちが「すごい、すごい」と毎晩のように溜まりだす・・・その過程がもうたまらなく愉快で、わかるな〜、なんて思わずニヤニヤしてしまいました。
好きなものに囲まれて幸せを感じる、それは男も女もおなじなのですよね。
男の人のほうが、もしかしたらそういう思い(憧れ?)がつよいのかしら。

いい大人がなにかにハマっていくことの、その可愛らしさ滑稽さ。子供じみてたって、いいじゃない。
まわりにいそうな人たちがいつもちょっぴりおかしく描かれている、奥田さんのこんな本が好き。読んでいるとムクムク元気がわいてくる。そこが好き。
Author: ことり
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『サウスバウンド』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
角川書店
¥ 1,785
(2005-06-30)

父は元過激派だ。小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうではないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。昔、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族でどこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが・・・。
――型破りな父に翻弄される家庭を、少年の視点から描いた、長編大傑作。21世紀を代表する新たなるビルドゥングス・ロマン!

第一部の、東京・中野での小学校生活があまりにも窮屈だったせいなのでしょうか、第二部で西表島に移住してからの空気のきらめきと開放感は、その何倍にも感じられました。
こんなおとうさんだったらいやだな、とはじめの内はそんなふうに思いながら読んでいた私。でもこの上原一郎という人を知れば知るほど、魅力を感じていったのです。
「日本人イコール日本国民でなくてはならない理由などない」
こう主張し、「国民やめた」とまで宣言してしまうちょっと面倒なおとうさんなのだけど、自分の信じた道をひとりでも突き進もうとする姿は、ほんとうに勇ましい。

「大人が格好良ければ子供はぐれないんだ」と言ったのは伊坂幸太郎さんですが、この本を読んでいると、親が‘正しいこと’を背中で語れば子供はちゃんと育つのだ、そう心から思えます。

今日のあの姿を、自分は永遠に忘れないだろう。日本中の人たちに、あれがぼくのおとうさんだと自慢したくなる勇姿だった。

一郎のような父親がいまの日本にどれくらいいるのでしょう。
「これはちがうと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。人とちがっていてもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
それを言葉だけじゃなく、身をもって教えてくれるおとうさんがいる二郎がうらやましくなってしまうのです。
Author: ことり
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『町長選挙』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
文藝春秋
¥ 1,300
(2006-04)

イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』に続く、トンデモ精神科医・伊良部先生シリーズの第3弾です。
ナベツネならぬ人気球団オーナー(『オーナー』)、ホリエモンならぬIT業界の風雲児(『アンポンマン』)、黒木瞳ならぬ自然体女優(『カリスマ稼業』)が登場するセレブシリーズ(?)3編に、伊良部先生が激しい選挙戦にわく離島に赴任するという表題作をプラスした、これまでとはちょっぴり異色の短編集。

今回はゴージャスに、各界のビッグネームが患者となって伊良部先生を訪れます。
もちろん、そんなセレブな存在をも物ともせず、彼らの今までのプライドや守り抜いてきたものすべてを予測のつかない発言と暴走でいとも簡単にひっくり返してしまうのは、さすがの伊良部先生!相変わらずのおもしろさです。
自分が大切だと思い込んでいるものでも、じつはそれほど大切じゃないこともたくさんあって、それを知るには一度手放してみる勇気も必要なのかもしれないなあ・・・なんて、またまた脱力系伊良部先生にすっかり癒されてしまった私。

でも、純粋に小説として楽しめないところがあったのは、今回は実在する人物やエピソードをそっくり踏襲しているぶぶんが多いせい、なのでしょうね。
最後に収録されている『町長選挙』は唯一完全なフィクション(たぶん)で、一ばん楽しめたお話でした。
Author: ことり
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『ガール』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
講談社
¥ 1,470
(2006-01-21)

『ヒロくん』、『マンション』、『ガール』、『ワーキング・マザー』、『ひと回り』の5編。
女課長というだけで部下の男からいわれのない攻撃を受けたり、先のばしにしていたマンション購入をついに決断したり、自分たちはいつまで「女のコ」でいてもいいのか悩んだり、バツイチ・子持ちが仕事と子育ての両立に奮闘したり、12歳年下のイケメン新入社員に心を奪われてしまったり・・・。
マドンナ』が中間管理職のおじさんたちの短編集ならば、こちらは30代の働く女性たちを描いた短編集。・・・まったく、奥田英朗という人は、どうしてこんなに女性の気持ちが分かるんだろう!

1話めは働く既婚女性、4話めは働くシングルマザーのお話で、あとはすべて独身OLが主人公です。
「結婚」の二文字に過敏になり、もう若くないことを思い知らされ、出産のリミットも気になる――まだ、なにひとつ諦めてなんていないのに・・・。
そんな彼女たちの苛立ち、切なさ、焦燥感が奥田さんらしくコミカルに描かれていて、どっぷりと共感してしまいました。
Author: ことり
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『空中ブランコ』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
文藝春秋
¥ 1,300
(2004-04-24)

爆笑小説『イン・ザ・プール』が、いよいよシリーズ化。
前作で伊良部先生のとりこになってしまった私は、続編刊行と知って以来、発売日が待ち遠しくて待ち遠しくてしかたがありませんでした。

注射フェチ・色白な太っちょ・36歳独身の‘迷’神経科医・伊良部一郎。
ちょっと(ううん、かなり?)変わった伊良部先生が、露出狂で愛想のわるい看護婦・マユミちゃんと、今回も大暴れ!!
今回は、相方が信用できない空中ブランコ乗り(『空中ブランコ』)、尖端恐怖症のヤクザ(『ハリネズミ』)、教授(=義父)のヅラをはがしたい欲求とたたかう伊良部先生の元同級生(『義父のヅラ』)、ノーコンになってしまったプロ野球選手(『ホットコーナー』)、嘔吐症と強迫症になやむ恋愛小説家(『女流作家』)が登場し、伊良部総合病院の地下を訪れます。
そして、ひびきわたるお決まりの「いらっしゃーい」!
伊良部先生はまたしても、何をも恐れない人並みはずれた度胸とおそろしい勘違いで、空中ブランコや野球や小説などにのめりこみ、患者たちをあっけにとらせます。
それでも彼らは伊良部先生のもとに通わずにはいられないのです。

ああ、もうほんとうに伊良部先生ったら、魅力的!
声をたてて笑っているうち、知らず知らずこちらまでが元気になっているような・・・まるでこの本は明るく楽しい‘処方箋’。きぶんが落ち込み気味の方に、もちろんそうでない方にも、とにかくオススメの一冊。
続編を執筆してくださった奥田さんに、なによりもありがとうを言いたいです。
Author: ことり
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『真夜中のマーチ』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
集英社
¥ 1,575
(2003-10-03)

「大金をつかんで派手に遊ぶこと」を人生の目標にかかげるパーティ屋経営者のヨコケン(横山健司)、名前のせいで「御曹司」だと勘違いされてしまう三田物産のデキない一社員・ミタゾウ(三田総一郎)、元モデルで父は成金大富豪の美女・クロチェ(黒川千恵)とその飼い犬・ストロベリー(という名のドーベルマン!)。
ひょんなことから出会い仲間になった3人+1匹がいどむのは、10億円強奪!

ひと言で言ってしまえば、スピード感あふれるドタバタ犯罪コメディ。
いったん読み始めてしまったら、ラストまでノン・ストップ!いっきに読めました。
主人公たちはもちろん、ヤクザ、詐欺師、中国人ギャングまで・・・10億円をねらう複雑な人間関係がみごとに整理されて、10億円があっちこっちに奪い奪われするたびに練り直される作戦たち。つぎからつぎへと変わっていく展開に、飽きることなく頁をめくります。
ひとつ残念だったのは、読み手にとって驚きも、いい意味での裏切りも用意されていなかったこと。ただお話の流れを追って楽しむためのこんなミステリー・・・もちろん嫌いではありませんが、もう少し読み手を巻きこんでくれてもよかったかな。
Author: ことり
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『邪魔』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
講談社
---
(2001-04)

始まりは、小さな放火事件に過ぎなかった。似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。手に入れたささやかな幸福を守るためなら、どんなことだってやる――。現実逃避の執念が暴走するクライムノベル。

渡辺裕輔は、中退した友人たちとつるみ、不良ぶっている17歳の高校生。
久野薫は、妻子を交通事故で亡くした36歳の刑事。
及川恭子は、サラリーマンの夫と子供がいる34歳の主婦。
この3人を軸に、彼らの平凡な日常が崩れてゆくさまを描いています。

退屈だけど平穏があった。
幸運はなかったけれど眠れる夜があった。
あって当たり前の‘日常’。それをうしないかけたとき、初めて人はそれが‘幸福’だったということに気づくのかもしれません。
とっくに壊れてしまったものをなにがなんでも守ろうとがむしゃらにしがみつく彼らの必死さ、焦燥感がすさまじくリアルで、そのあまりの逸脱ぶりに息をのむ私。
知らず知らずのうちに歯車は狂っていき、どんどん深みにハマっていく蟻地獄・・・この本を読んでいると、いまの何のへんてつもない生活がむしょうに愛おしく感じられてくるのです。
Author: ことり
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『マドンナ』 奥田 英朗

評価:
奥田 英朗
講談社
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(2002-10)

『マドンナ』、『ダンス』、『総務は女房』、『ボス』、『パティオ』の5編。
部下の女性を好きになってしまったり、息子がダンサーになりたいと言い出したり、会社の不正を正そうとしながら結局染まってしまったり、同い年の女性が上司になったり、オフィスから見下ろせる中庭にいつも居る老人が気になったり・・・。
どのお話も40代半ばの中間管理職(課長クラス)の男性が主人公。彼らの実態がおもしろおかしく、皮肉や風刺たっぷりに描かれています。
そのリアルさは、思わずドキっとさせられるぶぶんもあったほど。

おじさんたちって、ほんとうに大変なのですね。
女性でもじゅうぶん楽しめるお話たち。だけどどちらかといえば、会社で「おやじ」呼ばわりされてしまって嘆いている、そんな方々におすすめしたい本でした。
私の勤める会社にいるたくさんのおじさんたち・・・みんなこんなこと考えてるの?・・・少しこわくもあるけれど、でもやっぱり、なんとなく可愛いかったりして。
Author: ことり
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